35. 修羅場からの……!




 大学4年になった光矢は自由登校をしている為、昼間はインターネットサイトで職探しを今更している。後は安全で保障されているエロサイトを適当に閲覧してブックマークしているのみだ。

 夕方近くに真弦が帰ってくると、入れ替わるようにしてふらりと外に出かける。

 そんないつもの生活に吾輩の監視が加わり、吾輩が隙を狙って外に出ないよう2人で協力し合っているのが伺えるのがなんか嫌だ。


 今晩は夕飯が用意されておらず、真弦はハンバーガーチェーンの袋を提げて帰ってきた。美羽も一緒である。

 外に出て行った光矢は真弦と美羽の関係を知っているが、別に二人の仲を認めた訳ではない。だが、いつまでも進展しない仲に油断していたらしい。


 百合好きのあなた、まつみうのお時間ですよ!

 吾輩は眠る我が子をガードしつつ相変わらず薄目を開けて傍観するだけだけどな。


 美羽が普通にハンバーガーの包みを開けて食べ始める。

 そんな隙だらけの美羽のハンバーガーに真弦が食らいつく。


「ちょっと……! 真弦の分はこっちだってば」


 真弦は美羽のハンバーガーを咀嚼して嚥下する。唇の周りにケチャップがはみ出して付いていた。


「美羽のが良いんだ。美羽が良いよ……」


 唇の周りについたケチャップをペロッと舐め、美羽にしなだれかかる。


「一緒に食べよ?」


 いつになく強気で色っぽい真弦は速攻で美羽を赤面硬直させた。


「ね、ねえ、光矢君帰って来るかもだから……あっ……バカ」


 食べかけのハンバーガーを持っていた美羽は発情期のバカ女にスカートから脱がされていた。猫柄のキャラクターパンツは既に湿っているようで……。


「美羽の分少し貰ったからこっち齧っていいよ」


 真弦は真新しいハンバーガーを口に咥えると、美羽に反対側を齧らせた。

 その美羽の顔は桜色に色づいている。


「……んっ……んんっ……はうっ」


 パンツ布越しに割れ目を弄られただけで美羽はハンバーガーを食いちぎってしまう。


「ほら、駄目駄目、まだ食べてないじゃない」


 真弦の表情はSっぽく色づいている。意地悪な笑みを浮かべながら布越しの割れ目を弄り続けている。


「あっ……ああっ……まつる……だめっ……はぅん!」


 美羽の弱点を布越しに探り当てたらしく、美羽はビクンと身をしならせた。


「うちのアパートは壁が薄いからさぁ、隣のジジイとかが聞き耳を立てているんだよ」


「あっ……ぃやぁ……!」


 真弦はハァハァと興奮しながら変態オヤジのように美羽の服を丁寧に脱がしていく。

 脱がされている美羽は抵抗もせず、されるがまま期待の眼差しで真弦を見つめている。美羽ってぞくぞくしながらHな真弦のいう事を何でも聞くしやっぱりドMだよな。


 美羽は自ら食べかけのハンバーガーを口に咥えると、真弦に体を開いた。まだキャラクターパンツは脱がされていないが、湿り気で染みを作っていた。


「美羽ったらやらしー。こんなに濡れてる」


 真弦が美羽のパンツの染みをまじまじと見つめるが、以降は染みの付いたパンツを触ろうとはせずに、肌が桜色に染まる美羽を観察しながらフライドポテトを食べ始めた。


 ハンバーガーを咥えた滑稽な美羽がプルプルと震えはじめる。


「真弦っ! いい加減にしなさいよ!」


 美羽は裸のままハンバーガーをむしゃむしゃ食べると、怒ったまま真弦を押し倒したのだった。

