第87話 仲間を信じて

「ローデリアの蒸気機関が爆発ですか」

 ヴェロニカが、新聞から目を離して呟いた。


 土くれで作った6本足の馬が曳く荷車に揺られて、トウタたちはトゥラテルの南西にあるルーガルゥ族の集落へと向かっている真っ最中だった。


 目の前には荒野が広がり、所々に緑色が見えるのは、草が生えているのだろう。全くの荒れ地というわけでもない。

 時折、トウタが警戒を兼ねて、箒で哨戒をする為に飛んで行こうとするが、その度――――

「拙者がいく!」

「私がいくわ!」

 と皐月とイリスは口論をしていて――――ここ最近はずっとこれが続いていた。

 当分は、馬車を中心とした生活が続くのは違いない。一刻も早く、交渉し、同盟を組まなければ、月狼国と王国は挟まれ両端から攻められて終わるだろう。

(こんな言い合いをしている時じゃないのに…)

 トウタはイリスと皐月の言い争いを見て――――心底、アホ臭くなった。

 確かに二人に好かれているのは良い事である。

 転生時に『女運を良くしてくれ』とも願ったのは確かだ。が。

「前は皐月が行ったでしょう!?」

「哨戒なら賢狼族の視野と知覚能力が役立つ」

「それなら――――ダークエルフの知覚だって負けないんだから!」

 ぎゃいぎゃい。

 こんなに――――諍いを起こすほどに女運を上げてくれとは言ってはいない。

 これではまるで

(女難に近い)

 トウタは馬車を操りながらそんなことを思っていた。

 当人達はその自覚は無いのかもいれないが。

 だから――――トウタは二人に笑って言った。

「これ以上ケンカするなら二人と口聴いてあげない」

 と。

「な――――!」

「え!嘘でしょ!トウタちゃ――――」

 それを聞いた皐月は、信じられない事のように動かなくなり、イリスはトウタに―――――まるで首を締めるように組み付こうとしたが。

「ていっ」

 ごづんっ

 トウタから、護身術の10番――――拳の小指側を頭の上へ叩きつける――――を逆に食らい、イリスは昏倒することになった。


 2


 結果的には、海賊女王の襲撃を食い止めはしたが――――トゥラテルの街は焼かれ、傷物になった。1/3程しか無事なところはない。それでも――――トゥラテルの街の住民はトウタ達を歓待した。海賊女王から自分たちの街を救ってくれたのだと――――住民からは、そう見えていた。

 だが事実は違う。トゥラテルにトウタたちが居たために街は襲われ、焼かれることになっただけだ。トゥラテルの住民もトウタ達も勝手に勘違いをしていた。

(この街はボロボロだ…。人も多く死んでる。それなのにこの街の人は何で恨み言を言わないんだ…)

 街の人は皆、トウタ達に

『街を守ってくれてありがとう』

 と礼を言う。

「違うんだ。もっと――――もっと上手くやれたハズなのに」

「それは違うぞ。坊や」

 トウタの言葉は途中で遮られることになった。

「あの海賊女王に勝ったんだ。街も2/3は焼かれたが他は残ってる。それに……あの人数を一人でどうにか出来るなんて考えてたなら、そいつは驕りってもんだ――――だが、この街はあんたらに救われた。ありがとう」

