• 学園イノベーション

  • 第二部 コンサル部大ピンチ? 敵は生徒会にあり
  • 第一章 コンサル部を粛清します
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第41話 役割分担をしましょう

 結局、定例会で僕は何一つ成果を挙げることが出来なかった。

 それどころか副会長の逆鱗に触れてしまったようで、生徒会による文化部の仕分け作業は明日にも敢行されようとしているとの噂だ。


 その定例会から翌日。


 「さて、それじゃ今日のミーティングを始めましょう」


 僕達コンサル部は、第三視聴覚室に集まっていた。

 プロジェクターが設置されたミーティングスペースの椅子へ腰掛け、会議の進行を務める末永さん。


 「そうですね」


 同じくミーティングスペース、末永さんの対面に座る如月さん。

 ……そして、カーペットの上で正座する僕。


 「議題は……栗島君がなぜ、あの場でお馬鹿な行動を取ったのか」


 僕が身体を縮こまらせているのを見てもなお、末永さんはミーティングを中断するようなことはしない。

 それどころか、正座する僕をため息混じりで見つめ、昨日の行動に対する糾弾が今まさに始まろうとしていた。


 「はい、議長」


 口火を切ったのは如月さん。

 勢い良く挙手をして、ファシリテーターである末永さんに発言の許可を求める。


 「麻優、どうぞ」

 「それは栗島くんが変態だからだと思います」


 そして突きつけられる、残酷な一言。

 ちなみに定例会での一部始終は、昨日のうちに如月さんへ報告済みだ。


 「そうね、私もそう思うわ」


 如月さんの残酷な一言に末永さんも同意し、まるで示し合わせていたかのように意見を合わせる二人。


 「あ、あの……」

 「あら、どうしたのかしら? 栗島君」

 「いえ、その……昨日は、大変申し訳ありませんでした」


 とは言っても、昨日の僕は何も出来なかったわけで。

 結局のところこうやって姿勢を正し、頭を下げることくらいしか、今の僕に出来ることはなかった。


 「いいえ、あなたはよく頑張ってくれたわ。ありがとうね、栗島君……いえ、パンツ君」

 「す、末永さん!」

 「ふふ、冗談よ」


 今週何度目になるか分からない僕の謝罪を見て、末永さんは微笑みながらもおどける。


 「本当に冗談なんでしょうか? 何せあたしはその場にいなかったので、分かりませんから」


 だが、如月さんは納得がいかない顔。

 昨日のうちに一部始終を伝えていたとはいえ、やはり自分だけ参加出来なかったことをちょっぴり根に持っているらしい。


 「……その、定例会へ行っておいて、役立たずだったのは謝るから」

 「いや、あたしには何も被害がないし、そもそも話を聞いてるとやっぱり栗島くんが直接引き金を引いたってわけでもないんだから、気にしなくても良いんじゃない? まぁ、パンツ君と言われるのは自業自得だよね」

 「き、如月さんまでその呼び名で……」


 パンツ君。

 昨日副会長が定例会の去り際にそう発言したことで、僕には不名誉なあだ名がつけられようとしていた。

 さすがに昨日の今日で学校全体へ広がるということはなかったが、定例会で集まった人達には僕が副会長へセクハラでもしたのではないかと勘ぐられ、今回の一件はやっぱりコンサル部のせいなのではないかと陰で言われているらしい。


 故意ではないにしても、僕が副会長の……その、パンツを見た上に……お尻を触ってしまったのは本当だから……まぁ勘ぐられても仕方ないのか……。

 むしろ……噂は事実ということに。


 「遊びはここまでにして、どうやったら廃部を阻止できるか本格的に考えましょう。別に私も麻優も、本気で栗島君のことは責めていないんだから、そうやっていつまでも正座していないの」

