第37話 初陣
「執権次郎様!そろそろ四国をまとめに入ってもいい時期が来たようです!」
朝起きると、目の前には孔雪梅がパジャマ姿で興奮しながら部屋に入ってきた。普段は、いくら次郎に言いたい事があってもこうはならない所を見ると、今までの経験からか、ちょっと身構えてしまう。
「どうしたの?急に。何かあった?」
「機はまだ熟したとは言えないですが避けては通れません。高知県の新知事、白水博士の事はご存じですか?」
「ああ、なんやかんや言って、俺も村長をやってるからな。名前ぐらいは知ってるよ」
「白水博士を前にして、緊急声明を発表するのです!テレビで四国中にアナウンスを一発かましてスタートです。さ、白水博士のほうが準備ができているようですから、これからヘリで高知市に飛びますよ」
岬を見ると、ヘリが確かにタイミングよくやってきて、着陸した。
「さ、長宗我部様、ついに出番がやってきました。いざ鎌倉ですよ。クローゼットに
「なになに、梅ちゃん。
「これ着るの?梅ちゃん」
「作用でございまする!人は見た目が9割!
クローゼットの中には、シルクハットと芸の細かいレースが編み込まれた白いシャツ、モーニングスーツが準備されていた。それに、白髪の長いアゴヒゲとド派手な指輪も用意されている。
長宗我部さんは、年齢の割には頭髪は黒く、ふさふさしていたのだが、つい一週間前、いつものように、孔雪梅に髪の毛を切ってもらっていたら、寝てしまい、起きたら銀髪に染められて、前髪から頭頂部まで、どういう処理をしたのか、脱毛されてしまっていた。
それに、このヒゲをつけたら、確かに仙人的な貫禄にはなる。
だが、それにこのシルクハットとモーニングスーツでは、一歩間違えると、昭和のコメディアンじゃないかと思ったが、長宗我部さんは分際をわきまえている為、何も言わずに着替えると、意外とよく似合う。スーツの質の高さで、長宗我部さんの貧相さが消され、怪しげな魅力が増した。指にハマったド派手な指輪も妙な貫禄につながっている。明治時代の政治家のような重厚な雰囲気に仕上がった。
「よ!いざ出陣!」
「いざ出陣!って、俺、全然聞いてねーよ。何をやるつもりだ?」次郎がヘリの騒音にかき消されながら叫んだ。
「四国は、元々は代々長宗我部家のものであり、明治政府はおろか、徳川にもその権限は無いのでござります!由緒正しき長宗我部家の末裔が見つかりました。坂本龍馬も先祖をたどれば長宗我部家の家臣です!今こそ県を解体し、四国を長宗我部様にお返しする時です!長宗我部家の権威の元に、新しい国として国際社会に打って出るのです!・・・・こんな感じに次郎様にはテレビで熱演していただきます!」
孔雪梅は、テンション高めで、しゃべりまくりながらテキパキと髪を
三人はヘリに乗り、高知市郊外にある
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