157G.バイトシュレッド マンイーター
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天の川銀河の人類と全文明圏の脅威となる存在、正体不明の自律兵器群、メナス。
それは、圧倒的な物量と、強力な攻撃手段、強固なエネルギーシールドと装甲を持ち、どれほどの弾幕の中へも恐れず突っ込み襲いかかってくる、人類にとって脅威度の高い敵性体だ。
ヒト型機動兵器エイム、または戦闘艦の火器を用いた中長距離からの飽和攻撃を基本戦術とする人類は、この天敵に甚大な被害を被り続けていた。
灰白色に青のエイムが至近距離を駆け抜ける度に、メナス艦載機型が叩き斬られ爆発していたが。
スーパープロミネンスMk53改『イルリヒト』は巨大な爆炎を背負い、右へ左へ蛇行しながら宇宙空間をブッ飛ばす。
その動きは回避運動ではなかったりするが。各ブースター推力の出力調整が出来ていないのだ。
「ええいクソッ……! 暴れるな!!」
悪態を
肩の2連ブースターが爆発し、灰白色に青の機体が弾かれたように急激な軌道偏向。
荷電粒子弾の弾幕を加速力だけで振り切り、回り込み弧を狭める高機動でメナス4機を横一文字に叩き斬った。
「ッ……! ふんッ!!」
ここで、両脚部を前に突き出し、胸部と肩部のリバースブースターも吹かして急制動。
背中から圧し掛かる巨大な荷重に、四肢を踏ん張り赤毛のオペレーターが耐える。
直後、すぐ目の前を押し流す勢いで通過する荷電粒子弾の群れ。
「ぬぅううッ!!」
ギリギリと歯を食い縛りながら逆慣性に耐え抜くと、更に出力を上げ後方宙返りするように飛び退き、続く追撃を回避していた。
「ったくもー
真空中を滑り姿勢を安定させるエイムは、ブースターの出力任せに再加速する。
それに付き従うように、分厚い刀身の剣を思わせる頑強な強襲揚陸艦が、青いレーザーを全方位に乱舞させていた。
◇
その中枢たるサンクチュアリ
騎乗競技会に参加していた聖エヴァンジェイル学園騎乗部は、大会終了直後に緊急事態の報を受けて、急ぎ学園へ戻ることに。
260隻から成る臨時船団の一隻として学園のあるアクエリアス星系に向かうが、そこで約5万という規模のメナス艦隊の襲撃を受けてしまう。
どうにか逃げ切ろうとする臨時船団だったが、全てにおいて勝るメナスを振り切ることも退けるのも難しく、ジリ貧のまま全滅を待つだけかと思われた。
そこに乱入し、メナス群相手に全面攻勢をかける、翼を広げるような超高性能戦闘艦。
銀河各地に眠る100億隻の艦隊、その内の一隻。
強襲揚陸艦『アルケドアティス』770メートルは、
◇
天の川銀河、ノーマ・
カジュアロウ
ゴン! ゴン! ゴン! と屈折するレーザーが立て続けに斉射され、メナス艦隊の隊列を正面から滅多切りにしていた。
青い光線が空間を薙ぎ払った直後、溶断面から緑の爆炎を噴出す異形の船。
機能停止したメナス戦艦型は、迷走した末に他の個体にぶつかり大爆発を起こし、一帯を巻き込んでいる。
その爆光を背に受けながら、桁外れの加速力で真空中を駆けるエイムが、獰猛に艦載機型へ襲い掛かっている
『青いレーザー!? キングダム船団が来たのか!!?』
『フラグシップのフォルテッツァじゃない! 編成リストにない船だぞ!!』
『なんでもいい今の内にボートを収容しろ! メナスを引き付けてくれてる間に逃げるんだよぉ!!』
ほぼ全てのメナスが強襲揚陸艦に群がっている為、臨時船団の船は救難艇の救助や船体の緊急補修、重傷者の応急処置をはじめる事ができた。
しかし、猛威を振るう勇壮な姿の船から、なかなか目も離せない。
出会えば死を覚悟しなければならないメナスの戦艦型が、まるで張りぼてかシールドの無い宇宙の
それでも向かっていくメナスの勢いとぶつかり、戦闘の激しさは誰もが未だかつて見たことがないほどだ。
「