 「で、ですが……大見得を切っておきながら、結局何もすることが出来ず」

 「まだ廃部と決まったわけじゃないもの。もし責任を感じているのなら、ここから頑張ればいいのよ」


 それでも二人だけはこの呼名の理由を、朝の件は事故だということを分かってくれているので、こんな状況になっても僕の味方でいてくれる。

 ありがたい。

 そんな二人にこれ以上迷惑をかけないためにも、しっかりしないと。


 「分かりました」


 僕は力強く頷くと、久しぶりにミーティングスペースの、如月さんが座る隣の椅子へ腰掛けた。



 「確か、廃部になる条件があるんでしたっけ」


 本格的なミーティングが始まると、如月さんが先程までと気持ちを切り替えるように発言した。


 「実績がないこと、部員が三名以下であること、活動内容が合理的ではない、もしくは重複している……だったかな」


 定例会に出ていたのだからせめてこれくらいの発言はしなければと、僕は昨日副会長から通達された廃部の条件をもう一度共有。


 「あたし達も実績……はあるよね? 対外的ではないけど」

 「そうだね。サッカー部も大会を順調に勝ち進んでいるし、チェス部の部員も増えて、学食も好評……あと、僕も用務員のおじさんの手伝いをしたしね」

 「そうね、実績については一旦戦える状態と言えるわ。問題は残りの二つね」


 コンサル部は対外試合で結果を残すことが可能な部活ではないため、明確とは言い難いが、僕と如月さんが入学してからの案件はどれも成功を収めている。これは立派な実績だ。

 だからこそ、浮き彫りになるのは残りの課題。


 「部員が三名以下、言い換えれば四人以上集まらないと廃部……つまり後一人、コンサル部に入部させないといけないわね」


 末永さんが部員獲得の課題を口に。


 「それに副会長さん曰く、活動内容の重複も当てはまるみたいですね。生徒会との重複かぁ……生徒会は部活じゃないから良い気もするけど。それ以前に、コンサル部の活動自体がよく思われていないみたいですが」


 如月さんがもう一つの課題、活動内容の問題を口にする。

 恐らくコンサル部の場合は重複と合理性、どちらの面でも副会長から目をつけられているのだろう。


 「全員が全員、生徒会へ入れるわけじゃないし、生徒会役員以外がそういう活動をしてはダメっていうことでもないと思う。要は、副会長が納得するかどうかが鍵になるってことかな……いっそのこと、報酬をなしにしちゃいます? 末永さん」

 「それはダメよ。対価をもらう代わりに、生徒会やボランティアでは出来ないような付加価値をつけるのが私達の存在意義だもの」

 「牡丹さんならそう言うと思いました。はぁ……今から新しい部員を探すのも大変なのに、副会長さんを説得するのも骨が折れそうですね」


 末永さんは、コンサル部の報酬について強いこだわりがある。

 コンサルタントとしてのプロ意識がそうさせるのか、はたまた性格か……どちらにせよ部長が首を縦に振らないのなら、僕達もそれに従うだけだ。

 昔から一緒にいる如月さんが強く反対しないのだから、そう悪いことにはならないだろうし。


 それにしても、部員の獲得に副会長を納得させる……か。


 僕達は今回のミッションの難しさを改めて思い知らされていた。特効薬となりそうな手段は、すぐには思いつきそうにない。


 「――ここは役割分担するしかなさそうね」


 三人でしばらく頭を悩ませていると、末永さんから提案された、一つの案。


 「僕達三人での、役割分担ですか?」

 「ええ。今私達には大きな課題が二つあるわ。一つは部員の確保、もう一つは副会長を納得させること。部員を新たに探す人と副会長を探って納得させるだけの材料を集める人とで、分けて行動しましょう」


 その提案に、如月さんが頷く。


 「もしかすると学校側から予算のこととか、運動部にもっと力を入れるべきとか、何かしら言われているかもしれませんしね。それが分かれば対策も立てられるかも。最悪、コンサル部を毛嫌いする理由が見つかるだけかもしれませんが……あ、栗島くんのことを言ってるんじゃないよ?」

