第112話「能力者たち」
「超能力者っていってもどうやって探せばいいんでしょう……? 喰人種みたいに気配で分かるんでしょうか……?」
龍次の元恋人・高島遥と別れた優月たちは任務に戻り超能力者を探して町を歩き回っていた。
携帯の能力測定アプリを使えば霊的な能力を持っているかどうかは調べられるのだが、誰彼構わず使用する訳にもいかず悩んでいる。
そもそも、相手が超能力者と分かったからといって攻撃を仕掛けていいものなのか。
「今さらなんだが――」
「――? どうしたの? 涼太」
「さっきの高島って女、妙な気配を持ってなかったか?」
「え……? そうかな……?」
優月としては、龍次の恋人だった女ということばかりが気がかりで他のことまで意識できていなかった。
「そういえばそうだね……」
龍次もなんとなく気付いていたらしい。
もっとも、能力測定を行えるような状況ではなかったが。
「――! 優月、刀の変化解けるようにしとけ」
「え……」
涼太は優月に声をかけたあと、後ろを振り返る。
「お前ら、さっきからおれたちのことつけてきてんな。それに今言った妙な気配も持ってやがる。超能力者って奴か?」
涼太に続いて振り返ると、ガラの悪そうな男が十人ほどついてきている。
「そういうてめえらは、超能力者って感じじゃねえな。羅刹って奴か?」
男たちは羅刹を知っているらしい。やはり超能力者か。
三人の中で羅刹なのは優月一人だが、超能力ではなく霊力が目覚めている涼太と龍次も彼らからすれば特殊な気配を持っているのかもしれない。
こちらが答えるより早く、男たちは周りを取り囲んできた。
「まあ、何だっていい。ちょっと頼まれたんでな、死んでもらうぜ」
そう言って男の中の一人が掌から火の玉を出現させる。
間違いない。超能力だ。
他の能力者たちも、それぞれ電撃や岩石を出して一斉に優月たち目がけて攻撃してきた。
着弾と共に黒煙に包まれる。
「霊刀・雪華」
その煙を突き破って、羅刹化した優月が空中に飛び出す。
煙が晴れた地上では龍次と涼太を守るように氷の壁が展開されている。
優月はもう雪華にさん付けをしなかった。この刀は、もはや自分の一部だからだ。
「な、なんだてめえ!?」
優月の予想以上の力に驚く能力者の背後を取って、霊刀・雪華の
すると、その能力者の男は身体を
これは人間界に戻る前に、惟月が霊刀・雪華に施してくれた術の効果だ。
優月には通常の峰打ちで敵を倒せるような技術はない。
そのため、敵を殺さずに無力化できるようにと、霊刀・雪華の峰に麻痺の霊法をかけてくれたのだった。
「くそ! なんだこいつは!?」
他の能力者たちも、各々の能力で優月に攻撃を仕掛けるが、流身で加速した優月は彼らの間を一気に駆け抜け、あっという間に全員倒してしまった。
「優月さん、すごいね……」
龍次が感嘆の声をもらす一方で、涼太は倒れた能力者に携帯端末を向ける。
『対象の能力強度は三です』
第一研究室で追加した能力測定アプリによる測定結果はこの程度だった。
「まあ、こんなもんか。今の優月の敵じゃねーな」
一応他の者の能力も測定したが、その力は二から四の間に納まっていた。
この分だとレベル・ファイブぐらいは大丈夫だろう。
問題はレベル・テンだ。今回戦った不良らしき連中はあっさり倒せたが、攻撃の威力自体はそれなりのものだった。これの三倍ほどの力を持った敵となるとどうなるか分からない。
「この人たちはどうしましょうか……? 道路に放置するのもかわいそうな気がするんですが……」
「ほっとけ。こんなチンピラみたいな奴らにおれたちが手間をかける必要はねえよ」
自分を襲った者たちの心配をする優月とは対照的に涼太は冷めている。
結局、わざわざ敵を助けてやる必要まではないということで、三人は能力者たちを置いて歩き出した。
優月たちの戦いを少し離れた位置から観察していた高島は、舌打ちしつつその場を去ろうとする。
「『何よ、あいつら。全然使い物にならないじゃない』」
「――!?」
「――とでも言いたげな顔ですね」
高島が驚いて振り向くと、道路脇のフェンスに背中を預けて腕組みをしている着物の女が一人。
「な、なに、あなた……」
「月詠雷斗様第一の下僕・如月沙菜です」
沙菜は高島に通じるはずのない肩書きを名乗った。
雷斗の信者であるということは、誇りを蔑ろにする者を嫌悪するということを意味している。
「彼らは能力者協会の下っ端ですね。自ら手を下すでもなく、他人を使って私の仲間を襲わせるとは、よほど死に急いでいるようですね」
沙菜は、倒れている能力者たちを一瞥した後、腰の刀に手をかける。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! 私は日向君をよく分からない女に奪われたから……。私は被害者よ!」
たじろぐ高島を沙菜は冷ややかに見据える。
「だったらなぜ、龍次さんまで襲わせた? 私は筋の通らないことをする奴が嫌いでしてね。あなたに生かす価値があるとは認めませんよ」
「くっ……」
抜刀する沙菜から距離を取って、高島は指輪から光を放つ。
その光を全身に浴びる沙菜だが。
「ウソ……。なんで……」
「金剛石から放った光で対象を石化させる能力ですか。残念でしたね。石化能力なら私の邪眼の方が上ですよ」
沙菜の左目は、赤く妖しい光を帯びている。
高島自身も超能力者だったが、超能力であれ霊力であれ、同系統の能力は相殺される。
「能力強度は六ってとこですか。雑魚ですね」
沙菜のものも含めて携帯霊子端末には能力強度を測定する機能がついているのだが、沙菜ほどの実力者ならアプリを使用するまでもなく敵の力を測ることは容易だ。
追い詰められた高島は逃走しようとするが、走り出すより早く沙菜の刀が高島の首を裂いた。
大量の血が噴き出し高島は倒れる。
その様を見届け、うすら笑いを浮かべる沙菜。
「殺人事件の被害者として死ぬなら本望でしょう?」
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