 あ……フライドポテトが宙に舞ったぞ。


 裸同然の女二人の熱い吐息が狭いアパートの空気を濃密にする。

 吾輩の隣でプスープスーと寝息を立てている子猫の鼻息も荒いのだが、美羽の押し殺したような喘ぎ声も荒い。

 美羽は顔を真っ赤にして両手で口を押えて快楽の波を我慢している。いつもそんな感じなのだ。


「ううっ……あっあっ……!」


「もっと声を出していいんだよ? 恥ずかしがらずにさ」


 真弦は愛用の電動マッサージ機で美羽の股間を刺激している。美羽のキャラクターパンツは既にびしょびしょで、濡れた布越しに薄い茂みが見える。


「家では礼二がずっといるから遠慮してるんだし、私の家ぐらいは素直になってもいいんだよ?」


「ああん、ああん! だめぇ……そこはぁ! あっ真弦ぅぅぅっ!」


 真弦に許しを得て安心したのか、美羽は口から手を放してアンアン喘ぎ始めた。いつもこの部屋で喘いでいるのは地声が少年のような真弦の声なので、妹キャラで可愛い美羽の嬌声を聴くのは新鮮である。


「イクッ……アーッ! イクゥゥゥゥッ――ッ!」


 美羽は絶叫を上げて体を反らしビクビク痙攣して絶頂を迎えた。

 ……どうやらクリトリスへの激しい刺激のみでイッたようだ。


「フフフ……美羽ったら素直なんだから」


 全裸の真弦は張りのある釣鐘型のおっぱいを揺らしながらマッサージ器のスイッチを切る。そこらに散らばっている大人のおもちゃをどれにするか視線を彷徨わせた。


「……早く、脱がして……お願い」


 ただ快楽の玩具で弄ばれるパートナーの美羽は絶頂を迎えた後でも股間の奥がうずうずしている様子だ。濡れたパンツも気持ちが悪いのか、床から尻を浮かせて誘うように腰をくねらせている。涎の垂れた跡がだらしなく開いた口の端からテラテラと濡れ光っていた。


「ねえ替えのショーツ持ってきたの?」


 真弦は蛍光色の細いディルドに持ち替えてさらっと普段っぽい質問を美羽に投げた。


「やーっ! 何で今そんな事聞くのよぉ?」


 いきなり正気に戻された美羽はカーッと赤面しながら開いていた足を閉じて怒った。


「ほらほらぁ、怒らないの。脱がして欲しいんでしょ? ね?」


 真弦は普段通りの口調で美羽を窘めると、美羽が愛液でぐっしょり濡らしたパンツを焦らすようにゆっくりと脱がせた。濡れた下着は脱がし辛かったようで、パンツのゴムに沿って布が丸まっている。

 美羽は小さな子供の様に無防備な体制で股を広げ、ハーフ特有のブロンドの薄い陰毛を空気に晒した。陰毛が水分を含んで束になり、粘液の糸を引いている。


 美羽を責め続けている真弦が快楽に痺れているのかは知らないが、彼女の股間も濡れているのは間違いない。

 尻の割れ目からつぅっと透明な液体が垂れてきている。


「はぁっ……はぁはぁ……っ!」


 真弦は興奮しながら長い双頭ディルドを膣内に入れて装着し、それを男根がそそり立つように途中で曲げて抜けないように調整した。

 蛍光色の偽チンコが出現する。


「はぁはぁ、……美羽ちゃーん、コレが何かわかるよね?」


 眼鏡の奥の瞳を爛々と輝かせた天上院真弦、この女の表情は変態そのものである。


「……ふたなり……だよね?」


 美羽は真弦が銜え込んでそそり立たせた蛍光色の偽チンコを見て、オタク特有の答えを導き出してあげた。

 だが、


「違う、私はそういう模範的な答えを求めていない」


 ふたなりのどこが模範的な解答だというのだろうか?