 その言葉にトウタ達はなにも言え無くなり――――それから情報だけを集めて

 すぐにトゥラテルを去ることに決めた。


 まず、候補として挙がったのはトゥラテルの南西に集落を作る言うルーガルゥ族の集落。

 そしてトゥラテルから馬車で20日程行ったところにあるハーピー達の住処。

 そして今のところ最有力なのは、やはりドラゴニュート族だった。


「距離的には、ルーガルゥに会ってみるのが良いかもしれないわ」

 そう、意見を言ってくれたのはケンタウロス族のシュティーナだった。

「理由は?」

「もちろんあるわよ。まず昼間の間は彼らは集落に必ずいるわ。ルーガルゥは夜行性だもの。それに気性が昼間は比較的に穏やか。話を聞くくらいは聴いてくれる筈だわ」

「皐月の意見はどうです?月狼の民として」

「うーん。月狼の民は人間と融和、共存共栄を誓い合った仲で御座る。しかして――――ルーガルゥ族は似てはいれども、余り人には近寄らぬ」

「ハーピーもルーガルゥもどっちもとっつき難い。なら――――あとは距離で決めるのも手だと思う」

 トウタが言った意見に、皆がうなずく。

「まぁ、遠いとこに行くよりも、先に近場でいいと思うわ」

「あたしも賛成」

「拙者も同じで御座る」

 最後にヴェロニカはトウタを見て――――「良い判断です」とだけ言った。


 2


 ゴーレムが曳く荷車はシュティーナも乗れるように大きめの物を農家から買っている為に十分余裕があった。農家はボロボロの荷馬車が銀貨5枚で交換できることを知って喜んでいたぐらいだ。使い込まれては居たが、彼ら魔術師の手にかかればただの荷車は『高速の乗り物』に生まれ変わる。

 事実――――2頭の大型馬ゴーレムはトウタの魔力によって今も大地を蹴立てて順調に走っている。荷車も風の魔術によって乗っている物の重量はごく微量になる様にとヴェロニカが付加を加えた特製だ。

「何だぁ?」

 道行く行商人を凄い速度で、追い越していく馬車。それをみて、抜かれた方は唖然として口がふさがらない。

 中には――――抜かれまいと頑張る者もいたが――――結局は抜かれてしまうのだ。

「気持ちいい――――」

「拙者は今風になる――――」

 トウタの隣で皐月とイリスははしゃいでいた。

 皐月のセリフが中二病っぽいなと感じながらも、一定の魔力量でゴーレムを操ることは操作の良い練習にもなるし――――魔痛症の予防にもなる。

「いつでも同じ動きができるようにしておく事」

「いつでも魔力供給量を一定に保っておく事」

 奇しくも雪乃と、シシリー・マウセンの二人は時期は違っていたが――――同じようなことを言っていたんだな――――とトウタは思い返した。

 どちらも反復練習が基本となる。

 前述は雪乃が後述はシシリーが言っていた言葉だった。

 尤も――――なんでも突き詰めてしまえばそうではあるが。

 そんなことを考えながらもトウタは出力を一定に保ち続け、それから彼是1時間は馬車を走らせ続けた。


 ルーガルゥ族の住む村は岩山に掘られた洞窟の先にある。

「雌雄のペアを中心とした平均4 - 8人ほどの社会的な群れを形成。群れはそれぞれ縄張りをもつはずで御座るよ」

 目の前の大きな洞窟の前に立って皐月がすんすんと鼻を鳴らした。

「居るでござるな。まだ日が高い故――――寝ておると見える」

(なんだか最近、皐月の仕草と口ぶりがやたらと渋く感じるなぁ…――――前はもう少し軽い感じだったのになぁ)

 トウタは皐月の後ろに居ながらそんなことを思った。

 イリスは最近少し発育が良くなって引っ込みと出っ張りが目立って、少し目のやり場に困ることがあった。

「どうするの?」

「まずは呼び掛けてみましょう。勘の鋭い彼らの事です。音がすればわかるはず」

 イリスの問いに、静かに答えたのはヴェロニカだった。

「あたしの出番かしらね」

 シュティーナも遅れて、馬車から身を下し、ポッコポッコと蹄を鳴らして近づいてきて言った。

「――――ルーガルゥの民よ。出てきてはくれないか? 我はケンタウロス族のシュティーナである!」

 そして――――まるで戦名乗りでも上げるかのように大音声を響かせる。と

 少し遅れて――――アォォォン――――と洞窟の奥から狼の遠吠えのような声が響きかえって来た。

 次いで――――ケンタウロスが何用だ?と奥から声が聞こえる。

「話がある! どうか面会を!」

 シュティーナはもう一度大音響を空にこだまさせた。


 3


 表に出て来たのは十人程の人間型をしたルーガルゥだった。なぜルーガルゥと、わかったのかといえば、それは相手が名乗った為だ。名乗られなければ人間と区別はつかないだろう。

