89G.ノーサプレッション レイドアタック

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 ノマド『ローグ』船団旗船フラグシップ労働者船、上部多目的ホール。


 ローグ船団の裏の支配権をかけた、『群王の儀式』。

 それは、キングダム、ローグ船団からの挑戦者、双方合わせて300人によるルール無用のバトルロイヤルである。

 原則素手・・による殴り合いで、たったひとりの勝者を決めようという、時代錯誤も甚だしい暴力の祭典。

 ローグ船団の野蛮人達は、この手の勝負で自分たちが負けるとは毛頭考えもしない。

 より暴力的で、狡賢く、卑怯で、凶悪で、何より強い者が勝って当然という自然の摂理。


 会場となるホールは、阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。


「あビュッし!!?」


 後ろ半分サイボーグ丸出しな大男が、空中後ろ回し蹴りを顔面に喰らい回転しながら吹っ飛んでいく。


「グギャッ!?」

「おゴバッッ――――――!!?」


 殴りかかって来た相手へ逆に間合いを詰め、カウンターで叩き付ける肘。

 続けて走って来る男のパンチを上半身を捻りかわし、その胸部にタイミングを合わせて正面からヒザを叩き込む。

 滑るように次の獲物の懐に入ると、勢いに乗せて鳩尾みぞおち崩拳ミドルブロー、顎を掌底で打ち上げ、ガラ空きとなった正面へ肩からぶち当たる貼山靠てんざんこうの三連撃。

 次のザコはハイキックで顎を蹴り上げ、上体が泳いだところで相手の膝を足場に軽く飛び上がると、側面から突っ込んできた輩の側頭部を蹴り飛ばした。


「どうなってんだアレー!? 手が付けられねーぞ!!?」

「チクショウ……!? ああいうめんどくせーのはホダイの担当だろ!? ホダイはどうした!!?」

「自爆しやがったよあの腰抜けがよ!」

「いや投げられたんだよくわかんねーけど!」

「アンガーは!?」

「スゲー勢いで頭に喰らってピクリともしねー!」

「ケニスの野郎は!!?」

「あそこに転がってらぁ!!」


 瞬きする間に吹っ飛ばされていたのは、何十人というローグ船団のチンピラの方だった。

 暴力に慣れたはずの荒くれ者どもが、それ以上の暴力に蹂躙されている。

 その中心で荒れ狂うのは、魅力的な肉体を躍動させる赤毛娘、村瀬唯理むらせゆいりだ。

 現代では誰も見た事の無い、地球由来の人類プロエリウムが宇宙に出る以前の、格闘術の極み。

 単なる暴力ではない、対象を破壊する為に世代を超えてつちかわれた技術の結晶である。


「なんで……キングダムにこんなヤツがいるんだ!?」

「ローガン! あっちのロアド人も手が付けられない! どうするんだ!?」

「ロアドの野郎にゃロアド人ぶつけりゃいいだろうが! シェンにやらせろ!!」

「シェンなら首ブッ飛ばされてひっくり返ってそのままだよ!!」


 問題なのは、赤毛の破壊神だけではなかった。


「フハハハハどうしたどうした腕自慢ども! 威勢が良い割りに実力が伴ってないぞ! ああ!?」


 一見して可愛らしいツインテールの小柄な少女、その正体は高重力に適応した『ロアド』人。

 コリー・ジョー=スパルディアの怪力により、倍以上の体格差がある野郎どもが派手に吹っ飛ばされていた。

 身のこなしはシャープで早く、防御も硬く、戦いに手馴れている。

 ローグ船団の参加者にもロアド人はいたが、運悪く序盤で赤毛娘にあたり、居合いのような抜き打ちラリアットで交通事故的にねられた。


「ウラぁああ死んでこぉおおおい!!」

「アブァ!?」

「こ! このアマ――――べイッ!?」


 桃色髪の喧嘩ファイター、メイフライ=オーソンも群がるチンピラを自分から殴り倒しに行っている。

 元々喧嘩っ早い武闘派の女性だったが、即応展開部隊ラビットファイアの任務の中で、実戦勘も大分磨かれていた。

 その機関銃のような手数の前に、滅多打ちにされた末にボロ雑巾のようにされたチンピラが量産されている。


 他にも、男顔負けの筋肉を振り回す女船長や、クモのような動きで足下を這い回るサイボーグ、軽業を見せ頭上から次々チンピラを踏み倒す細身の美男子など、一騎当千の活躍をする者たちも戦いを続けていた。


