7th distance.ウォーゲーム

176G.ボディーリアクター ホットスタート

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 センチネル艦隊旗艦『サーヴィランス』、クレイモア級は全長10キロに及ぶ他に類を見ない超大型宇宙戦闘艦である。

 搭載レーザー砲748門、近接防御火器、戦術兵器多数。

 ヒト型機動兵器、小型戦闘艇、それらの搭載、運用能力は無論のこと、着艦デッキに収まるなら宇宙船の母港としても機能する。

 艦隊旗艦として司令部能力も備え、定数3万人、最大30万人が搭乗可能となっていた。


 そんな巨大戦闘艦の内部に最近新設されたのが、銭湯スパである。


 言うまでもなく、戦闘とは関わる人間に多大なストレスをかける行為であり、それ故に戦闘艦内のストレス対策、すなわち居住性を高めるという事は割とシャレにならない重要課題であった。

 過去には、艦内環境や乗員のストレス対策など戦闘能力には直接影響しない、として視野の狭い指揮官には二の次にされる事も多かったが、乗員の士気に関わればどうしたって生存率や勝率にも影響する為、今となっては兵装と同じレベルで重要視される部分である。


 ジオーネ星系グループの軌道上プラットホーム内に隠されていた巨大戦闘艦サーヴィランスは、回収された後に全面改修を受けていた。

 とはいえ、基礎構造部分はR.M.M製である為に自己修復、自己メンテナンス済み。

 改修は居住環境と増設される操作系統、電送系統、通信システム、予備動力系統、生産施設、生命維持などが主となる。


 銭湯も、そのひとつ。

 艦体後部、中央通路から並行に走る側面通路側に、暖簾のかかる入口があった。


「公衆、浴場……ですか。ハイソサエティーズが社交などに用いると聞きますが、艦艇内に設置するという話は聞いたことがありませんでした」


 と言いながら、湯煙の中にそびえ立つのは単眼モノアイ種の巨大マッチョ、元テンペスタ国親衛隊総長のフランシス・キューミロウ・サンダーランドである。

 ゴツい手で湯をすくって肩にかけると、剥き出しの僧帽筋が水を弾いてムキムキと伸縮していた。


「司令の故郷では一般的な文化らしい。入浴はひとりでするものだと思っていたが、なるほどこうしてコミュニケーションを取るには良い場かもしれない」


 湯船に座り穏やかに目を伏せているのは、顔に大きな傷を刻む艦隊管理者フリートマネージャーのジャック・フロストだ。元王子様なので風呂自体には理解がある。

 普段から服の上からでもガッシリとした体格を見て取る事が出来たが、全裸になると引き締まった筋肉が凄まじい密度でキレているのが分かった。

 それでいて、どこか品性も兼ね備えた肉体美である。


「ういー……イイねぇこうやって湯に入るってのもぉ。ウチにも小型の浴槽を入れるかなぁ」


「これでエマー1前ならアルポーションも飲めるってんだから悪くねぇ、悪くねぇ……」


 湯船の縁に背を預けてくつろいでいるのは、元プラットホームの港湾労働組合長デイブ・ザーバーと、機動部隊長のブラッド・ブレイズだ。

 グラサンハゲの組合長は腹の肉が湯の中で揺れているが、三角筋上腕二頭筋大腿四頭筋はムキムキしていた。たくましい労働者の肉体である。

 黒髪剛毛の隊長は筋肉量が凄まじく、大胸筋僧帽筋広背筋がハチ切れんばかりに盛り上がっていた。野生的、暴力的な気配に満ちた身体付きだ。


 旗艦サーヴィランス居住区画内、銭湯スパ『裸王』。

 比較的優先して整備されたこの施設だが、その力の入れようとは裏腹に、艦内ではいまいち存在を認知されていなかったりする。

 これは、「艦内には当然必要でしょ?」という赤毛の艦隊司令が、この時代の一般的な人間の認識を忘れていた為だ。

 普通の宇宙船乗りは身体を洗うのもスチームバスで済ませるのが常識、とすぐに思い出しそうなモノだが、大忙しの中で必要な施設を聞かれた際に、21世紀の艦艇の内容をそのまま伝えてしまったのである。