「ケンタウロスがなんのようだ?」

 十匹の内一匹が聞いてくる。目つきは眠いのだろうか――――かなり鋭かった。

 下手をすれば気圧されて、喋れなくなってしまいそうでもある。そんな中でも

「交渉に来たのだ」

 シュティーナの声は凛としていた。

 

「交渉?」

 何を言っているのかわからないというように――――ルーガルゥは声を上げた。

「そう、交渉だ。正確には王国との同盟交渉になるが――――後ろのお三方が交渉代理人だ」

「王国だと?」

 そう言われて――――トウタとヴェロニカ、皐月は一歩前へ進み出た。

「蛇の王国 特務員、トウタです」

「同じく――――上級特務員 ヴェロニカです」

「同じく――――騎士課第3席 皐月で御座る」

 そう名乗った。

「お前らは?」

 そう睨まれたのは――――イリスとシュティーナだった。

「あたしは、ダークエルフのイリス。雪花国魔術学院の生徒よ」

「シュティーナ。ケンタウロス族だ」

「揃いもそろって――――よそ者か」

 ルーガルゥ達は嫌悪感を露わにした。が

「まぁいい――――夜までは時間がある。話だけは聞いてやるさ」

 そう言ってなぜかあっさりと――――彼らを洞窟の奥へと案内してくれることになった


 洞窟の奥に進むにしたがって、実は地下へつながっていたのだと気づく。

なだらかな斜度の道が曲がりくねり――――大きめの縦穴が壁にいくつも掘られていて―――其々にドアがついていた。

 さながら現代で言うマンション建築の様だ。

 そして堀口は岩場だというのにどれも綺麗に平ら。

(どうやって掘ったんだろう)

案内をされながらトウタは不思議に思っていた。


 地下の一番奥のひときわ大きな部屋にトウタ達は通された。

 部屋の奥には織物で敷物が敷いてあり――――その上に寝そべる一匹の狼が居る。

(デカい)

 優に2メートルはありそうな黒大狼。長い毛並みが明かりに照らされてテラテラと黒光りしていた。

「族長様。蛇の王国から客人ですぜ」

 ぶっきらぼうな言い草で、案内役のルーガルゥは声を掛ける――――と前に居た

 黒大狼がうっすらと目を開け、トウタ達を見た。

「人の子。ダークエルフ。翼人種。賢狼族か――――」

 部屋の中に、声が響き渡る。その声は威厳に満ちていた。

「蛇の王国の魔術師共が―――何の用だ」

 黒大狼の顔だけがトウタ達に正対した。

「はじめまして。ルーガルゥの族長様。蛇の王国上級特務ヴェロニカで御座います。

 この度は同盟のお話を提案させていただきたく参りました」

 膝を折り、片膝となって――――まず最初にヴェロニカが頭を垂れた。トウタ達もヴェロニカの姿勢に従う。

「同盟?――――はて、お前ら王国は中立を掲げておるのではなかったかな?」

「はい。ですが、此度はローデリアと帝国が王国と月狼国に対し宣戦布告を致しました」

「ホゥ。同盟の場に代理をだして――――奴は出てこんのか?」

「総長様は王国の守りを固めておられます。いまは出れる状況にありません」

ヴェロニカは毅然と言った。

場に飲まれている様子はない。

「ローデリアは帝国と手を結んだ――――しかしそうなると、王国はまさに火の車だろうな」

黒大狼は再びゆっくりと目を閉じ―――開いた。

「はい。是非ご助力をお願いいたしたく」

 ヴェロニカは一層頭を低くして、願いを口にする。が、黒狼はその願いを一蹴した。

「話は分かった――――じゃがその件、ルーガルゥは関知せん。ローデリアと帝国が手を結んだ。確かに我等ルーガルゥ族は帝国には敵対しておる。だが、王国の側に着くかと言えばそうではない」

