◆Middle05◆テストダンジョン

 二日が経過した―――。

 実習室という名の監禁部屋に閉じ込められた四人は、そこでエリンでの冒険について知識を詰め込まれた。それはエレイン先生の地獄の講習。世界の基礎をたれながすムービー上映に学習ドリル、八時間ごとの筆記テスト―――。

 当然、外から鍵を掛けられ、四八時間は私語厳禁だ。

 なぜかすでに知識を持つはずのルインとフジヤマも部屋に押し込まれたのは、単なるご愛嬌―――その部屋の扉が再び開かれた時、四人は干し柿になっていた。


GM:……というわけで、新しいシーンに入ろう。約束の四八時間を終え……「―――時間だ」という言葉と共にその鉄でできた重い扉が開かれた。

ルイン:囚人になった気分だ!(笑)

フジヤマ:なんか四八時間ほど寝てない気がシマス!

クロウ:今ならなんでもできそうな気がする!

菫:うん、勝てそうな気がする!

GM:扉の前で微笑むエレイン先生はのんきに言った。「その意気です~」

菫:先生……(笑)。

GM:「さて、みなさん~。それではこれよりテストダンジョンに入っていただきます。もちろん、1レベル用ダンジョンなので、落ち着いて挑めば問題なくクリアできるはず~」

菫:1レベル用? ダンジョン、いくつもあるんですか?

GM:レベル帯に応じたダンジョンが三つほど、学園の内外に設営されているようだ。それぞれが、スイッチで1~5、6~10、11レベル以上って感じで分けられてる。

クロウ:パワーレベリングをするなら、最上級ダンジョンに行きたいが。

菫:それ、死ぬから……(笑)。

GM:「さてさて、このダンジョンは実際の冒険と同じように、報酬が出ます。学校からの支援金、という形ですね。その中から、一〇〇Gだけ前渡しをしましょう。これで好きな買い物をした上で、迷宮に入っていただきましょう」

フジヤマ:マジですかー! やったー!

GM:「もちろん、この一〇〇Gでなにを買うか……そこもチェックさせていただきます」

菫:わーい! じゃあ、ゴブリン倒したお金とあわせて一一〇Gだね。

フジヤマ:ミーたち全員がもともと持ってる分を足すと……合計一三五Gデス。

GM:お、けっこう残ってるね。

クロウ:前衛の【物理防御力】を上げるか、消耗品を買うべきか。悩むね。


 そして四人は相談した結果、頭装備のヘアバンド(ハットの相当品)を買って菫に、残るお金でMPポーションとHPポーションを一本ずつ購入したのだった。


ルイン:これで残りは5Gかな。

クロウ:今、俺たちはどこで買い物したんだろう(笑)。ここ、校舎の中だよな。

GM:購買部だろう。もしくは生協?(笑)


       *   *   *


 買い物を終えた四人はエレインに先導され、教練棟の地下に設営されたダンジョンルームへとエレベーターで降りていく。そのたどり着いた先にあったのは、円形のホールだった。

 無機質な灰色の壁に埋め込まれた、タッチパネル型の巨大モニター。さらには、次の扉へと続くドアが備えられていた。


GM:……と、そんな状況だな。キミたちがホールに入ると、おもむろに灯りが消えて部屋がすっと暗くなる。そして正面の扉の上に設置されたスクリーンに文字が浮かび上がった。「初めてのダンジョン! 初めての依頼! ~チュートリアルモード~」

菫:親切~(笑)。

クロウ:な、なんかダンジョンというよりは遊園地のアトラクションのような……(笑)。そうか、実際の冒険で練習すると危険だし、人目につくから……科学の力で敷地内に訓練用のダンジョンを作ったってとこか……(笑)。

GM:そのとおり。そして流れる女性の声のアナウンス。(ナレーション風に、かつさわやかに)「用意はいいですか? 冒険者のみなさんにこれより、冒険の流れを学んでいただきます。依頼を受ける時はまず、神殿に向かいましょう」

クロウ:えーと(笑)。

GM:クロウがそうつぶやくと。右側のパネルに映像が出る。なにか受付カウンターと神官服に身を包んだ笑顔の女性の姿だ。


「冒険者の方々ですね? 依頼を探しにきたのですか? 今、用意できる依頼は次のとおりです」その声に合わせ、新しいウィンドウが開き、依頼リストが表示された。


クロウ:俺が思っていたよりチュートリアルだった……(笑)。

GM:今、選べる依頼はひとつしかないようだ。『「依頼:村の宝物を取り戻せ」※パネルをタッチしてください』

クロウ:く……(笑)。

菫:ぽちっ。

GM:“ちゃらりん!” 「今回の冒険!」とキャッチコピーが表示され……「大変です、とある小さな村の宝物が、奪われてしまいました! これを持って逃げたのは、どうやらゴブリンのようです。ゴブリンを追跡し、宝物を取り戻してください! 報酬は四〇〇Gです」。

菫:けっこうもらえる!

