134G.ダークスパイス スイーツオプス

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 人類が天の川銀河全域に生存圏を広げ、情報と通信のネットワークがタイムラグ無しの意思疎通を可能とする、そんな時代。

 青少年の基礎的学習を学校などの一部教育機関が担っていたのも、遠い過去の話となっている。

 現在では時間や場所に縛られる事なく、ヒトは必要と思える知識をいつでもどこでも自由に修められるようになっていた。


 だがそのような時代にあっても、学校という存在が滅んだワケではない。

 軍に属する機密性の高い教育を受ける、軍学校。特に高度で特殊な技術の習得を目的とする、専門教育機関。

 あるいは、創設から長い歴史を持ち伝統と格式を今に伝える、由緒正しき名門校。

 聖エヴァンジェイル学園が、これに該当する。


 これら現代に残る学校機関に共通するのが、ある種の閉鎖性であった。

 機密保持、特殊技術の秘匿、または特別な立場の学生の保護という観点から、外部との接触が大きく制限され、物理的にも隔離される。

 部外者や俗社会からの影響を防ぐ為に、時として存在そのモノを秘匿される。

 だからこそ、ヒトを隠すのにも打って付けというワケだ。


 石長サキという皇国人の少女も、事情を抱え学園に隠されたひとりである。


               ◇


 天の川銀河、ノーマ・流域ライン

 アクエリアス星系、スコラ・コロニー。

 聖エヴァンジェイル学園。


 21世紀生まれの女子高生にして今や銀河のお尋ね者、村瀬唯理むらせゆいりの潜伏生活は、比較的穏やかに進んでいた。

 騎乗部の創設、というイレギュラーな事態はあったものの、これもひとつの保険として計画を進行させている。

 乗機となるヒト型機動兵器の開発、オペレーターの基礎訓練、それらの予定も順調にとは言わないが、それなりのペースで消化されていた。


 いざ・・という時、少なくとも無抵抗のまま学園丸ごと全滅するということはなくなるだろう。


 そんな事を考えていた赤毛の擬態女子生徒、村雨ユリムラセユイリであるが、ここでまたふたつの問題に遭遇していた。

 ひとつは、単なる見落とし。

 だがもうひとつは、過去から来た人間として、如何ともし難い問題だった。


 食べ物危機再びである。


「それで……ユリさんは今度はなにをしているの? それはー……コーティング素材か何か??」


「これはスフレ……の生地ですね」


 創作活動部の一室、内装が天地引っくり返ったような謎の部屋にて。

 赤毛の少女が回転する謎の機械を、半固形の物体に突っ込みかき回している、という謎の行動を取っていた。

 ほっそりした体型の金髪少女が、それを見て眉をひそめている。騎乗部の活動を見て欲しいのに、この赤毛は何をやっているのかと。


 奇妙な部屋の作りは、特に唯理が何かしたワケではない。元からこうだった。

 以前の部屋の主が、インスピレーションを求めたとか遊んだとかで、そのような内装にしたとか。

 映像を引っくり返せば、赤毛のお嬢様が天井に立っているようにも見える。


 して、引っくり返った村雨ユリが何をしているのかというと、お菓子作りだった。

 もう化学薬品っぽい『紅茶』という名の何かと、脳と精神の状態に作用するチップ状お茶請けには耐えられないのである。強制的に気持ちを落ち着かせる成分って実際どうなのかと。


