第18話 ヒーローの人8

 コジーンには迷わず帰ってくることができました。

 コドラさんはとっても疲れたみたいで、戻ってくるとすぐに小屋に入って寝てしまいました。

 わたしはすることがなくなってしまったので、コドラさんと同じように、早めに寝ることにしておきました。明日も一緒に空を飛べるかもしれないので、早く明日が来てほしいと思ったからです。


 それからは、とってもいろいろなことがありました。


 まず、朝、コジーンにたくさんの人が来ていました。

 その中でも、キラキラしてキレイなバッチを一番たくさんつけていた人が、わたしの前に来て

「君か、噂のドラゴンライダーは」

と言いました。

 最初は何のことかわかりませんでしたが、おじいちゃんが「ドラゴンに乗る人のことじゃよ」と教えてくれたので、わたしはいきおいよくお返事をしました。


 すると、今度はコドラさんと一緒に町に連れて行かれました。

 そこでは、大きなお祭りが開かれていました。わたしがコドラさんの上に乗って、コドラさんとわたしは大きなおみこしの上に乗っかりました。

 大きな道を、そのおみこしがずんずんと進んでいきます。

 わたしは、おみこしに乗せられたままワッショイワッショイと運ばれている時に、道の横にいる人たちから声を掛けられました。


「よ、ドラゴンライダー!」

「おめでとう、小さな勇者さん!」

「おめぇならやると思ったぜ、ちくしょー」


 わたしにジュースをくれた男の人もいました。

 今日は昨日と違ってみんなが手をふってくれていたので、わたしも一生懸命手をふりました。


 しばらく道を運ばれていると、おみこしが止まりました。

 あれ? と思って前を見てみると、そこにはお坊さんみたいな感じだけど、着ているものはもうちょっと不思議な感じの人がいました。頭がつるつるのところは、お坊さんと同じでした。


「子ドラゴンおよび大ドラゴンを遣いし勇者よ。貴殿を国民は祝福する」

「?」


 コドラさんとドラゴンさんが登場したのはわかりましたが、ほかはあんまり分かりませんでした。

 つるつるの人は続けました。


「昨日、緊急で催された国民集会の末、貴殿にヒーローの称号を授与する運びとあいなった」


 おみこしが地面に下ろされました。わたしとコドラさんの近くに、つるつるの人がゆっくりと歩いて来ました。

 その手には、キレイで大きなバッジがにぎられていました。バッジにはヒモがつけられているので、首につけることもできるようになっているみたいでした。


「これを」


 つるつるの人がそれをこっちにさしだしました。

 わたしは何でそれをもらえるのかがよく分からなかったので、つるつるの人に聞いてみました。


「何でこんなにきれいなものをくれるんですか?」

「それは、貴殿がドラゴンに跨がり空を駆け

、ヒーローと認められたからだ」

「わたしがヒーローになっった……?」


 あのヒーローの人が頑張ってなろうとしていたヒーローに、わたしがなってしまったのでしょうか? でも、わたしは何もしていないのに、それは変だと思いました。

 それなら、わたしではなくてヒーローの人にあげるべきだと思いました。


「でもでも、わたしは何にもしてなくて、ただコドラさんと仲良くなっただけだから、ヒーローじゃありませんよ? 一緒に遊んでただけだから、何かをしたわけじゃないですよ?」

「否。貴殿の働きにより、ドラゴンがこの町を襲うことはなくなるであろう。それは何にも代え難い成果である。受け取られよ」

「うーん」


 わたしは、何を言っても聞いてもらえない気がしました。

 だから、わたしはバッジを受け取ることにしました。


「ありがとうございます」


 でも、わたしはもらったバッジをコドラさんの首につけてあげました。

 やっぱりわたしがもらうのはおかしいですし、どちらかと言えばコドラさんのほうがずっと頑張って飛ぶ練習をしてきたのです。

 コドラさんはグォーンとうれしそうな声を出しました。わたしには、何を言っているのかわかるような気がしました。

 だから、わたしもそれにこたえました。


「うん、行こう!」


 コドラさんは今来た道を走りました。道のまわりには人がいましたが、道にはずっと人がいなかったので、走るのにちょうどよかったのです。

 コドラさんがぐっとヒザを曲げたかと思うと、わたしたちは空にいました。


「うおぉぉぉお!」


 まわりからたくさんの声と拍手が起こりました。

 でも、それもすぐに聞こえなくなってしまいます。それぐらい遠くにきたのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る