第44話 お腹減った事件 13

 段数は三段ある。

 ならば一段一段はおおよそ三〇センチ強だ。

 それならば私も登れるのではないか。

「……」

 物は試しだ。

 やってみよう。

 ここで三度目の忠告だ。

 危ないから、よい赤ちゃんのみんなは真似しちゃだめだぞ。

 〇歳児の私との約束だ。

 よし。

 よく分からないルーチンを口にし、私は実行に移すべく一番下の引き出しを開く。

 調理道具が入っている。

 ……このままでは進めないな。調理器具の角とかで痛い。引き出し自体も痛い。

 しかし、私はここまでは推定通りだ。

 その対策も考慮している。

 幸いだ。

 本当に幸いだ。

 良かった。


 別の策で布団などを持ってきておいて。


 早速私は一番下の棚を外れないように余裕を持って引き出し、布団を詰める。

 そこに入る。

 ふかふかだ。

 続いて次の段を引き出す。

 勿論、毛布を纏った状態でだ。

 引き出した後、纏った毛布を脱ぎ捨て、二段目に詰める。

 これで二段目も安全だ。

 手と体力を存分に使って、転がり込むようにして二段目の棚に入り込む。

 と、ここまでで六〇センチ強。実際には一番下の段が一番大きいので、それよりは高いだろう。

 残るはあと一段。

 だが、もう布類はない。

 どうする?

 もう登れる距離ではないか?

 それとも安全策のために一度ベビーベッド周辺まで戻って布類を持ってくるか?


 ……いっちゃえ。


 私は二段目から直接登る様に、台所に手を掛けた。

 いけそうだ。

 よし。

 手に力を込め、引き出しの淵に足を掛ける。

 そして、一気に登るべく、足に力を入れた――




 ――

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