 船団ノマドを離れて宇宙を放浪していた間は、単なる栄養剤の摂取でも特に問題は感じなかった。赤毛の逃亡犯も大分視野が狭まっていたので。

 しかし学園に潜伏してやや時間に余裕が出来ると、身の回りのことに目が行きはじめる。偽装お嬢様にも慣れが出てくる。

 そこでジワジワ唯理を追い詰めてきたのが、ひと時の休息を彩るお茶とお菓子、というワケだ。


               ◇


「おいヒー!!!!! なにコレ美味しいー!!」


 跳ね気味ミドルヘアの女子生徒、ナイトメアが素直な感情を表現していた。

 口にしているのは、フォークに刺した黒に近い茶色で三角柱型の物体。

 ガトーショコラである。

 小麦粉、タマゴ、チョコレート、バター、等の材料は全てT.F.Mによるデータからの合成品だが、そこからは手作りだった。


 材料のデータは、船団にいた頃の研究の成果だ。

 天然の素材が手に入らない状況では、十分な代替手段となっている。

 こんな事もあろうかと想定して、自分の情報機器インフォギアに記録してあった。


「……どういうこと? これわたしのバイオリズム参照してないわよね? なんで普通に食べられるの??」


 無邪気に喜んでいる外跳ね少女の一方、スレンダー娘は理解できない物を前にして、困惑を全面に出していた。

 この時代、ヒトが口にする食べ物は、基本的にその全てが個人用に調整されたフードレーションとなる。

 本人が必要とする栄養素や味覚神経の刺激による影響と、医療シミュレーターが個人ステータスからこれらを満たす成分を導き出し、T.F.Mが分子レベルから組み上げるのだ。