 そんなワケで、メイン通路の裏手に作ったはいいが、放置され気味な施設。

 それを、まず傷面のフリートマネージャーが気を使って利用しに来て、新人の単眼の巨漢が付き合いで同行し、居住区の賑わいを見に来た剛毛揉み上げ隊長とたまたま出くわし、散歩がてら艦内を見て回っていたグラサンハゲのおっさんもこれに加わった、という流れである。


 してこの時代では物珍しい裸の付き合いを経験してみると、思いのほか抵抗なくゆったり過ごす事が出来た。

 艦隊幹部4人のナイスガイ以外にも、少数だがポツポツと利用者の姿が見られる。

 艦隊の男は兵士であり、基本的に鍛えられた身体のタフガイだ。

 隆起するハムストリングス、分厚い装甲のような腹直筋のシックスパックがVLS、鋭く切れ上がる外腹斜筋、心同様たるみなど全く見られない大臀筋、いずれも劣らぬセクシーマッスル。

 グッドルッキングガイが酷使する筋肉を休める場として、大浴場は求められた通りの働きをしていた。


 こうしてこの銭湯文化は、遅ればせながら徐々に艦隊全体へ広がる事となり、銭湯『裸王』もまた過酷な状況下で漢たちを癒す名所となるのである。



 そして当然の話ではあるが、男湯の隣には女湯があった。



「ふわー……贅沢! 流石軍用船、水回りの施設が強いんですねぇ。

 どこと繋がっているか分からなくて結局小型の浄水システムを移動のたびに使い回すことになったオンボロプラットホームとは大違い……」


 長い黒髪をタオルで纏め上げ、メガネ型情報端末インフォギアを曇らせていたのは、まだ少女とも言える真面目そうな女性。

 ジオーネ星系プラットホームの労働者組合にて、マネージャーをやっていた『キャス』ことキャサリン・ザーバーだ。

 男湯でひとっ風呂浴びているハゲオヤジの娘である。


「宇宙船のインフラで、どうしても落ち着かない部分ですよね、水の経路は……。常に調整して時々の状態を甘受するしかないというか」


 それに、キャスの斜め向かいで湯船に脚を伸ばしているのは、すこぶる付きな赤毛の美少女。

 艦隊司令のユーリ・ダーククラウド。

 世を忍ぶ仮の姿のお嬢様、村雨ユリ。

 21世紀出身の元女子高生、村瀬唯理むらせゆいりだった。

 極めて高性能な宇宙船ばかりに乗っているようだが、中古改造輸送船や運び屋のオンボロ宇宙船、年代物の娼船などにも乗船したので、生活インフラの苦労はそれなりに経験している。


 自分で指示しておいてコロッと忘れていた大浴場の存在を赤毛の司令が思い出したのは、つい先日の事。

 たまたまその時一緒に仕事中だったキャサリンの前でそんな事をこぼしたならば、大きなお風呂に興味がある、というので一緒に入浴しに来たというワケだ。


 なおこちらも、偶然にも同行者多数。


「へー、なんか……すごく……広々した、感じ?」


「解放感、ってこと、かな?」


「そうなの? かいほうーかん! 外でお風呂入っているみたいできもちーねー!」


「そうかなぁ……? なんか無防備な感じがして心細くならない??」


 跳ね髪の天才娘、ナイトメアは仰向けで湯に浮いている。なかなかのサイズのおっぱいも上を向いて浮いている。

 見上げる空は青く、雲は高い。秋の空模様。

 なれどそれは、浴場の壁や天井のディスプレイに表示された景色であった。


 風景は随時変更可能で、今は惑星上の高山地帯が映し出されている。

 現実と見紛みまごう高精彩映像で露天風呂そのものなよそおいだったが、スレンダーな体形スタイルのインドア派、クラウディアは湯船の中で心細そうに縮こまっていた。上品かつ控え目なおっぱいも腕で圧し潰されていた。