ノマド『エクスプローラー』船団、船団長の坊主ゴーサラには、それがどういう船か見当が付いていた。
同時に、この臨時船団を当初からリードしてきた赤毛のお嬢さまの正体も納得できる。
全銀河で26年ぶりに最上級重犯指定を受けた手配犯。
ユーリ・ダーククラウド少佐。
とはいえ、ゴーサラ船団長もひとつの
ただ、その力だけは本物らしいと。
プロエリウム発祥の地から来たという、銀河最強の艦隊を率いる司令官。
この出会いは導きだと確信していた。
「あのキングダム船団と同じ! ミレニアムフリートの船の兵装!? 本当に宇宙進出時代の船なんですか!?」
ついでに、好奇心の塊のような乗員ばかりのエクスプローラー船団を刺激するにも、強襲揚陸艦とその主の赤毛は、強烈なインパクトを持っていた。
「マジか!? あのお嬢が600億バルの賞金首だぁ!!?」
『ど、どどどどうすんのボス!? やる!!?』
「アホかこの状況で頼みの綱自分で切ってどうする!? それよりデータリンク要請して火力振り分けろ! それと要救助者の収容要請だろうが!!」
『なんかディアーラピスが管制やってるー! あの船! アルケドアティス? のデータリンク来た!!』
赤い装甲のエイム集団、PFC『ブラッディトループ』はメナスを避けているうちに自然と強襲揚陸艦『アルケドアティス』に寄ることになった。
5万のメナスに取り付かれている状態で、生き残るにはこの怪物に望みをかけるしかない、というのは揉み上げのボスほか誰にでも分かることだ。
大破しながらも統合管制を続けるディアーラピスからの情報を元に、赤いエイム集団もメナス攻撃に参加する。
仮に再度逃げるにしても、ここでメナスの数を削るのは生存率に大きく関わった。
結果的には、無用の心配となったが。
「あの船に……ユリさんが!?」
「青いレーザー兵器……多分キングダム船団の船と同じですよね? つまり…………」
「どうしてユリさんがあんな船を……!?」
船体の補修で忙しいディアーラピス内、学園のお嬢さまたちも、派手に暴れ回る強襲揚陸艦の姿に目を見張っていた。
しかも、それを呼び寄せたのが仲間である赤毛のマネージャーだという。
ほとんどの世間知らず様は、まだその意味に気付いていない。
ただ、メナス群を単機で蹴散らす凄まじい火力と防御力の船に圧倒されるだけだ。
「ユイ――――ユリさんから、メナス片付いたらディアーラピスの全員をアルケドアティスに移せってさ。
ダメコンはそれまで生命維持が出来る程度にしといて、負傷者の処置と移動する準備をしとけって」
「え? それって…………」
情報と通信管制で大忙しの柿色メガネ少女が、手を止めないまま赤毛娘から届いた通信内容を
その意味を理解すると、何かを言いかけたおかっぱネコ目の少女をはじめ、皆が息を飲んでいた。
宇宙船での旅の経験も浅いお嬢様たちには、船の損傷の程度の判断や、後の処置の方法も、ほぼマニュアル任せである。
故に、この愛着が湧きつつある宇宙船を放棄する、という選択が、理解し難かったのだ。
「……どの道この船はもう修理が効く状態じゃないからね。いざとなったら戦闘中であっても避難する事になるかもしれない。シスター、乗員にアナウンスを。
誘導にはわたしもエイムで出るよ。ナイトメアさん、クラウディアさん、みんなももう少しがんばって」
戦場音が響く中で黙ってしまうお嬢さま達だったが、そこで王子さま生徒会長が声を上げ皆を動かした。
単なるイケメン(♀)ではないワケありお嬢さまのエルルーンは、他の娘より少しだけ、いざという時の覚悟が決まっている。
それでも、か弱い少女たちの手前で取り澄ました顔をしているが、どうにか皆と生き延びたいと思う気持ちは強かった。
だから、何が何でも赤毛の仲間には勝ってほしい。
「ロゼくん、ユリくんの状況は?」
「エイムでアルケドアティスの直掩やってる……って、ちょい待ち、センサーにデータの無いメナス?
