第75話 山田太郎殺人事件 28

 あの火事の中の事件の三つ。

 それが繋がった。

 あの事件は、全てロクジョウが関わっていたのだ。

 ロクジョウが話したからかもしれないが、ゴミが一番、あくどいことをしているように思える。ただ、これはロクジョウ視点の話だからだろう。

 ロクジョウは滔々と語りを続ける。


「金品は半分、ゴミに奪われました。

 そこから、彼とは連絡も取っていません。

 その後、私は顔を変え、名前を変え、ひっそりと暮らしていました。

 ですがある日、突然ですが、私の元へ一通の手紙が来ました。


『お前が過去に犯した罪を知っている。

 ばらされたくなければ、このモニターに参加することだ』


 だから私はこのモニターに来たのです」


 恐らくは他の四人も同じなのだろう。

 そうなると幾つか疑問が湧く。


「ねえねえ、ロクジョウさん。二つ質問したいんだどさ」


 そう声を上げたのはミワだった。

 ロクジョウは諦観の表情で


「私に答えられることは隠さずに答えますよ」


「一つ。さっきの犯罪にニイさんって何か関わっていたの?」


「いえ……それは分かりません。もしかすると、最初に金庫を開けたのが彼なのかもしれません。無理矢理関係があったと言う場合は」


 その可能性はある。

 犯人がどういうルートかは分からないがその情報を入手し、ニイの首を括ったのかもしれない。


「んじゃ、もう一つ」


 ミワが人差し指を立てる。


「あの事件の中の三つに関わっているのは分かったけどさ、四つ目の――『そこにいるべきではない少女の死体が見つかった』っていうのには何か関わっているの?」



 分からない、ではなく、はっきりとした否定形。

 ロクジョウは間違いなく口にした。


「その四つ目については事件後に警察にも聞かれましたが、全く覚えがありません。……もし首を吊られた女性か、もしくは使用人の女性がそうだったら関わっていると言えるのですが、当時尋ねられた時の口ぶりから、違うと思っています」

「その通りだ」


 老警部が頷く。


「火事での被害者の中にその少女がいたんだ。首を斬られた少女と吊るされた女性とは別に」

「ちなみに、その四つ目の少女って凶悪犯罪者だったって聞いたけど、何やったの?」


「『犯罪教唆はんざいきょうさ』だ」


 ミワの問いに老警部が答える。


「その少女は犯罪を立案しては第三者に実行させていたんだよ。とてつもない量の犯罪をね」

「じゃあ、その少女の計画をサポートしていたのが」

「『現実館』の持ち主だった可能性が高いと見ているが、今は闇の中だな」


 老警部が首を横に振る。



 ――ここまでで分かった。

 動機は、『現実館事件』の後の別事件で罪を犯した人間。

 犯人はそれを許せない人間。



「そうなるとあれだね」


 ミワが他の人の気持ちを代弁するように、とある推定を口にする。




「犯人は――

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