第40話 お腹減った事件 09

 私の身長では立ったとしても、哺乳瓶には手が届かないだろう。

 しかし、哺乳瓶は淵に見えているのだ。

 どうにしかして手に入らないだろうか。

 哺乳瓶がこちらに倒れてくれれば――


 ――そうだ。


 私は一度後ろを向いて、台所から距離を取る。

 野蛮な手だが、これが有効なのではないか。

 私は決めた。

 自分の身体を使って、ミルクを取ることを。



 だ。



 台所に体当たりをして、振動でミルクを落とす。

 そうすれば手が届かない高さにあるミルクも、手の届く所にやってくる。

 さすがに頭からぶつかるわけにいかないので、直前で体をひねって肩でぶつかるけれども。


 よし、やろう。


 時は一刻を争う。

 私のお腹が限界に近づいてきている。

 思考もだんだん浅くなってきている。

 早くしないと。

 当たる場所は、引き出しの取っ手から少し外れた場所にしよう。ミルクの真下だが、あそこは当たるには危ない。

 ぐっ、と足に力を入れる。

 白い液体の入った哺乳瓶を見つめる。

 あれを落とすんだ。

 決意を固め、いよいよ突撃――



 ――

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