ユイリ! 戦艦型オメガ33から未確認のメナス艦載機! ヤバイやつかも知れない!!」
しかしここで、ロゼッタの敷くデータリンクとセンサー網が異常な反応を検知。
メナス群の最奥に位置した戦艦型、そこからあらゆるデータに該当しない艦載機型メナスが飛び出してくる。
同時に出てきた他の艦載機型とは、加速力、機動力、放熱量からしても明らかに格の違う個体だ。
レーダー画面上、アルケドアティスへ直進するメナスの特殊個体と、その周囲で激しく動き回るスーパープロミネンスMk53『イルリヒト』のアイコンは、互いに磁力で引き合うかのような接近する軌道を取り始めていた。
◇
コクピットの全周ディスプレイ、その映像内のユーザーインターフェイスが宇宙空間の一点を赤い枠でマークする。
対象物を示す赤枠には同時に詳細データも添付されるのだが、内ひとつが『
だがそんな観測データとは無関係に、オペレーターの赤毛の少女はビリビリとした感覚を覚える。
(上位のメナス……。やっぱり指揮官機みたいなヤツがいるか。でも『マレブランス』ほどの圧は感じない、かな。
こっちも万全とは言えないけどッ!)
交戦中のヒト型メナス、太い骨格標本にトースターのような頭の白い個体、『
真正面から飛んで来る荷電粒子砲を回避しながら、逆に猛スピードで距離を詰め2機を連続で撃墜。
ここまで艦載機タイプを一方的に落としまくっているのだが、しかし唯理には軽い苛立ちが
武人として
兵士である前に人間であること、戦場を故郷としないこと、錆びるのを恐れず錆びたらまた鍛え直せば良いのを忘れないこと。
常在戦場の生活の中で、唯理が学んだことである。
結局実践は出来なかったが。
だが、装備を含めての性能の劣化が、唯理の想定を少々超えていた。
頭の方に身体と、それにエイムが付いて来ない。
整備はしてきたつもりだが、多数搭載するブースターの出力バランスをはじめ、機体の運動追従性や反応速度、電力効率の性能が通常の8割程度にまで落ちている。
仕上げ切れてない部分があるのは明らかだ。
聖エヴァンジェイル学園へ入る前にも、様々な勢力とも派手にやり合いエイムを酷使していた。
道具は今ある物を使えばいい、だから常に備えろ。
というのが唯理の哲学であるが、いかんせん
最高の性能、自分に合わせた設計、最も信頼の置ける技術陣による整備と調整。
これが他の
「……ったくもーエイミー達に合わせる顔が無い!」
敵集団と
砲口初速8,000メートル/秒という弾体が派手に撃ち放たれ、過熱する度に4連の砲身が回転し再度の射撃をはじめる。
即回避運動に入るメナスだが、逃げ切れずにエネルギーシールドを落とされた直後、正確な追撃を喰らい半身が砕けるほどのダメージを負い爆発。
他のメナスが爆光により位置を浮き彫りにされていた。
(グラップラータイプの編隊? メナスが連携を取ってくる)
節足動物のように節くれた四肢に、荒削りな装甲板を重ねたような外装。
前傾した胴体に、前腕部が長く鋭い近接戦タイプのメナスグラップラー。
それらが、中央の正体不明機の上下左右に幾何学模様を描いて配置され、一糸乱れぬ進攻を見せている。
騎乗競技会の編隊飛行なら満点だろう。
「では模擬戦ならいかがでしょう?」
赤毛のお嬢さまモード。もはや二重人格。
射撃と同時に戦闘機動に入ったのが、唯理とメナス編隊は同じタイミングだった。
壁のように迫る無数の暗緑色の光弾に、灰白色と青のエイムは肩のブースターを吹かし側転しながら応射。
間近を通過する荷電粒子弾を回避しながらレールガンを連射する。
メナスグラップラーは射撃を継続し、一機ずつ時間差で突撃。今度はグラップリングメテオのチームプレイに似ているな、と赤毛は思い出していた。
