第4話 エビスビール
もともと忘年会というキーワードから始まったネタなので、忘年会で一区切りつける予定でした。
しかし、オネエ言葉の男らしいニューロニスト様と、酔っぱらいユリ姉さんが脳内で出来上がったので投稿します。
けして忘年会が書くのが辛いわけでは……。
※注意事項:いつも通り捏造過多です。ご容赦ください
--------------------------------------------------
アインズ様から忘年会の注文を頂いた翌日。
まず副料理長に事の顛末を報告し、今後について相談をする。副料理長はいつも通りダンディな仕草で、君が受けた仕事なのだからそのまま完遂しなさいと言われた。無論当日や準備の手伝いはするがメインを張れということだ。
普段から1人で切り盛りする事もあり、責任ある行動は求められていた。しかし、今回は普段と比較にならない大役。不安になると同時にチャレンジ精神が胸の奥から湧き上がるのを感じるのだった。
そんな日の夕方、常連のヴァンパイアとワーウルフが本当の意味で山盛りのポテトを貪り食いながらビールを飲んでいる傍ら、忘年会のフロアレイアウトや出す料理を3パターン程作る。
検討が一段落ついたところ、珍しいお客様が来店される。
「いらっしゃいませ。ニューロニスト様」
「あ~ら。私の名前をちゃぁんと覚えてるなんて、いい子ねん」
「お好きな席にお座り下さい」
ブレインイーターのニューロニスト・ペインキル様は、見た目こそクトゥルフ系マインドフレイヤーだが、話せる御方である。ただ、どうも一部の方とは相性が悪いらしくなかなか大変だが。
「本日はいかがなさいますか」
「今日は愛しのアインズ様とお話出来てちょ~と機嫌がいいから、美味しいものをおねがいするわん」
「かしこまりました」
ニューロニスト様をカウンター席にご案内する。
まずは、黒ビールのシュバルツ。そしてアイスバインとマッシュポテトをお出しする。
「シュバルツにございます。先日アインズ様もお飲みになられ、美味しいとおっしゃられておりましたので」
「あら、よくわかってるじゃない。そんな気配りは素敵よん」
そういうと、ニューロニスト様はジョッキを持ちあげ飲み始める。よく見れば爪にネイルアートが施されており、その1つはアインズ様のようにも見える。なにげに器用だ。
「あら、ネイルアートが気になるのん?」
「なかなかセンスの良いデザインですね。アインズ様でしょうか」
「うふふ、そうよん」
女性というものは、今日は髪型を少し変えた、すこし痩せたなどなど、世の男どもにはなかなか気が付くことが難しいところを褒めて欲しい生き物である。生前の妻もそうだった。普段は何も気にしないおおらかな性格のくせに、こだわりを変に刺激すると大変なのだ。まさしく気分屋の大きな猫のような一面がある。
「ほんとに、アインズ様も貴方ぐらい細かいところに気が付いてくださると嬉しいのよねん。ああ、でも今のストイックなお姿も素敵よん」
「アインズ様は至高を冠するにふさわしい御方。ストイックさはその魅力の現れかと」
この方のアインズ様愛はなかなかのもの。女性的なしゃべり方だが、聞けば性別は無いとか。なかなか業が深い。
そして気がつけばシュバルツがなくなっているため、次のお酒を出す。
しかし、気が付けばテーブル席の常連の声が次第に大きくなっていく。ビールの追加を持っていき少し静かにするよう2人に話をするも、しばらくすると元に戻る。普段なら二回目で終わるか、三回目に蹴り出すかなのだが、今日はいつもと違った。
「あ〜ら、私が楽しく飲んでるのを邪魔しちゃってん。お部屋に招待しちゃうわよん」
それを聞くと二人は、残り物を掻っ込み追い立てられる羊のように退散したのだった。
「お手数をお掛けしました」
「気にしないのん。私も静かに飲みたかっただけだからん」
「かしこまりました」
そんなニューロニスト様のために、チェリソーの盛り合わせを作る。
ソルティドックから始まり10数杯、アインズ様について熱く語りつつ飲まれた後、楽しそうにスキップしながら店を出られるのだった。
******
時間にすれば朝方。
下ごしらえは終わり、店を閉めた後は奥の小部屋で3時間ほど眠ろうかと考えていたところ、お客様が来店される。
「ようこそいらっしゃいました。ユリ・アルファ様」
ユリ様が、中に入られるのと合わせて準備中の札を下げる。この対応は何もアインズ様が初めてではない。むしろ最初はユリ様向けの対応だったのだ。