 よって、他人と同じ物を食べて、その味に共感するという文化は無い。

 ましてや、フードディスペンサーを使わずにヒトの手で作られた料理を食べる機会など、大半の人間は一生得られなかった。

 現在、クラウディアはチーズスフレを食べてビックリしているのだが。


「ユリさんはフードマイスターみたいな事までできますのね。器用ですこと」


 などと言いながら、ドリルツインテのエリザベートも済ました顔でサンドイッチを食べていたりする。中の具材はイチゴのムースとプリンクリームだ。

 実はこちらが、唯理のお腹を満たす本命だったりする。


「うぅ……なんですかぁコレ? 今まで生きてきた中で一番お口が幸せなんですけど」


「これは……そう、味覚ルネサンス!」


「スゴイですね、甘さで景色の彩度が強くなるような気さえします。ドルチェさん?」


 単眼を潤ませ心ここにあらずな寝癖少女、アルマ。

 アイス乗せスフレの皿を凝視して吼える長身紫女子、ローラン。

 猫目を輝かせているおかっぱゲーマー、ランコ。

 クールめがね系ロボ娘のドルチェは動いていない。頭の中の本体がお菓子に夢中な模様。


 赤毛の少女が用意したのは、英国式アフターヌーンティーの三段ケーキスタンドと、そこに乗せるお茶請けだ。

 縦に並んだ白い皿に、下の段からサンドイッチ、ガトーショコラ、スフレが置かれていた。

 マナー的には下から食べる。上のモノを取った後に下のモノに手を出してはいけない、とあるが、そこはどうでもいいと唯理は思っていた。

 とりあえず、淑女のお茶会としてはこれでよかろう、と考えて、この形にしている。


 そんなスイーツは、狙い通り乙女たちのハートを撃墜していた。

 良いところのお嬢様ばかりなので、食材から人力で料理を作るフードマイスターという存在にも、ある程度の理解がある。

 流石にお菓子類は初めての経験だが、船団ノマド乗員クルーよりは受け入れるのも早かった。


「とても素敵な香り……ユリ様はこんなに美味しくて幸福にしてくれるモノをご自身の手で作り出せるのですね。まるで物語の魔法使いのようです」


「古い様式を趣味で再現してみただけですが……あら、プリマさん」


「え……?」


 乳白色の髪のマシュマロ少女、プリマも芳醇な紅茶(合成)の香りに緩んだ笑みを零していた。

 この時、プリマは口元にショコラの欠片が付いていることに気付いていなかったのだが、これをユリが無造作に掬い取ると、自分の唇へパクッと。

 マシュマロ娘は笑顔のままフリーズした。

 今夜の創作活動は激しくなりそうである。


「さて……それで先ほどの件なのですが、皆さんのご要望と、船の選定については?」


 ひとりの少女の精神が爆発していたが、赤毛はそんなの知ったことではない様子で、保留していたもうひとつの問題に話を戻す。

 元々、お茶をしながら騎乗部と創作活動部の皆で宇宙船を購入する話をしようと考えていたのだ。


 ひと月半後に迫った、ノーマ流域ラインでの騎乗競技会。

 そこに遠征する為には、宇宙船を手に入れなければならない。

 直前で気付いてもう手遅れ、という事にならなくて良かったと赤毛は胸を撫で下ろす思いだった。


「『船』……と言っても、どんなモノが必要なのか、わたしにはよく分からないのですが?」


「まず単純に、エイムの運搬が可能な船、という事になるのでしょうね。それと、わたくし達全員が乗れる船でなければなりませんし」


「外洋に出られる船……という事ですよね? もしかして、武器なども装備している必要があるでしょうか?」


「一応言っておきますけど……それなりのグレードの船でなければこの学園の生徒には耐え難い船内環境になりますわよ? 私は別に気にしませんけど」


 紫女子、ロボ娘による基本的な意見から、ドリル嬢の意外な指摘まで。

 これを切っ掛けとして、各部員から様々な要求仕様や、居住性についての希望が出された。

 棺桶のような個人スペースしかない船や、シャワールームが複数人共同で水の使用制限がある船など想像もできないお嬢様方である。

 予算は潤沢なのでハードルは高くないが、かと言って全ての意見を取り入れられるような宇宙船など存在せず、可能な限りそれに近い機種を選ぶということになるだろう。


 他方で、このコロニーから脱出できるのなら何でもいい、というお嬢様も、この学園には確かにいるのだが。

 そこに来て、学生が主に運用する宇宙船など、格好の獲物と言えるだろう。


                ◇


 何せ運営母体が銀河最高の名士ハイソサエティーズなので、ひとつ呼び付ければどんな業者もだいたいふたつ返事で馳せ参じる。

 カタログで複数社の宇宙船を候補に絞り込むと、後はそこの営業担当と連絡を取り、検討の末にすぐさま実物の購入となった。


 宇宙船選び自体は、それほど揉めることもなかった。最終的には、とにかく最高の物を、である。

 とはいえ金出せば完璧な物が手に入るというものでもなく、一時は学園長シスターからオーダーメイドにするべきという意見も出たが、納期までの時間が足りないので既製品レディメイドのカスタムで納得してもらった。