このコンビネーションプレイは、先頭の
当然、先頭のメナスを放置しようものなら、自分は側面を晒し十字砲火を許すこととなりかねない。
故に、唯理は正面から押し潰すことにした。
「フゥッ……!!」
ペダルを踏み付け、ブースターを瞬間的に最大燃焼。先頭から来るグラップラー型のゼロ距離に飛び込む。
グラップラーも素材削り出しのような鋭利な腕を振るおうとするが、灰白色と青のエイムに一瞬で八つ裂きにされた。
エネルギーシールド同様の斥力場を秒間一千億回前後も発生させる、
それに、脚部側面に装備したアーマーメント・レガースギアから打ち込まれる、三連ビームパイルバンカー『イラプション・ペネトレイター』の膝蹴り。
ビクッと震えて機能停止したメナスグラップラーは、そのまま飛んで来る荷電粒子弾からの盾に使われた。
後方から来るメナスは味方の屍に射線を塞がれ、逆にアサルトライフルで近距離から滅多撃ちにされ踊るように爆発する。
更に後ろにいたメナスグラップラーは、爆発を回避するか突入するかの二択を迫られ、機動が迷うように乱れていた。
フォーメーション上、前のメナスが先へ進まなければ他のメナスが続けない。
この隙を見逃す赤毛の修羅ではなく、ブースター最大加速で爆炎の中から飛び出すと、足を止め並んでいたグラップラーを4体連続で叩き斬った。
「はははッ!」
哄笑を上げ、赤毛のお嬢さまがメナス惨殺体を見送り、減速した分を再加速する。
そこに飛来する無数の荷電粒子弾。一点から放射状に放たれており、拡散攻撃であるのがすぐに分かった。
避け切れない、と判断する唯理は、腕に装備していたシールドユニットを前面に立て強行突破。
荷電粒子の散弾を放ち続けるデータの無いメナスへ、シールドごと激突する。
ゼロ距離まで距離を詰めるのに過負荷がかかり、シールドユニットはジェネレーターを全力運転させた末にダウン。
エネルギーシールドが消えた直後の攻撃で本体まで溶解し、放棄するとほぼ同時に爆発した。
「チィ!? 5秒もたんか……!!」
胸部と膝のブースターを爆発させ、改白色に青のエイムは急速後退。
更に、牽制どころかここで仕留めると言わんばかりに、後部に背負う短砲身レールガン2基と一体型の箱型キネティックランチャーから高速誘導弾を派手に射出。
それらは特殊型メナスの拡散粒子弾幕と接触し、一瞬で激しい爆炎が咲き乱れた。
「へぇ……攻撃の割になかなかどうして手堅い」
危なげなく全ての攻めを
データの無い未確認のメナス固体。
形状はグラップラーと似た、上半身が大きく下半身が小さいというバランスのヒト型。しかしグラップラー型より姿勢はヒトに近い直立で、各パーツもヒト型としてのまとまりがある。
その外殻は周囲の光を照り返し、滑らかな石のように組み合わさっていた。
かと思えば、一際大きく膨らんだ肩部に刻まれる溝からは、呼吸するように緑の粒子を吐き出している。
ひじから先の腕部は更に大きく、甲殻類の外骨格が折り重なるような手甲の腕となっていた。指も長く、手の平の中心が荷電粒子砲の砲口だ。
船に取り付く虫のような自爆型といい、メナスも長らく未確認だった新型を投入してきている。
唯理も早々に迎え打つ体制を整えねばならず、自分の5年という見積もりもこうなると大分甘かったかなと、思うが。
(それもコイツと学園の方を片付けてからの話かッ)
広範囲かつ高密度で撃ち放たれる、超高速の荷電粒子弾。まるで破裂するかのように、一瞬で広がってくる。
シールドユニットを失った唯理は無理せず飛び退くと、サイドブースターからメインブースターと立て続けに吹かし、速力任せで強引に回り込んだ。