 全裸の美羽は疑問に満ちたまま、正解を導き出そうと口を開いた。


「……ち……チン……ポ……」


 下品な一言を待っていたようで、真弦はでかいおっぱいをブルルンと揺らしてガッツポーズを示した。

 普段、美羽が言わない言葉を導き出せて彼女は満足の様だ。


「よぅし! 正解だ」


 ディルドを下の口に咥えた真弦は鼻息を荒くしながら、怯える美羽をひっくり返して四つん這いにした。


「ご褒美だよ♪」


 真弦は唾を付けた指で美羽の肛門をほぐし始めた。


 ディルドを股に挟んだ滑稽な真弦はしばし、美羽の可愛らしい窄まりを指で丁寧に解している。


「ああん! きゃうっ! ……もっと広げてぇ……!」


 四つん這いの美羽はくま君クッションを抱きながら尻穴を蹂躙される快楽に溺れている。

 ……ああ、すっかりアナルを開発されてしまったようだね、この女は。


「いつもの……まだ?」


「ああ? アナルパールの事?」


「うん。早く、お尻にパール入れて……」


 いつもそんな物を尻の中にぶち込まれているだけあって、会話がスムーズである。

 発情中の美羽は下品な隠語も恥ずかしげもなく話すみたいだ。……クッソ、礼二が最近大人しかったから様子を伺えなかったのだが、ちゃっかりレズ二人の仲は進展してたって訳か……!


「そんなのより、今日はこっちこっち♪」


 真弦は股に挟んでいたディルドの片方を腰を使いながらぐりぐりと美羽の解された肛門に擦り付ける。


「おほっ……!」


 真弦がなんかいつになく変態度が増して変な声を上げている。


「入れる……入れるよぉー美羽!」


 ぐぷぷ……。そんな音がこちらまで聞こえてきそうだ。

 コンドームを付けたディルドを美羽の尻穴に難儀しながら埋め込み始める。ディルドの中に針金か何かが入っているのか、角度調整が可能らしい。


「入っ……た!」


「……真弦! わたし達、……繋がったんだね?」


 美羽は目に熱い涙を浮かべて嗚咽を漏らしだした。

 擬似的でも、二人の肉体は繋がれているのだと美羽は感激して涙をぼろぼろと零す。


「うん……」


 対する真弦はというと、自分の股に挟まったディルドを動かそうと腰を動かしているが、美羽の肛門の締まりで固定されて自分の股だけがぬちゃぬちゃぷちゅぷちゅと音を立てているのに違和感を感じて息を荒らげて頬を染めながら眉根を寄せているだけだった。


 それからしばらくして……。

 女たちの「アンアン」言う高い嬌声が部屋の中に響き渡り、濃密な女のフェロモンみたいな空気が外に抜けずに天井付近で渦を巻いているように見えた。


 ところで、ずっと吾輩には真弦が美羽との性交で尻しか使用しないのに疑問を抱いているのだが……。


「ううっ……ああっ……ああっ……」


 仰向けにされた美羽は唸るような声を上げながら真弦が握ったコンドーム付きのディルドの先で尻穴を穿られている。

 ヌチュヌチュと音を立てる孔の下でひくつきながら汁を垂らす花弁が開いている。

 美羽のピンク色の膣穴が尻穴にディルドが刺さる事によってぱっくりと広がって見えるのである。

 上にあるクリトリスはぷっくりと腫れ上がり、綺麗な紅色の花の蕾のようだ。


 真弦は策士である。

 美羽の尻穴拡張によって何度も女の体内を眺められるようにしているのだから……。


「ま……まつ……る? おまんこ……まだぁ……?」


「ん?」


 真弦は観察眼のまま、美羽の膣を見つめていて美羽の呼びかけに気もそぞろだ。


「早く、わたしも真弦とおまんこでつながりたいのよぉ……」


 美羽は恥ずかしそうに顔を歪めながら低い喘ぎを上げていた。


「わたしの処女は真弦が貰ってっていつも言ってるでしょ? うああっ!」


 ディルドを深く差し込まれて美羽が高く呻く。腸壁を突かれたようだった。

 真弦はその答えをいつも濁している。

 美羽は未だ処女のままだったのか……!


