抜殻

 結論から言うと、派手な演出の割に被害は少なかった。校舎の一部が欠けたものの、機体は随分と小型で、火薬も燃料もそれほど積んでいなかったようだ。大きく炎上することもなく、ただただ、はりぼてのおもちゃのように歪んだ鉄の塊と、操縦していたであろう人間の肉片が凄惨な光景を創り出していた。

 あの様子ならば、避難する群れに飛び込むことも出来ただろう。そうしなかったという事は、きっと事情があったのだと思うと、憐れみこそすれ、恨む気持ちは微塵も湧かなかった。

「こうなったら、敵も味方もない。丁寧に弔ってやろう」

「兄さんは墓を建てるのが好きだね」

「弔うというのは、人間を人間たらしめる行為だと何かで読んだことがある。お前には難しい事かもしれないが、覚えておくといいさ」

一つ一つ、遺体の欠片を集めていると、機体の隙間から、ひしゃげた金属製の名札がかちゃりと落ちた。それは一人の人間が死んだのだと告げていた。


 それよりも。

ざわざわと避難した人間が戻り始めて一番の問題となったのは、廊下中あちこちにばら撒かれた、蝶の形の爆弾であった。威力は決して強くないものだが、もし踏みつけでもしたら厄介である。現に、特攻何かよりも被害は出ていて、戻りしなに負傷した者が多くあった。子供の泣き声が方々で聞こえた。非人道的というのはこれを指すのだと怒りに震えた。別動班に指示を出し、併せて、救護の手配に危険物の周知と、するべき事はたくさんある。

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