しかし、灰白色に青のエイムを捕捉し続けていたメナス特殊機は、頭部のヘルメットのようなバイザーを開くと、その下の眼孔から紫の光線を放っていた。
(メナスがレーザー兵器!? 技術的には難しくないんだろうけど)
さすがに面食らった赤毛は、直前で肩のブースターを爆発させ緊急回避。
それでも、踊るように高速で側転しながらメナス後方へ滑り込みつつブレイドを横一文字に一閃。
ところがメナスは、その武装の詰まった大型の手で斥力を放つブレイドを防いで見せる。
(わたしの動きに反応できるか……。接近戦だけではなく、格闘戦に対応してみせる)
今までのような攻撃一辺倒のメナスではない。明らかに
それは、かつてデリジェント星系で遭遇したメナス最上位個体、過去のメナスとの戦争の折に『マレブランス』と呼称された存在に近かった。
「でもやっぱりアイツらほどじゃない……!」
怪腕のメナス特殊機が、長い指にビームの爪を伸ばして赤毛の方へと振り下ろしてきた。
バンッ! と胸部リバースブースターを炸裂させギリギリのタイミング紙一重の間合いでかわす唯理は、その動きを溜めに使いブレイドの刃を立て
次の瞬間には背面と脚部のブースターを最大出力で燃やし、
それが、刀身の半ばまで突き刺さったところで、ゴキンッ! と折れた。
「ユリさん――――!?」
その戦闘を見ていた誰もが頭を真っ白にする、致命的な間隙。
ただ、怪腕のメナスはそれに対して何らリアクションすることも無く、武器を失った不運な敵へとビームの四指を斜め下から振り上げようとしていた。
とはいえ
「んナマクラぁあああ!!」
バキンッ! と耳障りな金属音を立て、イルリヒトが背面に装備していた兵装システム『アッドアームズ』の武装を展開。
後方を向いていた全14基のアームがエイムを囲むように引き起こされ、そこに固定された
それらの2基、左脇の下と右肩の上のブレイドが、柄頭のロックが外れ鍔の部分から回転し、握りの部分を前方へと向ける。
唯理はそれを掴み取ると、抜き放つままにメナスへと振り抜いた。
怪腕のメナスは、振り上げようとした腕部の肘を一撃で切断される。
間髪入れず逆の腕のビーム爪を突き立てようとするが、その前に灰白色のエイムが頭部へ突きを叩き込んだ。
捻った拍子にまたブレイドが折れるが、すぐに次のブレイドを引き抜きメナスの肩口から腕を切断。
最後は、真上から唐竹割りにブレイドを振り下ろし、ヘソ下まで斬り裂きまたブレイドをへし折った。
これこそ、何度折れ砕けようが決して喰い殺すのをやめようとはしない、放浪する赤毛のサメの牙。
破損箇所から暗緑色の粒子を噴出し痙攣する怪腕のメナス。
灰白色に青のエイムが蹴飛ばすと、そのメナスは少しの間真空中を漂い、やがて破裂するように爆発する。
「フッ……これくらいなら、まだどうにかなるかな」
唯理が反転し背を向けると、別方向から次のメナス集団が狂ったような勢いで突っ込んできていた。
ホッと一息吐く間もなく、赤毛娘は敵正面へ加速をかけると同時に、背面の
集団の中へ突っ込むタイミングで、その出力を最大にする。
灰白色に青のエイムが縦回転すると、長大に発生させた斥力の刃がタービンブレードのように高速で振り回され、100機近いメナスの群れを一瞬で斬り刻んだ。
かなり大味な攻撃だった為に半数が生き残るが、比較的軽微なダメージだったメナスには後方から投擲されたブレイドが突き刺さっていた。
更に、アッドアームズに装備された短砲身レールガンとキネティック兵器のマルチランチャー、脚部レガースギアに接続されたサブマシンガン、両腕部のビームブレイド、これらを振り回す赤毛により、残りのメナスも殴殺されていく。
『さぁ
死んで元々! 死にたくなければ死ぬ気で戦え!!』
『よーし行くぞお前らァ!!』