 そんなインターネット通販感覚で購入した宇宙船が、聖エヴァンジェイル学園の入っているスコラ・コロニーに到着している。


「ヘルメスのJ型……趣味的ですけど、まぁマシな方ですわね」


「エリザベートさんって……どんなモノなら満足するんですか?」


「とりあえずオプションで選択出来たところは全てアップグレードしてありますが。

 まずはオーダー通りかを確認して、それからわたし達用に模様替えしましょう」


 1キロメートル級の戦艦クラスでも入る、コロニー隔壁エリア格納庫。

 そこの窓から、ドリル少女とオレンジ金髪娘、赤毛のお嬢様は与圧中の内部を見ていた。

 明るく真っ白で格納庫らしからぬ空間は、今は一隻しか宇宙船が置かれておらず、閑散としている。

 元々使われていなかった格納庫だ。

 駐機されている船も、30分ほど前に到着したばかりだった。


 全長450メートルと、軍の軽巡洋艦サイズ。

 全体的には先端に向け細くなる楔形。船首は水上船のように斜め前に切れ上がっていた。

 広い船尾には、長方形のブースターエンジンノズルが2基、円形のサブエンジンノズルが4基搭載されている。

 船体の両舷には、箱型のエンジンナセルを2基接続。小型だが高性能な補助推進器だ。

 刃物の切っ先のような船首周りから船底側の色がネイビーブルーに、船尾周辺がシルバーグレイ、他はホワイトグレイでまとめられている。

 丸みのあるシンプルだが品の良い宇宙船だった。シスター判定的にもセーフ。


 ドリルの海賊少女が皮肉っぽく言ったように、その外観と内装はデザイン性が重視されている。

 船内は居住性にも優れており、これは箱入りお嬢様が不自由しないようにという要求によるモノだ。

 船体中央部にある個室、広い通路、ラウンジ、綺麗な食堂と、至るところが高級仕様であった。


 かといって、見かけ以外の性能が低いかと言うとそうでもなく、最小のスペースに最高の設備を詰め込むというその辺の矛盾を金で解決した最上位機種である。

 しかも、赤毛が発注の際にジェネレーターからエネルギーシールドから武装からグレードを上げられるだけ上げていた。

 なにせ、乗るのが世間知らずのか弱いお嬢様方だ。出来ることは全てやる。あとエンジンナセル周りの装甲がほぼ紙なので増設か換装したい。

 元々戦闘用ではないので、仕方ないことではあったが。


               ◇


 赤毛の少女と若いシスターは、納品に来たメーカーの営業担当と宇宙船が発注通りの仕様かを確認してから、実際に船の中に入って行った。

 他の部員は、既に宇宙船の内部を見物している。

 新品の、それも自分たちが使う船とあって、今ばかりはお嬢さま方も笑顔で小走りになっていた。


「あ! ユリさん格納庫にもう整備ステーションが入ってましたよ! 一緒に注文してくださっていたんですか!?」


「なんだか小さなホテル船みたいでした。いいですねーこういうのも、プライベートな感じがして」


「本当にこの船で宇宙に出るのですか? 操縦はどのようにすれば……??」


 船体中央ホールに入ってきた赤毛を見て、パタパタと集まりはじめる部員たち。

 船内格納庫を見て興奮する単眼モノアイ、家族と行った豪華ホテル船を思い出すネコ目のおかっぱ、不安を隠しきれない様子のヤングシスターである。


「機能的には全ての操船を管制AIに任せられるようです。表書きには、船舶操縦技能を持つ者が同乗するように、とありますが。

 わたしは一応操船できますけど…………」


 基本的に富裕層、ハイソサエティーズなどに向けた商品であるヘルメス・Jは、ほぼ全ての操縦が自動化されているのが売りらしい。メンテナンスまでもが、搭載されたヒト型機械ワーカーボットにより自動で行われる。

 お金持ちの船遊びにも対応しているというワケだ。

 船首部分にはそれらの制御機能が集中しており、本来あるはずの船橋ブリッジは非常に省スペースとなっている。


 人工知能AIを用いる自動制御は時代遅れとされているが、それとは性能も機能も全く違う物だった。

 とはいえそれは半分売り文句みたいな物で、実際の航行に際しては操舵手なり航海士なりを乗せるようメーカーも推奨しているのだが。

 この面子の中では、唯理のほかドリル海賊のエリザベートと、学園の王子様ことエルルーンが宇宙船を動かせるとのことだ。


「それではみなさん、船の中の確認は済んでいるようですね。早速準備を始めましょうか。テスト航行もしなければなりませんし。

 ロゼッタさん、船のメインフレームをみていただけますか? 通信とセンサー系、それに戦術データリンクのセットアップをお願いします」


「もう……ですかー? というかユリさん、母船としてのエイム運用を考えているんですね……」


「出来ないよりは出来るようにはしておくべきでしょう。

 エリィさんは兵装をチェックしてみてください。基本的な物は入れたのですが、その……私も精通していると言うほどではないので」


「カタログスペックだけ良くても、重力偏差補正とイルミネーターの相性によっては産廃にもなりかねませんものね。一通り確認はしますけど、実際に使ってみないとその辺はなんとも言えませんことよ?」