 当初は、ローグ船団側の想定どおりに事が運んでいたのだ。

 やはりキングダム船団側の乗員は、なんでもありな素手の殴り合いに不慣れだった。

 当然だ。戦闘となれば通常は銃火器なりヒト型戦闘機械コンバットボットなりを使うだろう。ローグのやり方が異常過ぎるのである。

 方法以前に ローグ船団の体制と体質が大問題ではあったが。


 しかし今回、ローグ船団の土俵に上がって来たのは、キングダム船団の方だ。

 ローグのチンピラは、思う存分手馴れたやり方でキングダム船団の参加者を不意打ちし、油断させ、フェイントをかけ、複数人でひとりを押し潰していた。

 楽勝だと思ったのだ、はじめの内は。


 人数が減り始め、そこに混じる赤毛の脅威が顕在化するまでは。


 ローグの中でも特に腕に自信がある者は、ほとんどが既にダウンしていた。

 大の字で床に倒れ白目を剥いている坊主頭、うつ伏せのままピクリともしないスキンヘッド、剥製の敷物のようになっているライオンヘッド。

 もはや楽勝どころの話ではない。

 ローグ船団のチンピラどもは、赤毛娘を先頭としたキングダム船団側の精鋭に駆逐されようとしていた。


「クソが! ふざけんじゃねーぞ! このまま連中の思い通り面子潰させてたまるかよ! おい!!」


 金髪を逆立てた男は、周囲のローグに赤毛のバケモノを集中して狙うよう指示。ギャラリーの中にも、乱闘に飛び入りする者が続々現れる。

 同時に、手近に転がっていた棒状の金属フレーム片を拾い上げ、仲間もそれにならい武器になりそうな物を持ち出してきた。

 儀式は原則素手で戦う事になっているが、銃のたぐいでなければ、ローグ船団の中に物言いを付けるとやかくいう者はいない。

 当然ながら、キングダム船団側の自警団ギャラリーはルール違反の連発に黙っておらず、一斉に介入しようとする。

 こんな時はローグ船団のチンピラも団結を見せ、壁となり自警団ヴィジランテを食い止め赤毛の強者を孤立させていた。

 

 当事者である唯理としては、武器だろうが増援だろうが全く構わなかったが。


「ローグ船団は俺たちの物だ! キングダムの腰ぬけが、刃向かってんじゃじゃねーぞコラァ!!」

「後悔しやがれクソアマ――――ォボオオオオ!!?」


 振り下ろされた金属パイプを、赤毛娘は正面から受け流し相手の股間に誘導。白刃取りの変形だ。

 自分の力をそのまま男の急所に受け、痩せたモヒカンは泡を吹いて前のめりに倒れた。

 力自慢が鉄骨を振り下ろすも、退いた唯理にはギリギリ当たらず。逆に唯理は鉄骨を駆け上がると、相手の顎に後方宙返り蹴りサマーソルトキック


 全裸に近いほど肌をあらわにし、胸やら尻やらを大胆に弾ませている赤毛の美少女だが、それに見蕩みとれていられる状況ではなかった。

 ただのエロいオンナかと思ったら、とんでもない。

 チンピラどもは総当りで襲い掛かるが、武器を持った前後で結果も過程もまるで変わらず。

 地震脚からショートアッパー、かかと落しから後方宙返り蹴りサマーソルトキック、空中後ろ回し蹴りから着地しての足払い。

 優雅と言えるほど赤毛娘の歩みは遅かったが、獲物が間合いに入るや恐ろしい速度で襲い掛かり、有無を言わさず殲滅する。


 ここに至り、ローグのチンピラも自分たちが全く次元の違う生き物を敵に回した事に気付いていた。


「ヘッ……! キングダムのアホどもがやたら強気だった理由はこれかよ。違法改造でもしてんのかぁ? なぁねえちゃん」


「さぁ? 自分でもよく分からんね」


 あざけるように言う逆立て金髪だが、他の者同様に腰が引けている。

 現代では身体強化手術により、簡単に超人を作り出す事ができた。

 だが、参加者は事前に走査スキャンを受けており、それは無いと確認されている。身体の機械化サイボーグも、戦闘用でない限り不足分を補う以上の意味は無いのだ。


 首を傾げる赤毛の美少女は、100%完全に生身。

 そのカラダは妖艶過ぎる格好もあり非常にそそる・・・のだが、かえって中身・・の恐ろしさが際立っていた。


 チンピラたちが後退る一方、やや前のめりに、猛禽類のように広げた手の平をゴキゴキと鳴らす唯理。

 その目は完全にわっており、危機意識に乏しいチンピラでさえ本能的な恐怖を感じてしまう。

 しかし、その中で逆立て金髪の男、ローガンだけは逃げっぱなしではいられなかった。

 弱腰なところを見せれば、ローグ船団内での求心力を失う。負けても当然面子が潰れるが。

 つまり、どんな事をしてでも勝つしかないのだ。


(そもそもテメェら如きがまともに相手してもらえるとでも思ってんのか!? 甘めぇんだよ!!)