『後の事を考えるな! 撃て撃て撃ちまくれぇ!!』
『アンナー! 生きて帰ったら結婚してくれー!!』
灰白色に青のエイムが先頭に立ちブレイドを突き出すと、その後方から生き残りの中でも気合の入ったエイムが次々に上がってくる。
ここが生き死にの
そんな攻撃もバラバラとなれば最大火力は発揮出来なさそうなものだが、そこは赤毛と連携を取る柿色メガネ少女が最大効率の管制を続ける。
「アティ! アルケドアティスはエマージェンスモード! メナス艦隊への攻撃を継続しつつ友軍機をカバー!!」
『マスターコマンダーの命令を確認、アルケドアティスは
ブレードアーマー展開、フォースシールド、グラヴィティーシールド、最大展開。
進路固定、友軍機群中央を維持、スペシャルオート継続中』
分厚い剣と化していた強襲揚陸艦は、再びシールドブレードの翼を広げてエネルギーシールドを可能な限り大きく発生させ、周囲のエイムの盾になる。
遮蔽物を得たエイム集団は、メナス艦載機型へ全力攻撃。
青い屈折レーザーの火線の中で、灰白色のエイムに続き何十というヒト型機動兵器がブースターを燃やして突撃していった。
【ヒストリカル・アーカイヴ】
・マレブランス
天の川銀河に蔓延るメナス自律兵器群、その最上位個体。
過去のメナスとの戦争の折に確認され、12個体に名称が付けられる。
その後同格と見られるメナス個体も確認されるが、マレブランスと認定されるのは前述の12体のみとなっている。
いずれもエイムサイズだが、単機で星系を防衛艦隊ごと殲滅する程の攻撃能力を持つ。
その後の時代ではあまりに非常識な存在故に実在を疑問視され、データアーカイヴの中に埋没する。
以下、認識名。命名した人物の情報は無し。
『メルコード』
『スカルミリオン』
『アルシノ』
『カルコブリーナ』
『カグナッツォ』
『バルバリッサ』
『リビス』
『ドラグナッソ』
『シリアト』
『グラフィアカーネ』
『ファルファロール』
『ルビカンテ』
・
超高周波数で斥力場を発生させ接触する対象を破壊する、刀剣型の武器システム。
キングダム船団、高速貨物船『パンナコッタ』所属の主任エンジニア、エイミーが開発、製造したエイムの近接戦闘用装備。
元々は某勢力のヒト型機動兵器が装備していたエネルギーシールド貫通兵器を、村瀬唯理の要望に沿いより攻撃性の高い兵器へと再構築した物となる。
その後、単独行動する中で唯理も自作するが、設計図通りに作成したにもかかわらず強度と出力、安定性が予定の性能に達しておらず、応急手段として破損を前提に予め多数を携行するという対応を取っている。
オリジナルは折り畳まれた刀身を約7メートルから14メートルにまで展開出来るが、整備性の問題から唯理はその変形機構をオミットしている。
・アッドアームズ
ヒト型機動兵器エイムの背面ブースターとして装備し、状況に応じて搭載兵器を選択する兵装システム。
開発元のキングダム船団では、半自律補給支援兵器システム、と分類される。
エイムの武装携行量の増加、変化する戦況への柔軟な対応、これらにより継続戦闘能力の向上を図った装備。
基本的にはシールドユニット、背面部ブースターユニット、エイム用武器装備の組み合わせにより、ある程度の自律機動能力を持った上でエイムとの合体、分離で戦闘を支援するのが目的となる。
AAM-004B『カルカリアトゥース』は唯理がキングダム船団を離脱する際に装備していたAAM-004『太刀持ち』を改造した物。
性能が低下した現地改修装備と言える代物であり、本人は納得しておらず『B(マイナス)』と暫定装備扱いにしている。
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