 ゥゥゥ――――と威嚇音が部屋に響く。

「――――帰ろうみんな」

 トウタは目くばせをし、礼を解いて立ち上がった。

(完全に拒否してる。体はこっちを向いていないし、心底相手はこの話に興味がない――――話をするだけ無駄だ)

「人の子よ。お前はそれで、このまま帰れるとでも考えているのか」

 黒大狼はのそりと立ち上がった。

(やっぱりこうなるのか)

 話が拒否された時点で薄々はわかってはいた――――恐らくルーガルゥは自分たちを生かして返すつもりがないことも。

「少なくともここで死ぬわけにはいかない」

トウタは意を決して魔力を練り始める。

「そうで御座るな。我を通すには力を見せておかねば」

 隣で皐月がで大刀を抜き放つ。

「ああ――――もぅ。トウタちゃんがそう決めたんならアタシも頑張っちゃうんだから」

 イリスは、嬉しそうに呟き、虚空に契約魔術の文字をなぞり始め、シュティーナも

「しょうがないわね」

と言いながら蹄で地面を掻いて見せた。



「最初から生きて返すつもりなどなかった――――と言うことですか」

「拙者実は分かっていたのでござるよ。最初の遠吠えが聞こえたときに」

「なんで早く言わないのよ」

「なんとなーく、そうなのではないかなーと思っただけでござってな」

「確証がなかったと?」

「申し訳ない」

 ルーガルゥ達に周りを囲まれ――――部屋の中心で輪になって身構える。

 シュティーナが呟いたのを、皐月が返し、そのあとにイリスが愚痴るのを見ながら

 トウタは辺り一面を凍らせに掛かった。

 部屋の中があっという間に寒くなり、凍てつくまでの温度まで下がると――――

 氷が部屋を覆っていく。

 

 前衛は皐月とシュティーナが守りを固め、中盤はトウタとヴェロニカ、一番真ん中にはイリスが風の精霊の助力を得て、突風でルーガルゥ達を足止めした。

「これじゃあたし達まで凍るわよ!?」

 シュティーナが焦って叫んでいるが、トウタはかまわず魔力を込めていった。

「馬公。踏ん張れ」

 シュティーナを励ましながら、皐月は向かってくるルーガルゥ達を切り払うように牽制するが、ルーガルゥはじりじりと間合いを詰めてきていた。

「ガァ―――ォゥ」

 黒大狼が吠えて――――衝撃波を放つと、波が体を通り抜けて――――数瞬の間だったがトウタ達は動けなくなった。その数瞬の間に、ルーガルゥ達は優勢に転じる。

 トウタ達と頭数が倍ほども違うのだ。ルーガルゥが有利に立てないはずがない。

 ルーガルゥ達が襲い掛かる。ある者は人間の姿、あるものは狼に変化しながら。

 しかし――――

「吹っ飛べぇ!」

 辛くも―――契約魔術による雷撃で狼たちを弾き飛ばし窮地を救ったのははイリスだった。

 が、それも一瞬。彼らルーガルゥは、虚空で体を反転させて――――壁面を蹴って、突進しながらの攻撃へと一瞬で転じた。

(――――早すぎる)

 壁から壁を蹴って、跳弾のように飛び交うルーガルゥの速さにトウタたちは目がついていかない。

 絶体絶命だった。 

「よう跳ねまわりおるわ」

 皐月が憎々しげにイラつくのをみながら――――

(跳ね回る――――か)

 トウタの頭に浮かんだのはピンボールゲームだった。跳ねたボールがピンに跳ね返り、点数を加算していく―――――そんな映像が脳裏によみがえり―――――トウタはあることを思いついた。

(そうか――――奴らは突進してくる――――なら)

 動いている物体を追うのは効率が悪い。

(壁に衝突させてやる)