「これ……木? 植物を構造材にしているんですか??」


「おー! 皇国の尊位の方々……は自然の植物材を自宅によく使うんですが、お風呂にですかぁ」


 髪が荒れ気味な単眼娘、アルマはディスプレイに映る景色より、浴槽の材料の方に注意が向いている。

 なにせ、木材。学園の石材で出来た浴場とまた違うので、興味津々の様子だ。

 広々とした四角い湯船は、白に近い色合いで木目模様の浮いた部材で作られていた。

 これも赤毛の思い付きを実現させるべく、どこぞから水に強い木を調達して作られたという事だ。流石にひのきとはいかなかった模様。


 唯理としては、「そんなこと言ったっけ?」と首を傾げる話だったとか。


 何にしても、木材の希少性に、そもそも複数人が同時に用いる公衆大浴場という物が稀、という事もあり、何もかもが珍しい浴槽となっていた。

 皇国出身の猫目のおかっぱ娘、ランコは経験的に多少理解できる部分があるようだが。


「キャスさん、艦内デッキの方はいかがですか? 他の船の積み下ろしの面倒まで見てもらって、かなり忙しいでしょう? わたしがやらせてるんですけど」


「ええまぁ……。いえお仕事の量はスゴイんですけど、ドヴェルグワークスの方の手助けがあるので。ただ設備が整い過ぎていて、作業員が追い付かないところがありますね。

 慣れてきてはいるので、もう少し手際も良くなっていくとは思うのですが」


 珍しいお風呂に夢中なお嬢様たちの一方で、管理職エグゼクティブ組の唯理とキャスは仕事上の雑談中。

 ここ最近は船舶間での物のやり取りが凄まじいことになっており、元港湾労働組合が大活躍している。

 キングダム船団でも同様の作業員はいたが、労働者組合は組織力とノウハウがひと味もふた味も違っていた。

 

「プラットホームが無くなった経緯はアレでしたが……労働組合がいてくれて幸運でした。

 でなければ今頃艦隊は物流だけで麻痺してたんじゃないかな」


 物資の積み下ろしだけで宇宙船は身動きが取れなくなり、船と船の間の真空中を無数の作業員が動き回り、負傷や事故が頻発し、艦隊司令が寿命を縮める。

 そんな地獄絵図が目に浮かぶようで、赤毛はぐったりと湯船の縁に背をもたれていた。


 必然的に、たわわな92センチもあらわなまま突き出される格好となり、プカプカと湯に浮かぶそれに、キャサリンは乾いた目を向けていた。 

 ちょっと自分のサイズに物足りなさを覚えているお姉さんである。

 また胸だけではなく、揺らめく水面の下に見えるカラダは引き締まりながらも肉感的な起伏に富んでおり、こんなの男はもちろん女同士だってたまらんだろうと。


 などと思いながら見ていたならば、背泳ぎ状態の外跳ね少女が、頭からその巨乳に突っ込んでいた。


「お? おお?? おースゴイやわらかーい!!」


 いったい何に当たったのか。

 手を頭の上に伸ばし無遠慮に触ってみると、手の平に吸い付くようで押せばポインポインと心地良く押し返す弾力が。

 次いで揉んでみると、指が沈み込みながらも優しく受け入れられる柔らかさ。

 他では味わえない魅惑の感触に、即虜になるナイトメアである。


「ユリさん……おっぱいの谷間に顔沈めていいですか」


「何言ってんのメア? お湯に入り過ぎて脳が熱暴走したの??」


 姿勢を正してまで何を言い出すかと思えば。

 真剣な顔になっているナイトメアの一方、どうしようもないモノを見る顔のクラウディアである。


「だってぶちょーこんなの絶対気持ちイイし!