 ガチャ、ギィッ

 急に鍵とドアが開いて、いつもは居酒屋のバイトか飲み会に出かけている光矢が帰ってきた。


「やべーやべー携帯忘れ……た」


 彼は自分の女だと勝手に思い込んでいた真弦が本当に女の恋人とセックスするシーンを目の当たりにするのだった。


 全裸の巨乳と貧乳女二人と、天然パーマの服着た日焼け男がしばし沈黙して見つめ合った。

 いつもは驚かされてもあまり驚かない光矢が凍り付いている。


「……どうも、部屋間違えたようで」


 動揺した光矢は開け放ったドアの前で立ち尽くしていた。


「早くドア閉めてよ!」


 真弦が怒鳴る。

 あ、閉まる前に吾輩が逃げるチャンスじゃないか?


「あ……すまん」


 光矢がガチガチの動作でドアを閉める寸前、吾輩は光矢の股の下を抜けてドアをすり抜ける事に成功した。

 やっほー人間共の隙をついてやったぜ!


「うわーっ! 玉五郎が逃げたっ!」


 光矢が絶叫する頃には、吾輩は猛ダッシュで隣の塀に飛び乗っていた。


「早く閉めて!」


 真弦の怒声。そしてバタンとドアが閉まる。


「……ファー(フッ、成功したぜ)」


 吾輩は塀の上で後ろ脚を使って首を掻くと、フンと鼻を鳴らして106号室のドアを一瞥した。

 虎視眈々と逃げるチャンスは狙ってるんだよ。こちとらマイポリシーである金玉は獣医に奪われたくないんだからな。


 ガチャッ


 その時、106号室ではなく、隣の105号室のドアが開いて住人の爺さんが何故かロケットランチャーの模造品を構えていた。

 油断していた吾輩は爺さんの撃った網に絡まったのだった。

 畜生、いつぞやの真弦が所持していたネットランチャーと似た品じゃないか!





 105号室の爺さんの木の表札には『松本秀人』とどこぞの伝説のロックミュージシャンのような名前が彫り込まれている。

 吾輩は網ごと摘ままれて松本の爺の家の中で待機させられる事になった。


「隣のカップルは修羅場の様じゃの」


 松本は捕獲ネットの中で観念した吾輩に話しかけると、サンダルを脱いで106号室と似たような間取りの部屋に入った。

 彼の部屋は大きな液晶テレビと桐箪笥と茶箪笥の他はガラスケースに入った日本人形と木彫りのクマぐらいしか目立ったインテリアは見当たらない。隣(106号室)と隣接した折り畳みのベッドの布団はちゃんと整頓されている。

 真弦達のとっ散らかった部屋と違ってとても清潔である。

 洗濯機はベランダの脇に物干しと一緒に置いてある。


 コタツテーブルに『TVクラブ』の雑誌と新聞が置いてある普通の枯れた老人の部屋だ。いや、両端の白い壁に不自然なこよりが何個かねじ込まれているのだけは妙に不自然だよな。

 冷蔵庫…? そういえば茶箪笥の横の床にそのような重い荷物を置いた形跡が残っていたが、隣のエロい声を盗聴する為に捨てたか売ったかしたのだろう。食品はコンビニやスーパーでこまめに買えば大丈夫だからな。


