第44話 北朝鮮崩壊
5月15日、14時39分41秒。これが、白水と金玉男が算出した、狸穴が人間兵器に切り替わる時限装置の発火時刻である。
2人とも、別々の所でその時、PCのモニターを見つめていた。
狸穴に内蔵された、各種センサーが連動してPCモニターで観測できる。
チャットにて、白水は金玉男宛に、「
PCで観測されるデータは全て、狸穴が人間兵器に変わった事を示していた。
北朝鮮に行った時に仕掛けておいた、WEB連動型のカメラを見る。
派手に始まっていた。
仮説どおりに、狸穴の体は巨大化し、動くものに対して手当たり次第、目から怪光線を細かくうち飛ばしていた。
一発で、車数台が同時に破壊されるぐらいの火力と破壊力を持っている。
陸から空から、狸穴に向かって、見境ない砲撃が始まっていたが、嬉しくなるほど効いていない。狸穴と言えば、丁寧に飛行機を正確に、1機1機撃ち落としている。
なにやら、トレーラーのようなもので巨大な砲台が準備されていた。相当威力がありそうなものだが、狸穴は気づいているようだ。
黙って力を貯めだした。そして体がどんどん膨らんでいっているようだ。顔の向きは完全に、トレーラーに標準を合わせている。
パカッと口が空いたと思うと、目からの光線とは桁違いな太いレーザー光線のようなものを吐き出した。トレーラーを射抜き、大爆発を起こした。
クレーターが空くぐらい、周りをすべて巻き込んで爆発した。
「これは、想定通りの力だが、現実を目の前にすると、やはりサップボブ教授の顔がよぎるね。玉男君」
思わず、白水は玉男にチャットした。
「ええ、ただ、それ以上に私は感動しています。人間の可能性に。これが全て殺戮に使われている事は確かに残念ですが、いつかはこの兵器が人類の役に立つ力に変わらないとは限りませんよ。」玉男は興奮しながらチャットしていた。
「そうだな。科学者の大事な使命は、開拓する事だからな。その道なる力をどう活用するかは、人類全体で考えればいいんだ」一応、白水は相槌的な反応を返した。
「まあ、こんなものだろう。そろそろ、スイッチを切り給え。玉男くん」
「はい。私もそうおもっておりました。任務終了させます」
玉男は、自分しか分からない作りこまれたパスワードシステムのいくつかのロックを解除し、狸穴の脳に直接アクセスできるプログラムから、任務終了を打ち込んだ。
「よし、今度も仮説どおりに、体がしぼんでいったな。上出来だ。もう二度と使いたくは無いがね。狸穴は、北朝鮮から当分出さないでうまく管理しておいてください。それでは、君はそのまま焼け野原の中、国家再建の感動的演説をすべく、よろしく頼むよ」
「わかっていますよ。」
金正男PCを閉じた。
今後の自分の運命を考えると、気が重くなる。
来週には、世界中のメディアの一面に、自分の顔が映し出されるだろう。
タイトルも想像がつく。
「救いの神か?新たな独裁者か?」
「ディズニーランドで捕まった金玉男が帰ってきた!」
「北朝鮮のラストエンペラー登場」
こんな感じで、面白おかしく担がれるのだろう。
思えば、北朝鮮を追われるように逃げ出して、息子と2人でよく語り合ったものだ。
「いつか、お父さんが、北朝鮮に戻って、国民の幸せを追求する国を作るからな」
そんな事、欠片も思っていなかったが、何となく息子にはそういう事を言わないといけないような気がして、いつも言っていたっけな。
その息子は、自分の偽善者ぶりを真に受けて、欧米の教育を貪欲に吸収し、自分以上に頭のいい青年に育ってしまった。
「
1人つぶやき、平壌国際空港を後にし、市内にタクシーで向かった。
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