 ハダカな今しか直接堪能するチャンスないよー!!」


 しかし、ここは退けない、と無駄な闘志を燃やし攻勢を強める天才少女。


「はしたないって言ってんの仮にも聖エヴァンジェイル学園の生徒が。同姓であっても女の子がやる事じゃないでしょうが。

 だいたいメアだって大きい方なんだから自分の触ればいいじゃない」


「自分じゃ顔挟むとかできないよー! それにユリさんのはこう、わたしのとは違って……お、美味しそう?」


「だからやめなさいよ仮にも女子が」


 ワケのわからない表現をする跳ね髪エースに、心底呆れ返って言う騎兵隊の隊長。自分の胸を揉みながら思案するのもやめさせたい。

 とはいえ、この娘が突拍子もなくおかしなことを言い出すのは今に始まった話でもなかった。

 それに肝心な赤毛の巨乳が「顔入れさせて下さい」とか言われて応じるワケもなし、と思い直して、もう放置しとこうと思うクラウディアであったが、


「……わたしは別に構わないけど」


「やったー!」


「は? キレそう」


 まさかのルームメイトの裏切りに、お嬢様を忘れた素を出してしまっていた。

 クラウディアだって本音では興味がないワケではなかったのに。今まで何度、寮の部屋で裸みたいな恰好でウロウロする赤毛のおっぱいを思うさま弄んでみたいと思った事か。

 そんな嫉妬に似たやるせなさで殺し屋のような目になっているクラウディアの心知らず、無邪気にもろ手を挙げて喜ぶナイトメアである。自前のおっぱいもプルルンと無邪気に弾んでいる。


 赤毛とて一応それなりに考えての発言ではあるのだ。

 先の超大型ヒト型機動兵器、フォートレス型の接近の折にナイトメアの様子が少しおかしくなっていてたのを、今も心配していたのである。

 故に、おっぱいくらい良いんじゃないかな? と。

 どうせ他に使い道もないふくらみであるし。


「いいの!? ホントにイイ!? ヘンタイみたいとか思わない……??」


「そう思うんならやめなさい」


「ヘンタイとか思わないから……。だいたいほとんどの人間がおっぱい好きなのは知ってるし」


 自分で言い出しておいて、いざOKとなると怖気づく童貞のような反応の天才少女であった。

 でも本当に赤毛には慣れたものだったりする。どこかの船長のお姉さんとかメガネのエンジニアさんとか娼船のおっとり姉さんとか赤毛っぱい大好きだし。


「わーい!!」

「ぉわッ……」


 唯理が迎え入れるように腕を広げると、ナイトメアは今度こそ満面の笑みで女神の隙間へ遠慮なく飛び込んでいった。

 どっちもクラウディアの言う事なんか聞いちゃいねぇ。殺すぞ。


「むわースゴイー! こう……! こういうのなんて言うの!?」


「さー自分の事はあんまり……」


「フカフカでむっちりしてプリプリだよー!!」


 言葉に出来ない快哉を叫びながらも、全力で顔いっぱいにふたつの膨らみとそのみっちりとした深い谷間を味わう無邪気な少女であった。

 こうも顔を擦り付けられると、自分のカラダのことなんて知らん、という唯理でさえ少し恥ずかしくなり、流石にはにかんでいる。

 相手にスケベ心が無いのが救いか。

 本当に遠慮なく揉みくちゃにされているので、当然ながら刺激も少しアレである。


「ふえぇ……わ、わたしもユリさんのおっぱい、触ってみたいですぅ」


「わたしも実はユリさんのお胸の谷間に全身挟まれてみたいという野望を秘めていました!」


「ドルチェさんの場合は事故ると死にませんか?」


 赤毛が赤くなって耐え、天才娘がむちむちなおっぱいの感触に蕩けているところ、横目で見ていたお嬢様どもまで興味をかれはじめていた。単眼娘をはじめ、皆息が荒い。

 唯理としても、ナイトメアが良くて他の娘がダメ、という事は当然なかった。みんな可愛いウチの子である。身長15センチ程しかないディウォル人の娘は気を付けてほしいが。自分も谷間で潰したりお湯に落とさないように気を付ける。


