• 学園イノベーション

  • 第一部 栗島新(くりしま あらた)の革新
  • 第五章 これからも三人で過ごす明日
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第五章 これからも三人で過ごす明日

第34話 末永さんによる追試対策講座

 カリカリカリ……。


 僕は日曜の昼間から、ファミレスで黙々とペンを動かしていた。

 机の上にはこの前解いた中間テストの問題(数学Ⅰ)が広がっている。

 その横にはコーラだ。


 「あの……」

 「何かしら?」


 僕は同じテーブルの、対面に座っている人に質問をぶつける。


 「僕はなぜここにいるのでしょうか?」

 「あら、自分で理由が分からないの?」


 末永さんは僕の質問に質問で返す。

 今日は休日ということもあってお互いに私服だ。

 末永さんは襟付きの白ブラウスに黒のカーデを肩にかけ、下はデニムのスキニー。

 僕は前回サッカーを見に行ったときと同じ服装。


 「分かると言えば分かるんですが、分からないと言えば分からないような……」

 「ハッキリしないわね。いいから早くその問題を解いて」

 「わ、分かりました」


 言われるがまま、ひたすら問題を解く。


 「……これが物語なら、サッカー部の課題を解決して、今頃大団円を迎えているところなんですが」

 「残念ながらここは現実。サッカー部もいいけれど、まずは自分の課題を解決しましょうね」

 「そ、そうですよね……」


 僕が集中を切らしている様子を見て、末永さんは嘆息しながら会話を続ける。


 「全く……まさか赤点を取るとは思わなかったわ。こんなことならサッカー部の件も諦めさせておけば良かったかしら」

 「そ、そんなことは! あの提案も結局サッカー部の方に採用して貰えましたし、僕は一切後悔していません!」

 「ええ、そうね。でもそういうことはテストでまともな点数を取ってから言ってね、栗島君」

 「ごもっともです……」


 なぜ日曜にも関わらず、末永さんに小言を言われながら勉強をしているか。

 それは僕が今回の中間テストで赤点を取ったからだ。

 ちなみに赤点を取った科目は数Ⅰのみ。

 他はなんとか赤点を回避した。


 えっへん。


 なんて末永さんの前で言ったら愛想を尽かされそうなのでさすがに口を閉ざす。


 「あの……僕が今勉強をしなければならない理由は分かるのですが、一体なぜファミレスで、しかも末永さんと……あ、いや! 末永さんに教えて頂けるのは大変ありがたいのですが」

 「……そうねぇ、理由は三つあるわ」

 「三つですか」


 こういうときでも要点から話そうとするあたり、さすがはコンサル部の部長だ。


 「ええ。まずは栗島君の赤点をなんとかしないと今後の部活動に影響がでること」

 「た、大変ご迷惑お掛けしております……」

 「ふふ、良いのよ。そしてもう一つは――栗島君、今回サッカー部から報酬貰わなかったでしょ?」

 「は、はい。僕は紺学園の皆さんとサッカー出来ましたし、それで結構満足だったりして……」

 「駄目よそんなのじゃ、あれは部活動の一環じゃない」


 僕の本心から思っている言葉も、末永さんはあっさりと遮る。


 「本来であれば私と麻優にもメリットがあるような報酬が良いのだけれど、生憎あいにく一度失敗しているものね。なかなか追加請求は難しいから、せめて今回頑張った栗島君だけには報酬を……と思って、優しいお姉さんがこうしてファミレスでお昼をご馳走してあげてるんじゃない」

 「え、じゃあさっきのランチも、末永さんの奢りなんですか?」

 「そうよ、言ってなかったかしら?」

 「き、聞いてませんよ! 勉強教えてもらっておいて、お昼までご馳走になるなんて!」

 「良いじゃない。報酬なんだし、有り難く受け取っておきなさい」

 「そうは言っても……」

 「しつこい男は嫌われるわよ。ここは私の言うことを聞いておくこと」

 「は、はぁ……ありがとうございます」

 「どういたしまして」

 「あの、それで最後の一つは?」



 「……デートよ」


 「へ?」


 僕は聞き慣れない単語が聞こえた気がして、顔が赤い末永さんに再度聞き直す。


 「だからデートよ。栗島君、この前麻優とはデートしたのに、私とはしないなんて不公平じゃない」

 「ふ、不公平だなんてそんな! しかも、僕がいつ如月さんとデートしたっていうんですか!」

 「あら、この間二人でサッカーを見に行ったんでしょ?」

 「あれは部活動であって! 僕も如月さんも決してそんなつもりじゃ!」


 末永さんはもう一度嘆息する。

 今度はより深く。


 「気にしないでさっさと問題を解く。終わったら私の買い物に付き合ってもらうんだから」


 勉強を教えてもらってその上お昼まで奢ってもらっているのだから、荷物持ちの一つや二つ任されるのはやぶさかじゃない。

 それに末永さんみたいな可愛い人とデート出来るなんて。

 男なら断れるわけないじゃないか。


 「はい、頑張ります!」


 僕は末永さんの厚意に甘えると共に、この後の予定についても強く返事を返した。


 「いい返事ね」


 それにしても、如月さんとこの前出かけたのもデートのうちに入るのかな。

 彼女は一言もそんなこと言ってなかったし調子に乗っても良いことがなさそうだ。

 うん、あれはきっと如月さんのなかでもノーカウントに違いない。

 そう結論づけ、僕は目の前の問題へ視線を戻して勉強を再開する。


 幸い追試は、例年テストで出た問題とほぼ同じ内容が出題されるらしい。

 そのため僕はこの前の中間テストで間違えたところだけに焦点を当て、後の予定に差し支えないように必死で勉強を進めた。

 そして小一時間程経過し、末永さんに答案を見せると、


 「――これなら、追試も大丈夫そうね」


 満足行く結果となったようで、僕に向かって柔らかい笑みを浮かべてくれた。


 「ほんとですか!」

 「ええ。お疲れ様。今日はよく頑張ったわね」

 「いえ、末永さんもお付き合い頂いて、ありがとうございます!」

 「どういたしまして。それよりも、終わったのなら早速行きましょう。今日は沢山見たいところがあるんだから」

 「はい!」


 勉強が終わった清々しい気分と共に、僕達は意気揚々とファミレスを後にした。

 末永さんにお昼を奢ってもらったのは、ちょっと格好がつかないけど。

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