第3話 金スライム

その道中に俺はまたスライムと出会った。色は金色でとても眩しい。


「エレア、お前の仲間がいるぞ」


「本当ですね」


「それだけ?」


「はい。私達スライムは勝手に生まれますので仲間意識はないんです」


「そうなのか、じゃあどうしよう」



また名前を付けて仲間になるか試すのもいいけど



「じゃあ倒しても問題ないな?」


「ええ。問題ないです」


「ちなみにスライムの弱点は?」


「スライムに急所は無いですね。しいて言うならば私達は火に弱いです。蒸発しますので」


「そっか液体だもんな。でも火の魔法は使えないんだよな俺……雷とかその他の魔法でも良いけどオーバーキル過ぎるし…」


「物理的に殴って吹き飛ばすのも有効ですが、結構な力で殴らないと死なないです」


「じゃあ折角だし殴って倒してみるか」



俺はスライムに近づいていき拳を放とうとしてみたが、それより先にシュバッとスライムに取り込まれた。結構俊敏な様だ。

まぁ溶解無効と呼吸不要があるから死にはしないんだがどうするかな……



「マスター大丈夫ですか?」


「ばびぼーぶば」



エレアからの問いかけに大丈夫だと答えるが、スライムの中なので声にならない。

しっかしどうしたもんかね。スライムの中は結構冷たくて気持ちいんだがそうは言ってられない。

どうにかするべく拳を放ってみるが、全然勢いが出ないのでスライムが飛び散ることはない。

うーむ。魔法で倒すのは簡単なんだが処理がめんどくさいし、取りあえず脱出してら考えよう。

俺はスライムの中をもがきながら外に出ようと試みる。ぽよんぽよんとスライムが揺れて、徐々に体が外に出てきた。

これなら脱出できそうだ。そして泳ぐようにもがいて



「ぷはっ!やっと出れた」


「お帰りなさいませ」



こうして、俺VSスライムの対決は一旦保留となった。



「まさか一瞬で取り込まれるとはな」


「スライムは強敵でしたね」


「エレアよりは強そうだ。エレアの場合は凄く大人しかったし、色も銀じゃなくて金色だからレア個体なのかもしれないな。エレアもレア個体だったのか?」


「普通のスライムは緑色みたいですので分類はレアだと思います。

それはそれとして、名前を付けてみては如何ですか?」


「そうだな、魔法で倒すのもありだけど折角だし人になるか試してみても良いか。エレアの仲間を増やして布団代わりにするのもいいし。

しかしそうしたら名前どうしよう?」


「私が付けたらどうなるか試してみても良いですか?」


「人型になったエレアも言ってみたらイレギュラーだし、そうだな試すだけ試してみろ。いい名前を頼むぞ」


「それでは行きます……あなたの名前は【ルナ】です」



その瞬間当たりに光が周囲を包んでいき……と言うことはなく、ぽよーんと揺れる金ぴかスライムが一匹いるのみ。



「失敗か。いやまて、手を触れながらじゃないと駄目っていう可能性もあるぞ」


「確かにそうですね。でも私が取り込まれる可能性があるのですが……」


「元々同じスライムなんだから大丈夫だろ」


「では試してみます」



そして金色に輝くスライムに手をのせて改めて名前付けをしてみる。取り込もうとする様子はなく金色スライムはこちらの出方を伺っている。

もしかしたら仲間と認識したのかもしれない。



「あなたの名前は【ルナ】です」


「………何も変わらないな」


「変わらないですね」



ぽよーんと揺れる金色スライム。やっぱり可愛い。



「じゃあ俺がやってみるか。これで人になったら俺だけの能力って事になって迂闊には使えなくなるな」


「そうですね」


「よし。お前の名前は【ルナ】だ」



するとその言葉を待っていたかのようにスライムが光リを放つ!

金ぴかスライムの発光攻撃!目に直接ダメージを与えた!



