第38話 マーメイドたちの聖戦②

 マーメイド族がエルフ族に戦いを挑んだ。


 エルフ族はそれを受け、戦いの準備を整えた。


 ゴブリン族と人間族は、その動きを注目していた。


 ゴブリンの王は言った。


「勝てそうな方の味方になるぞ」


 ゴブリンたちはその意見に賛成し、しばらく趨勢を見守っていた。


 人間の王が言った。


「負けそうな方に宣戦を布告する」


 人間たちはその意見に賛成し、しばらく趨勢を見守っていた。


 ゴブリンも人間も、どちらが勝つかが決った後に、その勝ち馬に乗ろうとしていた。


 頭脳明晰なエルフたちは、人間とゴブリンがそう考えていることを正確に見抜いていた。


 エルフの長老たちは話し合った。


「どうせ人間もゴブリンも、戦いには参加しない。だが戦いの後の略奪には参加したがるだろう」


「そうだな。愚かで欲深い奴らは、そうするに違いない」


「だから奴らには、我々エルフ族が勝てることを伝えておこう。そうすれば、奴らは争って我々の味方につく」


「どうするのだ?」


「人間には、ゴブリンが我々についたと伝える。ゴブリンには、人間が仲間についたと伝える。どちらもエルフ族の勝利は確実だと思い込むだろう」


「嘘をつくのか?」


「嘘などではない。やがて真実になる、未来の事実だ」


 エルフたちはゴブリンと人間に手紙を送った。


 果たして人間とゴブリンはエルフとの共闘を決め、両族ともにマーメイド族に宣戦を布告した。  




《お前は合理的なのではない。強欲なだけだ。だから騙されるし、利用される。これまでも、今も、これからも、永遠に》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る