• 学園イノベーション

  • 第二部 コンサル部大ピンチ? 敵は生徒会にあり
  • 第三章 解決のためには胃袋だって掴みます
  • 第52話 へぇ、いつの間に

第三章 解決のためには胃袋だって掴みます

第52話 へぇ、いつの間に

 「おはようございます、末永さん! 今日も頑張りましょうね!」


 アイビーさんと別れた次の日、僕は気合を入れ直していた。

 期末テストが迫っていることもあり、実質動けるのは今週だけ。

 使えるのは、あと五日。


 その間に何としても漫研部の部長、次念さんを説得しなければ。

 新たな決意を元に、僕は第三視聴覚室で意気込む。


 「ええ……そうね」


 そんな気合が入った僕を見て、末永さんは少し後ずさり。


 「如月さんも、頑張ろう!」

 「うん、それは良いんだけど、栗島くん、何か良いことでもあったの?」

 「え、いや、何もないよ!?」

 「ふーん……?」


 如月さんに至っては僕を怪しんで睨む。

 実際アイビーさんに大見得を切ったことも多分にあるのだが、というかそれしかないのだが。

 兎に角、今週中に解決しないと。


 「牡丹さん、これは……」

 「ええ、間違いないわね」


 なのにどうしたというのだろう。

 末永さんと如月さんは、二人して目を合わせる。


 「栗島君。あなた、誰かに炊きつけられたわね?」

 「へ? い、いやそんなまさか」

 「黒ですね、これは。絶対に黒です」

 「如月さんも何を言っているの? 黒って一体……」


 二人共、完全に僕を疑っている。

 疑う要素なんて…………。



 ひょっとして昨日、アイビーさんと会ったことか?



 「どうやら、思い当たるフシがあるようね。これは女ね」

 「そうみたいです……やはり栗島くんはムッツリスケベですね」


 二人とも……なんで分かったんだろう。

 それに、もしかして僕はこれまで誰かに唆されないと頑張らない男だと思われているのだろうか……。

 とはいえこれまでの経験上、この流れはなんとなくマズイ気がする。

 誤魔化したほうが……うん。いいだろうな。


 「ははは、二人共何を言っているんですか。ぼ、僕は文化部と、水球部を……」


 どうにか取り繕おうと僕は弁明を図るが。


 「そうだよね。今回の件は栗島くんの今後の生活に関わってくるもんね」

 「元はといえば話をややこしくしたのは栗島君だものね。当然だわ」

 

 「「でも……怪しい」」


 一層怪しんでくる二人の視線。

 

 「……が、頑張ろう!」


 僕にはもはや、この言葉で無理やり終わらせるしか術はなかった。


 「まぁいいわ。とりあえず、今日は漫研部に顔を出したいのね? 栗島君」

 「はい、せっかくなので、もう一押しを!」

 「……ええ。頑張って説得しましょうね」


 諦めたのか、末永さんは踵を返して第三視聴覚室の扉を開け、外を出る。

 これから漫研部の部室へと行くらしい。


 「はい!」


 僕も、慌てて後を追う。

 部活アライアンス、承認のために。




 

 「すまないが、君たちの要求には答えられない」





 ――次稔さんからの回答は芳しくなかった。


 「理由を! 理由を聞かせてもらえませんか?」


 僕は椅子から立ち上がりながら、机を叩く。


 「あれから部員同士で考えていたが、やはり我々が獲る物は少ない。それに似たような活動をしているならば、漫研部に皆が入れば良いのではないか?」


 次稔さんはすました顔で答える。

 彼の言うことはもっともだ。

 だが有川さん達のように、自分達のやりたいままにやりたいという意見もある。

 それをいきなりこの場で、最上級生に言う勇気は今の僕にない。

 

 おまけに、ここは放課後の一般教室を利用した、漫研部の部室。

 周りの部員から冷ややかな視線を浴びて、僕は上手く話をすることが出来なかった。


 「ですが、それは……」

 「別に我々は入部を拒んでいるわけではない、むしろ歓迎しているくらいだ。だからそのアライアンスの彼ら彼女らが漫研部に入るというのなら、快く受け入れる次第だ」


 予想はしていたが、やはり実際に断られると身体に緊張が走るものだ。

 それに今回は様子見のつもりだったこともあり、まさかこのタイミングで断られるとは思っていなかった。


 「もう少し考えてはもらえませんか? せめて、夏休みに入るまでは」

 「……分かった。だが、あまり期待はしないでくれ」

 

 ◇

 

 「まさか……こんなにすぐ断られるとは」

 「そうね。もう一押ししてようかと思ったら、逆に突っぱねられてしまったわ」


 肩を落としながら、僕は末永さんと部室に戻っていた。

 しかし肩を落としていたのは僕だけ。

 末永さんは飄々としている。


 「末永さん……あまり落ち込んでませんね?」

 「前に言ったでしょう? 最初からある程度想定はしていたわよ」


 そういえば、言っていたな。

 テスト期間まで時間がないこともあって、つい焦ってしまった。

 はぁ……駄目だ、このままでは。

 でも夏休みまはあと二週間くらいしかない……。


 「栗島君、そうやってすぐ落ち込んでいては良くないわ。さっきまでの元気はどこへいったのかしら?」

 「末永さん……」

 「勝負はここからよ。漫研部の部長に対する対抗策は既に考えてあるわ。それに――あの副会長もね」

 「え、アイビーさんのですか? いつの間に?」


 確かに、元々末永さんには副会長の調査をお願いしていた。

 末永さん曰く、一旦調査が落ち着いたので今日も漫研部へ顔を出すことに付き添ってくれてはいたのだけど。

 そうか、やはり何か掴んだのか。


 「やっぱりさすがですね、末永さんは」

 「そうねぇ……でも栗島君もさすがね いつのまにアイビーなんて呼ぶ関係になったのやら……」

 「え……ぼ、僕、そんなこと言ってましたか?」

 「ええ、しっかり言っていたわ」


 末永さんは満面の笑み。

 そしてここ数ヶ月の付き合いで、この笑顔のもたらす意味を僕は知っていた。

 背中から汗が……。


 「あら、どうしたの栗島君。顔色が悪いわね?」

 「そ、そんなことないですよ!」

 「そう。それじゃアイビーさんのことについて話があるから、これから麻優と合流してミーティングといきましょうか」

 「は、はは……」


 怖い。

 何か話題を変えなければ。




 

 「誰に許可を得てわたしの名前を呼んでるのよ」

 





 そう考えいた時、僕達の前に現れたのは――

 生徒会副会長。


 「ア、アイビーさん!?」

 

 この人はいつも急に現れるなぁ……。


 「くっ! 栗島新!」


 僕達の前に姿を見せた時のことをぼんやりと思い出していると、アイビーさんがフルネームで僕を呼ぶ。


 「学校では普通に呼びなさいよっ!」


 そして、怒る。


 「えっ! す、すみません副会長。でも、そんなこと言ってましたっけ」

 「言ってないけど、普通に考えたら分かるでしょうに……」


 そでも向こうではファーストネームが普通って言ってたんだけどな……。

 よく分からない。


 「全く、帰り際のことといい……実はあなた、あんまり勉強できないでしょ?」

 「う……それは」


 痛いところを突かれた。

 それにしても、帰り際って何かったっけ。


 「やっぱり分かってないわね、まぁいいわ。ところで、その様子だと失敗したみたいね?」

 「そ、それは……」

 「せっかくあれだけ啖呵を切ったのだから、しっかり達成してよね」

 「はい、次こそは!」


 最後に、僕に微笑むと、副会長はこの場を去っていった。

 良かった。今日はあまり怒られなかった。

 なんだかんだ言って、昨日のことがあるから、僕への態度も少し柔らかくなったのかもしれない。


 「……ふーん」


 反面、僕を強く睨む、末永さん。


 「へぇ……そう」

 「す、末永さん? あの……何か」

 「いいえ、でもデートならわざわざプールだなんて嘘付かなくても良かったんじゃないの?」

 「そ、そんな! 違います! プールは本当に行きました! 副会長と映画を見て、お茶をしたのはその後です!」

 「やっぱりデートはしたのね、しかも映画……」

 「あ……」


 墓穴を掘ってしまった。


 「ち、ちがいます! あれはデートとかじゃなくて! アイビーさんが不良に絡まれていたのを僕が助けたので、そのお礼に!」

 「へぇ。コンサル部のナイト様は生徒会の盾にもなるのね、感心だわ」


 完全に末永さんの機嫌を損ねてしまった。

 そりゃそうだよな……末永さんに誘われていた映画を断って、アイビーさんと行ってしまったのは事実だし。


 「す、すみませんでした……」

 「いいのよ、別に。栗島君が誰と仲良くしてようと私には関係ないものね?」

 「い、いえ……」

 「さ、帰ってミーティングをしましょうか?」



 「お……お手柔らかに」

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