レクイエム

 ——戦場。

 恋い慕っていた青年をかばい凶弾に倒れた少女は、力なく笑ってつぶやいた。


「ごめん……。私、もうダメかも、しんない、や……」


「バカ! いいからしゃべるな!」


「ねえ、最後に、お願いがある、の……」


「最後なんて言うなバカ!」


「お願い……。最後に、もう一度聞か、せて、あなたの……」


 少女は囁いた。


「ヒューマンビートボックス……」


 少女の絞り出すような声に、青年は覚悟を決めた。


「わかった。最高のを聴かせてやる。……ブントゥク、パントゥク、ブントゥク、パントゥク——」


 リズミカルな音は、少女が動かなくなったあともずっと戦場に鳴り響き続けた。

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