カウンターにスラリと背筋を伸ばし座るお姿は、まさしくプレアデスの副リーダー。気の強そうな瞳と眼鏡はその容姿と相まって、知的な出来る女性を感じさせる。
「いかがなさいますか」
「いつものを」
「かしこまりました」
氷結させた大ジョッキを取り出す。そしてエビスビールを並々と注ぎ、最後に泡を作る。お通しとしてザワークラウトをお出しする。
「どうぞ」
ユリ様は、ジョッキを無言で煽り半分程度まで一気飲みされる。
「ぷは〜。あ〜この1杯のために生きてる」
「なにかご希望はございますか、ユリ様」
「ユリ姉さん!」
「ユリ姉さん。なにかご希望はございますか」
「口調かた~い」
「ユリ姉さん。なにか食べるかい」
「この間つくってくれた、煮物とかある?」
「冷蔵庫に保存したのがあるよ。すこし待ってて」
これである。
ユリ・アルファ様はけして私の姉ではない。しかしお酒を飲んで気が抜けると、こうなるのである。私もバーテンダーとしての意地があり、基本どのような方でも仕事中は様付けで対応する。ヴァンパイアとワーウルフ以外……。そのため頑なに拒否させて頂いたこともあったが、駄々をこね、最後にはむくれて泣き出してしまったので諦めることにした。
さて、冷蔵庫と呼んでいるが、どうみても中に入れたものは時間が止まっている無駄に高性能なコレから、一度冷やした煮物を取り出す。ちなみに熟成させたいときは、別の本当に冷やすだけの冷蔵庫を使う。
さて煮物は里芋、れんこん、人参、こんにゃく、豚肉、昆布巻き。これらを甘辛く煮て一度冷まして味をすわせたものである。温めるのには時間がそこそこ掛かるため、その間に、下味つけた大根をレンジで温める。
「ユリ姉さん。煮物にはちょっと時間がかかるから、その間に即席のふろふき大根でもどうぞ」
そう言うとユリ姉さんは、ふろふき大根を食べ始める。
「ん~おいしい」
蕩けそうな笑顔で、おいしそに大根を食べビールを飲む。うん。先程までのできる女の面影はどこに行った。まあ、こんな笑顔も可愛いのだが。
さてユリ姉さんが食べている間に煮物が温まったので、器に盛りお出しする。
「はい。煮物だよ。味が濃いから一気に食べないようにね」
「は~い」
煮物を食べつつ、可愛く返事をする。気がつけばジョッキが開いているので、ビールを追加する。ユリ姉さんは、ひたすらビールの人である。最後に別のを少し飲むこともあるが、基本飽きずにビールである。
「ねえさん。めざしとか、イカ炙ったら食べる?」
「あ、おねがい」
そんなわけで、小さな七輪を出し、炭を炊く。魔法で種火を起こすのですぐに火がまわり、熱を生み出す。そこに日干ししたイカを食べやすいサイズに切ったものと、めざしを乗せる。煙は風の魔法で外に。いい感じに火が通り焼き目がついたら、ひっくり返してまた焼く。その間に小皿にマヨネーズを盛り七味をふる。
「はい、イカとめざしの炙り。お好みで七味マヨネーズね」
ビール片手にめざしを食べるユリ姉さんだが、「酔」の状態異常を受ける呪アイテムを装備した状態であっても、”ざる”を通り越して”枠”であるため酔わない。ちなみに”枠”とは「ざるでも水滴はひっかかるが、枠ならそんな箇所さえ存在しない」という意味である。だから、このビールを飲んでデレデレな姿も、酔っているからでなく、普段の緊張から開放されているから……なのだそうな。
「どう?お仕事の方は」
「ん~。妹達は可愛いのはいいけど、もうちょっとまじめに仕事してほしいのよね」
「ユリ姉さんが頑張りすぎているんじゃない?」
「そんな事ないわよ。アインズ様にお仕えするプレアデスは、このぐらい当然のことよ」
「まあ、今はプライベート。ゆっくり休憩していってね」
「は~い。あっビールもう一杯」
「はい」
そう言ってビールを追加する。このゆったりとした空間は約2時間ほど続いた。ユリ様は最後にキリッとした姿になり、仕事に戻られるのだった。そして私は睡眠0で仕事を再開することとなった。
ここはBARナザリック。こんな日もあるのだ。
--------------------------------------
あとがき
ユリ姉さんの声を演じる五十嵐 裕美さんは、アイマスシンデレラの双葉杏も演じていらっしゃいます。うん働いたら負けな娘。
そんな二人を悪魔合体したら、こんな感じになりました。
ユリ姉ファンの皆さんゴメンナサイ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます