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  • 第二部 コンサル部大ピンチ? 敵は生徒会にあり
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第44話 コンサル部は課題を解決してナンボ

 「あれが噂のパンツ男ですって」

 「あぁ、あれが副会長の」

 「何かやりそうな顔してるよね、いかにもムッツリって感じで」

 「アイツが真の勇者か……」





 今日の昼休みは、学食の手伝いはお休み。

 僕はお弁当を広げてひとときのリラックスタイム。

 ――であるはずなのに、自分の教室にも関わらずどうにも居心地が悪い。


 理由は当然、僕に向けられる野次馬からの視線。


 文化部の定例会での一件。あれだけでも噂は徐々に広がっていたのに、昨日の副会長パンツ事件(二度目)で一気に火がつき、僕は一躍時の人となってしまった。

 教室からは勿論、他のクラスからもここぞとばかりに僕の顔を拝もうと人が押し寄せる。そのほとんどの人間が嫌悪感や敵意の目。

 そして僕の肩身をより狭くするのが、ごく一部の人間から送られる羨望の眼差し。


 ちなみに如月さんは学食の手伝いがある日なので今日はバラバラ。僕はなるべく外を見ないように、お弁当だけに視線を向けてご飯を食べながら、この状況を耐えようと踏ん張る。


 なぁに、状況が少し前に戻っただけと思えば。

 ぼっちだった頃の僕に……ちょっとだけ状況は悪化してるけど。


 「く、栗島。そんなこっそりしないで、お昼一緒に食べようよ」


 こんな状況でも救ってくれる神はいるようで。

 僕の唯一の友達、大木はこんなときでも僕を気遣ってくれる。


 「大木……良いのか」

 「気にするな。友達だろ」


 大木の一言に少しだけ涙しながら、寂しくも男二人だけで机を並べ、弁当箱を広げる。


 「大木。あの……サッカー部では、この件」

 「……うん。一応、サッカー部でも噂になってるよ。栗島が、副会長に公衆の面前でパンツを見せるように命令したって」


 予想はしていたけれど、ここまで早く、しかも大木以外のサッカー部の面々にまで広がっているとは。噂というものは怖い。

 しかし……僕が副会長のパンツを二回も見てしまったのは事実だが、少し話が湾曲しているのは不本意だ。いくら僕でも命令なんてしない。

 実際初回はお尻を触ってしまったわけだから、それが広まるよりはよっぽどマシなんだけど。良かったお尻魔人とか言われなくて。


 「大丈夫。ぼくは冤罪だって分かってるよ」


 大木はどこまでも、友達思いの良い奴だった。

 例え学校中から悪い噂を立てられようが、友達や、部活仲間が信じてくれているなら心強い。


 「だって、そんな勇気があるなら今頃如月さんと付き合ってるしね!」


 ……大木は友達だ。

 周りが言い難いこともちゃんと言ってくれるからね。

 というか如月さんとは友達だって。


 しばらく二人で談笑しながらお昼を食べていると野次馬達もお腹がすいたのか、ご飯を求めて学食や購買に、または自分の教室へと戻っていく。

 その頃合いを見計らって、大木はもう一つの噂話を口にした。


 「あともう一つ聞いたのは……文化部、揉めてるって」

 「それも知ってるのか……」


 それは今回の件がきっかけで、文化部の連携に亀裂が生じているという噂だ。

 紺学園の文化部は団結力が高い。月に一度会合を開くのなんてまさにその例だろう。それぞれが小規模な部活だからこそ、これまで文化部は一致団結してきたというのに、それが今まさに、崩れ去ろうとしている。


 ただ困ったことに、その噂は事実なのだ。


 副会長が提示してきた廃部条件の一つ、部員が三名以下であること。このハードルをクリアするために、僕達コンサル部を始めとした零細部活は部員獲得に躍起になっていた。


 当然部員なんてものは、そんなにすぐ見つかるものじゃない。

 なぜならこの時期に部員を獲得するというのは、他の部から部員を引き抜くという行為だから。

 つまり、文化部全体での引き抜き合戦が始まってしまったことが、今回の亀裂の原因。そしてその引き金を引いたのは僕達コンサル部ということになっていた。


 「運動部に引き抜きの話はこないっぽいけど、何だか大変なことになってるみたいだね……特に、コンサル部は」

 「うん。とにかく、なんとかしなくちゃ」


 末永さんや如月さん、それに一部の人間はフォローをしてくれるが、僕が副会長の暴走を加速させてしまったのだから、僕が原因ということを否定しきれないところも多分にある。

 でも、コンサル部じゃない。原因は僕にしかないのだ。

 だからこの噂をそのままにしておくというのは僕にとっては許し難い。急いで解決しなければならない事案だ。


 それに、コンサル部の廃部危機も。

 そちらは結局のところ僕達コンサル部には部員を集め、副会長を説得するしか生き残る道はない。だがそれだけに突っ走ってしまえば、後々文化部の絆の修復が難しくなる。噂の件をなんとかするためにも、文化部の一体感もなんとか取り戻さねば。


 「ぼくに出来ることがあったら、何か言ってよ」

 「ああ、ありがとう」


 大木に心配されながら、僕はとあることを決意する。


 (まず解決するのは、あの二つの部活だ)



 「BL愛好部と水球部の課題を解決するですって?」


 僕が決意をした後、結局一人で出来ることなんてたかが知れているわけで。

 しかもサッカー部の件で周りに迷惑をかけて失敗した苦い記憶もまだ鮮明に残っている。


 というわけで、僕は早速コンサル部の二人に相談を持ちかけた――のだが、


 「栗島君、今私達がピンチなのは分かってて言っているのよね?」


 案の定、反応は好ましくなかった。

 早速問いただしてくる末永さん。如月さんはその様子を黙って見つめる。


 「仮にその二つの部活に手を差し伸べるとして、コンサル部の課題はどうするの?」

 「それはそれで勿論、解決しなければならないことです。ですが、僕達コンサル部の本質はクライアントの課題解決にある。まずはその点をしっかり抑えさせて欲しいんです。今後のためにも」

 「今後のため……ねぇ」

 今後のため――その言葉で、末永さんは僕が言いたいことを汲みとってくれたようで、腕を組みながら考えこむ。


 「僕が蒔いた種なので申し訳ないのですが……今の状況はコンサル部にとっては非常に良くない。なので、まずはその信頼回復から務めるべきと考えたんです。当然、原因である僕が全て責任を追うべきなのかもしれませんが、前みたいなことになるのも……」

 「今の状況はあたし達にとってもどうにかしたいのは確かだから、栗島くんだけでどうにかしようとは考えなくていいよ。一緒に頑張ろ」

 「そうね。とりあえず信頼回復に務めるという点は賛成だわ」


 如月さんも僕の意見に理解を示すと、末永さんも信頼回復という点においては同意してくれた。


 「でも、仮にその二つの部活の課題を解決して、私達の信頼を取り戻せても、文化部全体の修復が出来るわけじゃないのは理解しているわよね?」

 「それは分かってます。ですが今回の……文化部の件について、副会長に全て非があるとも思えなくなってきて」


 僕はここ数日、部員獲得の調査をしていたことで気づいたことがある。

 それはBL愛好部や地下鉄研究部のようにごく少数の人数で活動している部活には、似たような活動をしている部活があるということだ。


 地下鉄研究部に対しての鉄道愛好部。

 BL愛好部に大しての漫研部。


 彼ら彼女らなりに熱意を持って部活を作った気持ちは理解出来なくもないが、有川さんのように一人で活動するというのは孤独だ。

 まぁ内容が特殊だからっていうのもあるんだろうけど。それだって漫研部に同じ趣味を持つ人間だっているかもしれない。それならば、漫研部に入るほうがよっぽど合理的だし、仲間も増えて楽しいに違いない。


 「そうねぇ、それについては副会長の言うことも一理あるのよね。過剰に作られた部活を整理するというのは真っ当な理由だもの」

 「副会長の意向に沿っているみたいで、二人には納得行かないかもしれませんが」

 「別にその点は気にしなくていいわ。誰が意見しているかは関係ないもの」

 「まぁ、そうしたら有川さんの部活も、どうするべきか見えてくるかもしれないしね」

 「うん。なのでまずはその点、なぜ部活が枝分かれているのかを根本から調べて、BL愛好部の件は対策を考えたいんだ。その間にコンサル部の部員獲得も目星がつくかもしれないし」


 文化部及びBL愛好部の件は方向性を認めてくれたようで、二人とも僕の意見に頷く。


 「それで栗島くん、水球部のほうはどうするの?」

 「水球部の部員獲得はすぐには難しいだろうから、まずは活動場所の確保だね」


 水球部についてはやりたいことが明確に差別化されている分、他の部活と合併させるという判断は難しい。

 そのため、緑原や菜園の言うように、こればっかりは来年の新入生を待つしかないだろう。

 ただし、それは部活場所が確保されればの話だ。一年間、武道場の裏でトレーニングしか出来ないのでは、全国を目指すどころの話じゃない。幸い水球部については副会長直々に、活動場所をクリアすれば一年の猶予をくれると言質が取れている。


 「まぁ、栗島君がそう言うならやってみましょうか」

 「分担はどうします? BL部……なんか毎回言うの恥ずかしいから有川さんって言うね。有川さんはあたしが担当、水球部は牡丹さん。栗島くんは遊撃手でいい?」

 「それについては、どちらも僕と如月さんで担当しよう。水球部の二人も一年みたいだから、僕と如月さんのほうが懐へ入りやすいはず」

 「うん、分かった。よろしくね、栗島くん」

 「こちらこそ――で、末永さんには申し訳ないのですが」

 「引き続き、副会長の調査をすればいいのね」


 末永さんは僕が言うよりも早く、依頼したいことを察知。


 「やっぱり、その……僕は副会長に嫌われているみたいで、どうにも相性が悪い気がします。それに、二人がかりで調査するよりも見つかりにくいでしょうし」


 僕は言いづらいのを我慢し、伝えるべきことを末永さんに伝えると、末永さんは渋々といった様子で頷いた。


 「悔しいけれど合理的な判断だから言い返せないわ……了解。けれど、部員獲得もしっかり進めるのよ」

 「はい、ありがとうございます!」


 「それと、時々私のほうも手伝ってね。麻優ばっかりじゃ不公平だもの」


 最後に、一つだけ注文付きで。


 「ははは……善処します」


 BL愛好部に、水球部の課題解決。

 そして、コンサル部の部員獲得に、副会長の説得。

 課題は増えたが、やるしかない。コンサル部は、課題を解決してなんぼなのだから。

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