 吾輩はネットから外されると、観念してベッドの上に寝転がった。

 すると、


『あーんっ!』


 いつも身近で聞きなれた喘ぎ声が薄い壁から漏れ聞こえてきた。


「どういう事なんじゃ、玉五郎ちゃん?」


 松本がしわしわの手で吾輩を掴む。が、すぐさま放り出してテーブルの下から玩具の聴診器を取り出して装着する。

 エロ爺はベッドに上がって手近なこよりを抜き取る。

 老眼鏡を外して壁に密着し、壁の穴を覗き込んで聴診器を壁に当てた。


「むほっ……」


 エロに正直だなエロジジイ。老いてもなお盛んって訳か。

 こんな身近に牛山礼二の二号みたいのがいらっしゃるとは吾輩も思ってもいなかった。まさか真弦まで別の人に大胆に覗かれているとは想像もしていないだろうな。

 吾輩は壁になんか小さい穴があるなと思っていたが別に疑問を抱いていなかった。

 しゃあねえ、穴の何個かあるうちの低いので向こうを確認するか。




 尻穴にバイブを突っ込まれた美羽が身を竦めて真弦の痴態を目の当たりにしているのが松本の爺さん特製の覗き穴から見えた。


『あっあっアーッ! 美羽! これがセックスだよ?』


 大ぶりの乳を揺らす真弦は背面騎乗で光矢に貫かれている。

 自ら腰を振り、誰かに見られる事で激しく乱れているようだった。


『ひゃああん、気持ちイィー! イッちゃうぅー』


 そういや真弦の奴、隣にいる爺が壁に穴開けてるのに気が付いているようだった気がする……。しかしこういう覗きに関して鈍い光矢は細かい壁の穴に気が付いていないのが哀れだ。


「どういう事じゃ? どういう事なんじゃ?」


 覗き見している爺さんはジャージとブリーフを下してマスをかいている。金玉は年相応にしわしわだが、どす黒いチンコは硬度を保っている。

 ああ、真弦は隣の爺さんにオカズにされていたのか……。反対側の壁にも穴が開いているようだが、103号室の女は数か月前に引っ越して今は普通の男が住んでいて用無しのようだ。


『真弦? 真弦? いつもの真弦じゃないよ……』


『アアーッ!』


 プシャッ

 真弦が潮を吹いてよがり狂っている。

 この一年で真弦は潮吹きをマスターしたのだった。アングルからすると、美羽は覗き見しているジジイの壁際におり、覗いているこちらにも見えるように大サービスしているようだ。

 尿道から出る尿ではない透明な液体は美羽の体にもかかっていた。


『……ハァハァ、見た? 今のが私の射精だよ』


 性道具にされた光矢は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、性行為を見せられて興奮し始めて性器を弄り始めた美羽にくぎ付けになっていた。


「どういう事なんじゃ? どういう事なんじゃ?」


 吾輩にもわからないよ、爺さん……。


 真弦は美羽を抱きしめ、快楽に喘ぎながら彼女の唇を吸い続けている。

 互いの女性器をくっつけ合い、猛り狂う男根を挟んで後ろから擦られている。


 美羽は最初、真弦のセフレの光矢の男性器に嫌悪していたが、嬌声を上げるいつもとは違う艶のある真弦の姿しか見えなくなり気にならなくなった。


『ひゃ……あっ! クリちゃんが擦れるぅ……気持ちいいよぉ』


 美羽が羞恥を取り払って可愛らしく喘ぐ。


『あのさ……真弦、美羽ちゃんに挿れたいんだけど?』


 激しい刺激に耐え切れなくなった光矢が真弦に申し出るが、真弦はそれを許さない。


『駄目っ! 光矢は私のに……んああっ!』


 真弦は自らの手で光矢のチンコを掴み、自分の膣穴に挿入した。


『おい……ゴム無しはちょっと……ううっ……あっ!』


『あああ~、好きな人に囲まれてどろどろぐちゃぐちゃで私幸せだよぉ……』


 真弦は膣内で暴れる光矢の生のチンコに悦びを感じている。

 そんな天上院真弦は性行為にすっかり溺れてしまって何も気が付いていなかった。抱いて抱かれている者の二人の気持ちを。

 そして自分の気持ちにも全く気が付いていなかった。


「玉五郎ちゃんや、真弦ちゃんは結局どっちを選ぶのかのう?」


 松本の爺さんは萎えたチンコに付いた薄い精液をティッシュで拭き取ってから下着とジャージを履いて吾輩に質問してきた。


「うなーん(知らん)」


 吾輩は珍しく鳴いて爺さんに答えたのだった。




 数時間後、お隣の松本から我が家へ帰された時、我が箱入り娘の子猫が「ニンゲンって何?」って激しく動揺しながら聞いてきたが、「スケベニンゲンって料理屋がどこかにあるらしいな」と適当に質問を濁しておいた。娘は外界を知らない箱入りだから人間の異常な性事情は刺激が強すぎたようだ。




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