「ぐわあああああっ!目があああ!……と言うコントは置いといて」



そして光が収まると今度は金髪の女性が…



「また人になるとは……」


「なんと言いますか流石ですね」


「またって事は貴方もなんですの?」



金髪スライムのルナが喋る。喋れることに関して突っ込むのは野暮と言うものだろう。



「おお、知識の共有も上手くいってる。しかも金髪のお嬢様キャラだ!だが裸なのがなんだかしまらないから減点!」


「いきなり減点は酷くないですの!?」


「突っ込みも出来るお嬢様とは、中々やるな」



ちなみに俺の知識は他の世界の情報からも得ているので、ネタとかを色々豊富に取り揃えている。



「まあ良いですわ。貴方が私のマスターになるわけですのね?」


「ええ。私のマスターの……あれ?マスターの名前はなんですか?」


「あれ?言ってなかったっけ?神様だったから俺に名前は無いよ。人が勝手に呼んでいた名前はあったと思うけど覚えてないし」


「元ですよね?」


「ドーモ、元=神様です」



挨拶は大事なので、胸を張って答えてやる。



「神様ですの!?」


「元ね、元神様」


「神様がなんでこんなところに!?」



俺は事の顛末を改めて二人に話す。

話したのは俺が神様でこの世界の管理者だったこと。

いつの間にか引きずり堕とされ、死にまくって、やっとたどり着いたのがここだと言うことを話した。



「そんな事があったんですか」


「なんと言うか大変だったんですのね」


「俺のことは良いんだよ。もう神様でもなんでもないし、普通に生活できればそれでいいさ。死ねないし食事も必要ないから普通の生活とは言えないだろうけどな」



管理の仕事から解放されたのは良いんだが。俺は死ぬことができない。

だから俺の最終目標は俺を殺してくれる存在が現れるまで待って、

殺されることかな……。



「普通の生活とはまた難しいですね」


「死にたくても死ねないなんてまるで拷問ですわね」


「だよな…。でもまあこうやって仲間が出来たから良いとするさ。

ただ、俺の最終目標は俺と言う存在の完全消滅かな」


「完全消滅を願うなんて悲しいですわ」


「死の苦痛を何回も味わうよりかはいいと思います」


「今は休息を求めているけどな。てかそろそろ何か服を着ないかルナ?」


「服?別に必要ないですわ」


「スライム形態なら確かに要らないんだが、今の人型だと…なあ?」


「と言うわけで色々と不味いみたいですので何か服を着てください」


「仕方ないですわね。では擬態で作ってみます。服の知識はマスターの知識を受けてありますので…」



そういいながら、ルナは体を一旦スライム状にしてから服を形作っていく。

貴族のお嬢様が着るような服…ではなくメイド服のようだ。



「何故にメイド服?」


「マスターに仕えるのに最適なのはこの服だと思うのですわ」


「なるほど!確かにその服が最適なようですね」


「て、服作れるのかよ!」


「スライムには擬態の能力がありますからね」


「なら俺のジャケット必要ないんじゃ…」


「それとこれとは別ですので、ジャケットは返しません」


「いや、そこは返せよ」


「嫌です」


「返せ」


「嫌です」


「か・え・せ」


「絶対に嫌です」


「くっ仕方ない。この手は使いたくなかったんだが致し方あるまい!

……エレアに命令だ!今すぐジャケットを返して服を作るのだ!」



聞くかどうかわからないが、ノリで俺は命令を下してみる。



「ぐっ、命令であれば仕方ないですね」



どうやらノリでの命令でも従ってくれるようだと二つの意味で一安心する。



「……これで良いですかマスター」


「全く、出来るなら最初から作っとけよな」


「マスターの物が良いのです」


「あれ?俺への好感度そんなにあったか?」


「……あの撫で心地は最高でした」



と恍惚の表情を浮かべながら言うエレアに対して、なんだかなあと思いながらスルー。



「まあ服が作れたのならそれで良いとしよう。では改めて洞窟に向けて出発だ」


「「イエスマスター」」


「やっぱりマスターが同じなら意思疎通が出来るのか?」


「「それは勿論です」」


「そ、そうか。それは何よりだ」



俺だけ会話が出来ないのが悔しいがその内出来るようになるだろう…多分。

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