「ほかの皆さんも、この船である程度生活するのを想定して、必要な物を考えてみてくださいね」


「はーい!」


 柿色のメガネ少女ロゼッタとドリルさんは専門的な仕事に入り、その他のお嬢たちも自室などを整えに再度散っていく。

 そうして、見送る赤毛はここで少し思案。


 学園に来る1年ほど前から唯理はひとりで旅をしていたが、騙し騙しやってきたというのが正直なところ。未だ宇宙の旅に手馴れているとは言い難い。

 シスターも死ぬほど心配するので危険な宙域の航行は確実に避けるが、アクシデントなんてモノは確率に因らず襲ってくるものである。想定外だから、アクシデントなのだ。

 ならばやはり、ここでも一応保険は用意しておくか、と。

 赤毛の擬態女子生徒はもうひとつの船に通信を繋ぎ、ひとり船首の制御システムへと向かって行った。


               ◇


「騎乗部にですか?」


「ええ、私も自分でエイムを操縦してみたくて。こういうのって、村雨さんにお願いすればいいのかしら?」


 騎乗部専用宇宙船がスコラ・コロニーに納入された、翌日の事となる。

 前日にはしゃぎ・・・・疲れたか、お嬢様方がぐったりしていたところ、創作部の部室に不意の訪問者がやってきていた。


 少し背が低めだが健康的な身体付きをしている、長いストレートの茶髪女子。

 他人と距離を置いていそうな表情と、意志の強そうな瞳が印象的な、石長サキ、そのヒトである。

 口調や雰囲気から、どう見ても「ちょっとエイムに興味があって」という感じではなかった。


 何か裏がありそうに思う赤毛だが、かといって現状それだけでは入部を拒否する理由も無い。


「えーと……そういう事でしたら部長に判断を仰ぐのが筋になるでしょうね。

 クラウディアさん、いかがです?」


 同じくサキという女子に何かを感じていた華奢金髪だが、まさか自分に話を振られるとは思わず、赤毛のセリフに反応するのが数テンポ遅れた。


「は? え?? わ、わたしが決めるの? ユリさんが良いと思うなら入部していただけばよろしいのではなくて??」


「ですが、そのあたりの是非はやはり部長に決めていただいた方が」


「『部長ぶちょー』!!?」


 コテッと首を傾げるユリ様に、目ん玉ひん剥くクラウディアである。

 何故そんなことになってしまうのか。今まで全部この赤毛が仕切っていたではないか。


 しかし、誰が騎乗部創設を言い出したか、と問われてしまえば、それは間違いなくクラウディアであった。

 それに、唯理はいつ自分が学園から消えるか分からないので、引き受けるワケにもいかない。

 ナイトメアは部の掌握に向いた性格ではない、フローズンも積極的に皆をまとめるタイプではない、エリザベートはほぼ傭兵という立場、エルルーンは元々生徒会会長だ。

 他候補の選択肢が無い。


「あう……」


 愛され系女子のクラウディアは、あっさりと追い詰められていた。プルプルしているのが小動物の如し。

 唐突に、女子生徒ひとりの入部の是非を自分が決めるという責任がかる。

 こういった事を決定する権限など人生の中で持ったこともないので、クラウディアは軽くパニックになった。

 どう判断して良いかも分からず、目を点にして諸手を虚空に彷徨さまよわせる。


「石長様、騎乗部は目下ノーマ・ラインでの競技会に出場するのを目標としているのですが、そういったオフィシャルな実績にはご興味が?

 それとも、単にエイムオペレーションに興味がおありで?」


「え……? あ、そう……キチンとそういう大会にも出るのね。

 その……私は正直あまりそういう事は詳しくなかったのだけど、部員としての活動には参加するつもりよ」


 部長に代わって赤毛が質問してみたところ、どうもサキという少女、隠し事が上手い方ではないようだが、かといって悪巧みにも向いてなさそう。

 そのような見立てもあり、唯理は経過観察含めて入部に賛成の立場を取った。

 実質部長のような赤毛が認めたことで、ほかの部員からも特に反対は出ず。

 王子様は何かを知っていたようだが、いつもの微笑のまま『いいんじゃないかな』とのことだった。



 そうして、石長サキという女子を迎え入れた結果、後日唯理が忍者に襲われる事となる。


         



【ヒストリカル・アーカイヴ】


・T.F.M

 元素合成変換再構成システム、トランスフュージョンマテリアライザーの略。

 あらゆる物質を材料として分解し、必要とする素材に分子レベルから合成する。

 フードディスペンサーはこれを食事用途に限定したもので、機能は全く変らない。


・スフレ

 フワフワ生地のケーキ菓子。

 生地を泡立てたメレンゲ状態から焼くので、空気をふんだんに含み口当たりが軽い。

 シンプルな味で、チーズを生地に含んだり後からアイスを乗せるなど好みでアレンジできる。


・ガトーショコラ

 しっとりして濃厚なチョコレート生地のケーキ。ココアパウダーで追い討ちをかけているカカオの奥義。


・フードマイスター

 通常はフードディスペンサーに任せるレーション作成を、手づから行う専門の職人。

 別名レーション芸術家。

 料理人やシェフとは異なり、作り出すのは飽くまでもレーションとなる。

 また、味よりも見た目や摂取時の効果、また作成工程のパフォーマンスを重視する傾向にある。




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