「ハイハイまぁこんなもんで良かったら好きになさいな……。でも長湯になるとノボせるから、気を付けてくださいね」


「ハーイ!」

「あ、あの、わたしからいっていいですか!?」

「どれくらい重いのか手のひらに乗せてみたい……!」

「零れ落ちませんかねアレほどだと」


 わらわらと湯をかき分けて寄っていく、創作活動部と騎兵隊のお嬢様たち。名残惜しそうなナイトメアから、たまたま近くにいた片長髪ロック娘にポジションチェンジ。

 はしたない、と言った手前加わることのできないスレンダー少女は、指を咥えて見ているしかなかった。なんなら違うもん咥えたいわ。



 などとグギギギ!していたならば、湯の中をユラユラと揺らめきながら接近して来る何かを発見。



 繊細な淡い金色の長髪と、スラリとした背の高い肢体がお湯の中を進んでいる。

 誰が潜っているんだ? とクラウディアがいぶかしんだのも一瞬。

 ザバッ! と飛び出してきた全裸の王子様(♀)が、もはやお馴染みとなった刃物片手に赤毛娘に飛かかっていた。


「ほっ!」

「びゃぁあああ!?」

「うわぁああまた・・エル会長が刃傷沙汰にぃ!!」

「会長ー!」


 突然の凶行に仰天するお嬢様方だが、一方で慣れてきた感もある今日この頃である。

 だいたいいつもエルルーン会長が返り討ちに遭うので。


「ぷあッ!?」


 初撃の腕を取られ空中一回転で湯に放り込まれた王子様だが、即座に復帰し下段からの突き。

 唯理はそれを軽く下へ押しやるように迎え撃つと、カウンター気味にエルルーンの胸元を捉え、ダパァ!と再度湯の中に背中から叩き込んだ。

 技量の差はどうしようもなく決定的。しかし狂気ブラコンの妹王子は諦めない。

 水面ギリギリを斬るように横薙ぎを繰り出すが、紙一重で斬撃をやり過ごした唯理が巨乳同士密着するよう押し付けると、横回転でエルルーンを引き倒していた。


「あばばばば!? エ、エルルーン会長とユリさんが大変な事に……!!」

「戦いとなれば勝つ以外に意識を割いていられませんからね。仕方ないですね」


 一糸まとわぬすっぽんぽんの美少女ふたりが肉付きの良い箇所をブルンブルン激しく揺らしながらぶつけたり押し付けたり投げたり投げられたり大暴れである。打撃を使わない赤毛は柔術のみだ。