 「う、うん……ありがとう」


 僕も如月さんのフォローにお礼を言いながら、末永さんの目を見て頷く。

 ……本当に僕が理由なら、どうしようかな。不安だ。


 「牡丹さん、人選はどうします?」

 「そうね。部員を探すのは麻優、あなたにお願いしたいわ」

 「あたしですか?」

 「どのみち全員の生徒がどこかの部活へ入っているでしょうけれど、二、三年生よりも、まだ人間関係が出来上がっていない一年生を当たるほうが効果的だわ」

 「分かりました。友達とかにも聞いてみます」


 如月さんは部員確保か。

 うん、人懐っこい彼女には適任だ。


 「僕はどうすればいいですか?」

 「栗島君は私と一緒に副会長へ探りを入れてもらうわ」

 「分かりました」


 僕は末永さんと同じチームか。

 昨日から迷惑掛けっぱなしだから、頑張らないとな。


 「ちょっと待った!」


 だが、そんな僕の決意を砕くように、如月さんが待ったを申し出る。


 「あら、どうしたの麻優」

 「栗島くんも同じ一年生なんですから、こっちで一緒に部員を探すほうが良いのではないでしょうか?」

 「部員も必要だけれど、まずは副会長を納得させることが第一だもの。こっちが上手く行けば、部員数の問題もなんとかなるかもしれないしね」

 「そうは言いますが、そちらは副会長の身辺調査ですよね? であればターゲットは一人。こちらは多数の人間に声をかける必要がある。どちらが人海戦術に適しているかは明白ではないでしょうか?」


 これはまさか……。

 僕はゴクリ、と唾を飲み込む。


 「さっきも言ったけれど、副会長の説得が上手く行けば部員を探さなくても良いかもしれないのよ?」

 「ですが、部員を増やすこと自体は今回の件とは関係なく財産として残ります。コンサルは人材が命ですから」


 また始まったのか……。

 最近、二人は言い争うことが多い。喧嘩するほど仲が良いとは言うが、サッカー部の件以降、明らかに増えてきた。


 「あ、あの……二人とも、その辺にしませんか」


 僕はなんとか二人をストップさせようと会話に入ると、


 「やれやれ……しょうがないわね」

 「栗島くんがそう言うなら……」


 今回は『黙ってて』と言われることなく、あっさりその場は収まった。


 「で、栗島君。あなたどっちと一緒に行動したい?」

 「え、僕ですか?」


 だが、それは僕に選択権を委ねるという結論に辿り着くまでの一瞬の間でしかなかった。


 「あなたが決めて良いわよ。と言っても、もちろん私と行動したいでしょうけれど」

 「何を決めつけているんですか! もちろんこっちだよね! 栗島くん?」

 「え、えっと……」

 「そうやって優柔不断なのは良くないわよ。あの副会長にリベンジしたいでしょう?」

 「は、はぁ……そうですが」

 「栗島くん! 私と一緒に部員を探そう! あんな副会長なんて放っておけばいいよ!」


 今度は僕を巻き込みながら、口論をする二人。


 「そ、そうかもしれないけど……」

 「栗島君」

 「栗島くん!」

 「ええ……っと……!」


 こ、これはどうすればいいんだ……。

 如月さんの言うことはもっともだ。部員確保のほうが人海戦術には向いているし、副会長一人の調査ならば末永さんでだけでも十分処理できるだろう。

 だが、末永さんの言う通りまずは副会長を納得させなければ話にならない。今回の最重要課題だ。


 この選択は非常に難しい……。


 あちらを立てればこちらが立たない……。

 ここは……これしかない。


 「ど、どっちもやります!!」



 「「へ?」」



 そうして捻りだした僕の回答に、二人は素っ頓狂な声を上げた。


 「だ、だってどちらもコンサル部にとって重要なことでしょう? だったら、動ける人は多ければ多いほうが良いです。日によって必要な人数は違うでしょうし、ケース・バイ・ケースで僕は必要な方をサポートするっていうのはどうでしょうか」


 「遊撃手ってわけね……まぁ、悪くないわ」

 「そうですね。ここは一時休戦といきましょうか」

 「そうです! 二人ともサポートするんで、皆で頑張りましょう!」


 何とか説得に成功したようで、僕はほっと胸を撫で下ろす。


 「じゃ、初日は私と一緒ね。栗島君」

 「何言ってるんですか牡丹さん! 初日こそこっちですよ。皆、今頃部員集めに必死ですよ!」


 それも束の間、またしても再開される二人のバトル。


 「その間、副会長も行動しているはずよ。こちらも鉄は熱いうちに打たないと」

 「むぅぅぅぅ!」


 「あ、あの……」


 「栗島君!」

 「栗島くん!!」


 「そ、その……」


 もう、僕にはどうしようもない。


 「じゃ、じゃんけんで……」


 そうして、やや投げやりな僕の言葉に頷くと、二人は力強く腕を捻った。




 「じゃんけん……」

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