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エピローグ

第37話 お昼休みは友達と

 末永さんのお陰でなんとか追試を突破した次の日。

 僕と如月さんは珍しく教室でお弁当を食べていた。


 いつもなら学食の手伝いをしている時間なのだが、今日は二人共お休み。

 お昼休みのチャイムが鳴ると同時に、机を並べて同じお弁当を食べる。


 「やっぱさ……ぼく、いないほうがいいよね?」


 一緒に食べているのは如月さんと僕、それと大木。

 机は三つ、トライアングルに並べられていた。

 大木は肩をすぼめながら、一人中身の違うお弁当へ手を伸ばす。


 「そ、そんなことないよ! 気を使わせてごめんね、大木くん!」

 「いや、如月さんが謝ることじゃないよ。なんていうか……ぼくのほうこそ、ごめん」

 「ううん、やっぱ教室では三人で食べるほうがいいよ。ね、栗島くん!」

 「そうだね。大木も、如月さんも、ありがとう」


 僕が倒れたあの日から、クラスではこの三人でいることが多くなった。

 特に大木といる恩恵は大きく、最近はクラスの男子と会話することが増えている。


 「それにしても、栗島は羨ましいね」

 「へ、なんで?」


 僕は何が羨ましいのか分からず、大木に問い返す。


 「いや、普通入学してすぐ女の子の手作り弁当なんかにありつけないから……」

 「ああ、それは……うん。全面的に如月さんのお陰だけど」


 それにしても、今日もお弁当が美味い。

 特にこの卵焼きは正直毎日食べたいくらいだ。

 いや、実際ほぼ毎日食べてるんだけど……。


 ありがとうございます。


 正面の如月さんへ視線を向けると、照れた顔で箸をいつもより速く動かしていた。


 「そういえばさ、サッカー部で試合した後に、ぼく達栗島をサッカー部に誘ったでしょ?」

 「え、そうなの!?」


 僕達二人には既知の事実だったが、あのとき遠くにいた如月さんは聞こえていなかったようで、いきなりのことに泡を食っていた。


 「あ、うん。でも、ちゃんと断ったよ。もうコンサル部の一員だしね」

 「そ、そっか。なんか嬉しいような、もったいないような……」


 どう反応すれば良いか分からないと、さっきまで照れていた如月さんの表情も複雑なものに変わる。


 「誘っておいて何だけどさ、やっぱり入らなくて正解だったかもね」

 「え、なんで?」

 「だって試合にいきなり女の人二人連れてやってくるんだもん。次会ったら覚えておけとか、打倒栗島とか、皆燃えているよ」

 「打倒も何も、末永さんも如月さんも同じ部員だぞ」

 「そうは言っても、皆凄く仲良さそうだったじゃないか。サッカー部ではハーレム男ってちょっとした有名人だよ」

 「そっか。それは断って正解だったな……」


 再び対面の如月さんと見ると、複雑な表情から、少し怒ったような顔をしている。

 この前の末永さんとの喧嘩を思い出したのかもしれない。


 「そんなわけで、栗島もコンサル部で頑張ってよ。ぼくも頑張るからさ……ごちそうさま」

 「そうだね……ごちそうさま、如月さん」

 「いえいえ、お粗末さま」


 僕達は同じタイミングでお弁当を食べきった。

 如月さんも後もうすぐというところ。


 「よし! 栗島。お昼食べ終わったし、一緒にサッカーしに行こうよ」


 勢い良く立ち上がる大木から、僕は久々に誘いを受けた。

 思えば、コンサル部に入った日以来かもしれない。


 「今度はパスさせないぞ」


 いつもお昼は如月さんといることが多い僕は、なんとなく彼女の方を振り向く。


 すると、


 「行っておいでよ」


 完食した如月さんが、朗らかに笑いながら頷いて僕を後押ししてくれた。

 その顔で決断した僕は謝罪と感謝、二つの意味で手を合わせ机を元の位置に戻す。


 「行くよ栗島! 早くしないとグラウンド取られちゃうんだから!」


 皆いつの間に食べ終わっていたのか。

 大木だけじゃなく、他のクラスメイトが既に教室の扉の前に立っている。


 「分かってるよ、今行く! 如月さん、じゃあ僕、行ってくるね」

 「うん。行ってらしゃい」


 如月さんに手を振られながら、僕は大木を追いかけて教室の外へ飛び出す。


 ま、もうあの日、サッカーは一回やっちゃったしな。

 勝手にサッカーは引退だって決めていた自分が恥ずかしいや。

 部活じゃなくても、サッカーなんていくらでも出来るじゃないか。


 だって、友達が誘ってくれるんだから。


 第一部 完

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