GM:「ではみなさん、冒険に旅立ってください!」と言うと、前にあるスクリーンの横の扉が開き、「進め」という意味を表わす矢印マークが浮かぶ。

菫:クロウくん、頼りにしてるからね!

クロウ:いやその……ゲーマー的には、このレベルのクエストをクリアするために一ヶ月の勉強が必要だと思われたことに対する怒りが……(笑)。

菫:(遮って)しゅ、出発しまーすっ!(一同爆笑) 先生、行ってきます!

GM:「行ってらっしゃ~い」

菫:じゃあ、せーのっ!

GM:では、キミたちが次の部屋へと同時に一歩を踏み出した。すると……背後の扉が閉まって、部屋の中央に複数方向から光が投射され、立体映像が浮かび上がる。それは、小さな子供のゴブリンだ。うれしそうに頭の上に宝箱を掲げ、はしゃいでいる。

フジヤマ:うっ、攻撃しづらそうな……。

クロウ:い、いや、ちょっと待て。それ以前になんだこの超技術は……(笑)。

GM:「うききっ! ひゃっほーう! 宝物をゲットしたぜぇ、追えるものなら追ってみな―――っ!」そう言いながら尻をたたく。

フジヤマ:こいつチョーむかつきマスよ!? 殺しまショ!!(一同爆笑)

菫:すごい短気っ!?(笑)

GM:「それはできません、これはイベントシーンです」

フジヤマ:イベントシーンってなんだ―――っ!! そんな冒険があるかあっ!?(一同爆笑)

GM:そして、ゴブリンは財宝を抱えてぴょんぴょん跳ねながら、正面のゲートをくぐって逃げていった。「さあ! 冒険の始まりです! 次の部屋に進んでください!」

フジヤマ:今のイベントシーン……スキップボタンなかったのかな……(笑)。

菫:ともかく、次の部屋に行こう!(笑)


 なお、このダンジョン全体図を下記URLのサイトに掲載させていただいた。

【ネタバレ】に当たる内容を含むので、気になる方はこのダンジョンクリア後に閲覧していただきたい。

http://www.fear.co.jp/kakuyomu_gazou/07MAP.jpg


       *   *   *


GM:次の部屋に入ると、そこにあるのは巨大なスクリーン。なにか、古い遺跡のような映像と、『エリア1 入口』という文字が表示されている。「ゴブリンはどうやらアジトに逃げ込んだようです。おやおや? ゴブリンは、ここに入ったようですね」遺跡の映像の入口には、ちょうど次の部屋への扉が重なっている。

菫:よし、入ろう!

フジヤマ:ユーたち、下がっててクダサイ。扉を開ける時にはまず、罠を調べるのが定石!

GM:「ぴんぽーん! 正解です! 罠の探知と解除はとても大事です」(一同爆笑)

クロウ:これ、いらっとするな!(笑)

フジヤマ:音声オフ機能とかないんデスかね!?

GM:「音声をオフにしますか? Y/N」

フジヤマ:いいよ、そのままでっ!!(一同大爆笑)

クロウ:よし、ともかくシーフを前に出そう。フジヤマ、頼む。

フジヤマ:ふふふ、ミーがやるデスよ。こう見えてもシーフの端くれデスからね! では、まずは……。

GM:「トラップ探知をする時には、探したい場所にエンゲージしてください」

フジヤマ:おっと、そうだった。扉にエンゲージしてトラップ探知する!

GM:入口にエンゲージすると、アナウンスが流れた。「難易度は10です」

クロウ:あ、教えてくれるのか……(笑)。

フジヤマ:チュートリアルですし。では、トラップ探知!(ダイスを振る)達成値は17!

GM:「“ぱぱらぱっぱぱー♪” 罠を発見しました! 扉には鍵がかかっており、鍵を解除すると上から鉄球が落ちる仕組みです」

菫:鉄球っ!?

フジヤマ:それじゃ、罠を解除しマスよー。

GM:「トラップ解除をしますか? Y/N」

フジヤマ:するって言ってるでしょっ!? チュートリアルはくどくていかんデス!(笑)

GM:「解除値は11です」

フジヤマ:5以上で成功!(ダイスを振る)7! 13で成功デス!

GM:すると、“かちっ”という音と共に、設置されていた鉄球が天井のドアの向こうに引き込まれていった。「罠が解除されました! なお、このような時、シーフ以外のメンバーはシーフから最低限の距離を取り、別エンゲージを構築するのが基本となります」

クロウ:TIPSが!(笑)

ルイン:ともかく、次の部屋に入るぞ!(笑)


 こうして、メンバーは科学の力で構築された遺跡の中へと突入したのだった。

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