 そしてトウタはそれを実行に移した。


 4


 ドゴンっ――――と音が鳴り。

 突進してくるルーガルゥが石壁に激突した。

 部屋の中を仕切る様に石壁を作り、ルーガルゥの間断のない攻撃は一旦止むことになった。

 隙間はない。ルーガルゥは―――やっとのことでルーガルゥ達は突進するのをやめたが、石壁の向こうで唸り声は響き続けていた。

「―――――痛」

 手足が痛むのを感じる。外部から取り込んだ魔素が完全には出力できていないのだ。

 ここしばらくは症状は出ていなかったので、てっきり治ったものだと思っていたが―――――痛みで魔痛症が治りきっていないことを思い出した。

「痛みますか?」

 ヴェロニカが心配そうに声を掛ける。この中で魔痛症の事を知っているのはヴェロニカだけだ。そして――――痛がるのをみて、彼女はすぐに思い当たったに違いない。

「魔術の解除を」

「ダメだ。ここで解いたら――――」

「良いから早く」

「やだ」

 トウタは言うことを聞こうとはしなかった。が――――ヴェロニカはトウタの魔術を強制的に上書きし解除させた。

「何す――――」

 パン―――――。

 さらに何かを講義するトウタにヴェロニカは頬を叩いて静かにさせた。

「――――冷静になりなさい。この場は一旦引きます――――良いですね」

 そしてほかのものには

「イリス、洞窟を内側からぶち抜きますよ。皐月は石壁を崩れないように魔力を注入しなさい。シュティーナはトウタ様を運んで」

 司令塔が指示を飛ばす。

「―――――」

 トウタは痛みに耐えているのかそれきり何も言おうとはしない。が

「もっと仲間を信じなさいよ――――」

 シュティーナがトウタを馬背に乗せながらつぶやく。

「そうよ!トウタちゃんは頑張りすぎなんだから。もっと頼っていいわ!」

「左様。イリスの言う通り。拙者たちはその為に居る。一人で背負うことはない」

 そう言ってイリスと皐月はトウタに笑って見せた。

(仲間を頼れか――――)

 トウタはシュティーナの馬背に乗せられ痛みで、ぐったりとしたまま―――――意識が遠くなるのを感じ、やがて気絶した。


 5


 岩肌を破壊し始めて見れば、洞窟の内壁は比較的に楽に壊していく事が出来た。

 横から地上へ出るために、斜め上へ爆発の契約魔術を行使し、イリスを通じて精霊のナビゲーションを頼りにしながら進むと――――洞窟からさほどはなれていないところに脱出することができた。


 馬車を見つけ、皐月がやっと出てきたころには日はすっかり傾き始めていた。

「皐月――――こっちこっち!」

 イリスは皐月に手を振って方向を知らせる―――――と皐月の耳がいち早く反応した。


「馬車は私が操縦します――――早く乗って」

 ヴェロニカは全員に指示を出し、自分は御者席に座った。

「この特製ゴーレムトウタちゃんが作った奴だよ?――――動かせるの?」

 イリスは後ろから心配そうに質問を投げてきた。

 質問に対してヴェロニカは答えた。

「確かにゴーレムは製作者の命令しか聞きません。ですが――――命令を書き換えることで動かすようにはできるのですよ」

 答えながら――――彼女はゴーレムの背に手を触れ、命令の書き換えを行っていく。

「皐月――――ルーガルゥは追ってきていますか?」

「いいえ。まだ追ってきてはおりませぬ」

「そうですか――――しかし一刻も早くここから逃げなくてはなりません。命令の書き換えはもうすぐ。イリス。皐月。追手が来た場合、迎撃を頼みます。シュティーナはトウタ様を見ていてください」

 トウタは気を失って動かないままだ。戦力としては数えられそうにない。

「ハイ!」

 掛け声とともにヴェロニカがパシンと手綱を叩くと、馬車が走り始め――――

 一行は徐々にではあるがルーガルゥの巣から遠ざかり始めた。

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