 慌てて避難した乙女たちは、そんな刺激的過ぎる乱闘を湯船の端から観戦中。

 真っ赤になって大きな単眼を手で覆いながら覆えてないアルマ、堂々と美少女キャットファイトを楽しむ紫肌のローラン、次の薄い本ネタを決めたマシュマロのプリマなど。

 言うほど危機感はないので、結局半分楽しんでいる。

 慣れていない労働組合長の娘さんは、事態に付いて行けず唖然としていた。


「うっぱぁ!?」

「お?」


 正面の突きの出だしを見切る赤毛は、一瞬で側面に回り王子様の腕を後ろへ捻り、制圧にかかる。

 牙を剥き出し踏ん張るエルルーンだったが、そのせいで綺麗なお尻が隠すモノなく奥の奥まで晒け出されてしまった。直視してしまった女子が何人か鼻血噴く。

 そんな事を気にもしない狂犬いもうと王子は、自ら前に転がる形で拘束から逃れようと試みた。

 そもそもトドメを刺すという選択肢の無い赤毛は、そのまま体重をかけて水中に圧し潰すことに。こっちも前かがみで後ろにお尻を突き出すような姿勢になっていた。

 瑞々しい美少女たちによる肌と肌の触れ合い、と言うには際ど過ぎる。


「だからユリはもうちょっとヒトにどう見られるか気を使いなさい!!」


 などと怒鳴りながらクラウディアも鼻血噴いた。


 命の危機とは違う方面に危な過ぎて、小娘どもは一瞬たりとも目が離せず。

 だが流石に艦隊司令が暗殺されかかっているというのは尋常な事態ではなく、身辺警備が遅ればせながら飛び込んで来た。


「お嬢!? またおひいさまですか! こらエルさまステイ!!」


「止めるなカナン! ここでやらねばならないのだ! 今こいつが死ねば艦隊はお兄さまのモノ! そしてお兄さまはわたしのモノ!!」


「殿下は今副官ムーブ楽しんでいるからどっちも無駄ですよ!!」


 目付きの鋭い痩身のおばちゃん、カナンがお湯の中から鼻水出した自分の国の姫を回収。

 往生際悪く手足をバタバタさせるエルルーンを羽交い絞めにして引き摺って行く。麗しのお姫さま大股開き。

 次いで、浴場に入ってくるメイド兵士集団が手際良くカラダの水気を取り着付けをしていった。プロの仕事である。

 後に残るのは、鼻血出したお嬢様どもと、湯船に沈み込む赤毛の苦労人であった。


「あー常在戦場だー……」


 内に外に戦いが尽きない。

 艦隊編成、連邦軍などとの折衝、そして後に控えるのはメナス自律兵器群との一大決戦だ。

 あまり深く考えず作ってしまった旗艦大浴場『裸王』であるが、のんびりゆったり浸かれるのは、当面先になる模様。

 とりあえずはせめて、艦隊管理者フリートマネージャーの妹さま、という身内の事くらいは忙しくなる前に片づけたいな。アレじゃ無理か。

 お湯に浮かぶ気ままな巨乳も、唯理の心情を代弁するよう溜息と一緒に揺れていた。





【ヒストリカル・アーカイヴ】


・R.M.M(リコンビナント・メルクーリオ・マテリアル)

 分子レベルで自己の組成と性質を変化させるナノテクノロジー素材。

 欠損が無ければある程度の損傷を自己修復することまで可能。

 形状、発色、耐弾性、耐熱性などを戦闘時にリアルタイムで変更することもできる。

 非常に高価だが製造は不可能ではない。


・単眼人(モノアイ)

 地球由来人類プロエリウムに近いが、頭部の中央を大きな単眼が占めている部分が決定的に異なる人類。

 視覚に優れる種族であるが、同時に視覚を奪われるとパニックを起こしやすい視覚への依存傾向が強い種族でもある。

 その為かセンサー技術への研究を単眼人を挙げて取り組んでおり、センサー系サードパーティーで優秀な企業は単眼人のモノが多い。


・ディウォル人

 地球由来人類プロエリウムに近い体型だが、平均身長が15センチ程であるのが決定的に異なる人類。

 見た目通り肉体的には非常に脆弱だが、小ささを活かした閉所作業やメンテナンスにおいては絶大なアドバンテージを持つ。

 小型化マイクロテクノロジー開発でもなくてはならない種族。


・エマー(1~4)

 非常事態において発令される基本的な命令。

 1から4段階に分かれており、発令レベルに応じて組織ないし艦隊の全てが定められた警戒体制を取る。

 発令された時点で非常時となる為、基本的に飲酒などは不可となる。


・アルポーション

 アルコールポーションの略。酒類の接種という文化は復活間もない為、薬液のポーションなどと同一のカテゴリーとされている。

 接種の許される状況や場所はそれなりに厳しく規制されるのだが、薬と言う体で携行する不届き者多数につき所管の医療部が軽くキレている。


・尊位

 三大国ビッグ3の一角、皇国における身分階級のひとつであり最上位。

 皇国では階級差による権利や法律上の優位不利が明確に決められており、尊位では多くの特権が認められている。

 当然ながら経済的にも優遇されており、ほぼ例外なく巨大な資産を保有する。





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