第二章 学食の課題、解決します

第5話 早速行こう、初プロジェクト


 僕がコンサルタント部、略してコンサル部に入部してから次の日。

 さっそく東棟の四階、第三視聴覚室に足を運んでいた。


 どうでもいいけど、第三ってことは第一と第二があるんだろうか。

 確かオリエンテーションで説明を受けた視聴覚室には番号なんてついていなかったはずだし……。

 ということは最初の店舗に三号店とか付けちゃうアレかな、居酒屋みたいな。


 「やっぱ帰ろうかな……」


 足が重い。昨日あんなことがあったからだ。

 母親以外の女性の下着を見たのも初めてなら、自分を撮影されたのもまた初めて。

 何なら盗撮で訴えたいくらいだ。そしたら負けるのは僕だろうけど。


 瞼が重い、頭のなかで何度もあの光景が蘇る。

 お陰で昨晩はよく眠れなかった。


 重たい足を引きずり、瞼をこすりながら階段を登る。

 四階まで来たら左折、目的の教室はすぐ目の前。


 でも、扉を開けるのを躊躇ってしまう。


 僕はこれから、この部活でやっていけるのだろうか。

 勢いで入ったはいいが、実際これから何をやるのかもあまり分からないし、役に立てそうな自信もない。


 「何してるの? 早く入ったら?」


 唐突に後ろから声をかけられて振り返ると、末永さんの姿があった。

 髪をかき上げるその佇まいは僕の悩みなんかどこ吹く風。

 入部はもう決定事項だと言わんばかりに入室を促す。


 「末永さん、こんにちは」

 「ごきげんよう、栗島君。逃げずによく来たわね」

 「は、はい! せっかく入部したので、その、頑張ろうかと」


 つい口からでまかせを言ってしまった。

 実際は僕を睨みつける末永さんの瞳に慄いてしまったからなのだが。


 「ふふ、殊勝な考えね。素晴らしいわ」

 「ありがとうございます――その、昨日はすみませんでした」

 「事故だもの、気にしないで。悪いのは麻優だし。それよりも今日からよろしくね」

 「はい、よ、よろしくお願いします」


 狼狽える僕を横目に、末永さんは颯爽と第三視聴覚室のドアを開く。

 既に鍵は開けられ、教室の中には赤いポニーテールをぴょこぴょこと動かす姿。


 「牡丹さん、お疲れ様です! それに栗島くんも、来てくれたんだね!」

 「ああ、如月さんもお疲れ様」


 末永さんとは正反対の愛くるしい笑顔を覗かせる如月さんに、つい勘違いしてしまいそうになる。


 この人こそ真の閻魔だ……。

 君子危うきに近寄らず。


 「さて、揃ったところで今日の活動を始めましょう」

 「はーい!」

 「栗島君も、入部して初めてのプロジェクトになるだろうから、頑張ってね」

 「了解です」

 「ふふ、期待してるわ」


 ちょっと怖いのはあるけど、ひょっとすると末永さんはいい人なのかもしれない。


 「それで、僕は何をすればいいんでしょうか」

 「そうね、当面は麻優が主導で動いているプロジェクトに入ってもらうわ。麻優、説明お願いできる?」

 「はい! 頑張ろうね、栗島くん!」

 「ああ、よろしく……」


 君子危うきに近寄らず作戦は一分で失敗した。


 「むー。なんか不満って感じ。牡丹さんと一緒のほうが良かった?」

 「い、いや。そんなことないよ」

 「怪しいなぁ。栗島くんってアレだよね。ムッツリスケベだよね」

 「なっ、何デタラメ言ってるんだ!」


 「麻優」


 末永さんが目配せをして、如月さんを制する。

 その視線はどこか温情が向けられているようで、僕がムッツリスケベだということは否定しないらしい。

 まぁパンツを見られたんだから末永さんに言われる分にはしかと受け止めよう。


 (でも、如月さんに言われるのは癪だ……)


 「これからは二人で行動することが多いのだから、仲良くやらないと駄目よ」

 「はーい!」


 如月さんと上手くやっていけるのだろうか。もう不安しかない。


 「……それで、如月さん。今はどんなプロジェクトをやっているの?」

 「んーとね。学食!」

 「学食?」

 「そそ。昨日、学食の課題も解決するって話したでしょ? 今のあたしのクライアントは学食のおばちゃんなんだよ」

 「へぇ。具体的には何を?」

 「ま、それは実際行ってから説明するよ。早速行こう!」

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