 引き攣った笑みを浮かべるローガンは、身に着けた情報端末インフォギアから旗船フラグシップ内のコントロールシステムにアクセス。

 直情的で短絡的なチンピラが多い中、この男は小細工を仕込む用意周到なタイプだった。

 まともに動く物の方が少ないローグの旗船フラグシップだが、気圧調整機能と隔壁の制御くらいは生きている。

 儀式前に、こんな事もあろうかと、と確認していたのだから間違いない。


 それを動かし、ローガンは多目的ホールと隔壁区画の気圧調整室エアロックまでの扉を一気に開放した。


「ぅおおおおおおお!? なんじゃぁあああああ!!?」

「ウワァ!? ヤバイ船体に穴が開いた!!?」

「閉鎖しろ! 閉鎖だって!!」


 当然パニックになる船内。宇宙において船体の破壊と空気の漏洩は死に直結する致命的な事態だ。

 そして、金髪を逆立てたチンピラは、こうなる事が分かって空気を抜いた。

 全ては、勝つ為だ。勝てば言いワケはどうとでも立つ。


 急減圧により凄まじい勢いでホール内の空気が抜かれ、見物に徹していたギャラリーがひっくり返り、儀式の参加者も立っていられず膝を突く。

 まさにローガンが狙っていた状況だ。

 すぐに隔壁は自動閉鎖されてしまうだろうが、一瞬不意を打てればそれでいい。

 

「じゃーなーこのバイタが! くたばりやが――――――!!」


 排気が止まった瞬間、先端に平たいジョイントが付いた斧のようなパイプを持ち上げるローガン。

 赤毛の女も突然の事に面食らっただろう、と。この機を逃がさず全力で襲い掛かるが、


 ガキンッッ! と。


 体勢を崩してはいないし、ましてや不意を突かれてもいない唯理が、手にした金属パイプで弧を描きローガンの武器を打ち払う。

 そうして叩き落とされた斧もどきは、床に落ちると柄の部分がスパッと斬り離されて・・・・・・いた。


「な……なんだよこれ――――――うゴォ!!?」


 その鋭利な切断面に目を奪われるローガンだったが、そこを見逃されるはずもなく、金属パイプで足を払われ後頭部から床に倒れる。

 痛みに悶える逆立て金髪は、自分が見下ろされているの気が付くと、意地を張り相手を睨み返していた。



 ところがそこで、見上げる角度故にローガンは、ある重大な事実を発見してしまう事となる。



「あぁ……? テメェ下はいッ――――――!!?」


 思わず、といった様子で何かを言いかけ、カンフーの掛け声のような断末魔を上げ気絶する逆立て金髪。唯理が結構な勢いで顔面を踏み抜いた為である。


「次は?」


 金属の棒を肩に背負い、傲岸不遜にふんぞり返って言う赤毛の修羅。必然的に巨乳も強調。


 リーダー格の最後のひとりが倒れ、ローグ船団側もそれ以上戦闘を続ける事は出来なかった。

 『群王の儀式』は、キングダム船団側の勝利となる。少なくとも、チンピラのリーダーたちがローグ船団を仕切る大義名分は失われたワケだ。

 あとは、勝者であるキングダム船団側が、ローグをどのように統制するかの問題だった。


 なお最後の最後に、勝ち残ったキングダム船団側のツインテなロアド人が、ここぞとばかりに赤毛の少女に襲い掛かったが、その部分は割愛する。


               ◇


 両船団合わせて250人ほどの負傷者を出したものの、終わってみればキングダム側の圧勝であった。

 ある程度、予想した通りでもある。ローグのチンピラはキングダム船団を舐め過ぎた。

 無秩序な暴力ラフファイトにこそ慣れていないが、それでもメナスやドミネイターといった脅威と命がけで戦争してきた経験があるのだ。

 もっとも、実戦畑の権化のような赤毛娘を向こうに回したのが、ローグ船団最大の不幸だろうが。


 最後のひとりを勝者とする『群王の儀式』のルール上でも、最終的な勝者は村瀬唯理という事になる。

 一番苦労させられたのが、身内のツインテなロアド人だった。


 高速貨物船『パンナコッタ2nd』の船首船橋ブリッジにて。


「まぁユイリちゃんに大きな・・・怪我が無くて良かったわ。ただのプロエリウムやライケン人相手なら、多分大丈夫だとは思ったけど」


 安心半分、呆れ半分で言うのは船長のマリーンお姉さんだ。

 赤毛娘唯一の怪我の原因が、仲間の遊びによるものというのが少々ご立腹の様子。

 子供っぽく頬を膨らませる大人の女性である。


「急減圧にはちょっとビックリさせられましたけどね。フィス、アレの被害は?」


「とりあえず放り出された乗員とかはいなかったな。中のインテリア構造がちょっと破損したくらいか?

 ただ軌道がズレて修正が自動になってなかったんで、こっちでやるハメになったわ」


 勝利したものの、それで全てが片付いたワケでもなかった。

 まず、金髪を逆立てたチンピラ、ローガンの行為はどう解釈しても船を損壊、場合によっては内部の乗員全員をも危険に晒す行為である。

 よって重大なペナルティが課される事になった。


 ローグ船団は当面は・・・今まで通り運営されるが、その実質的な統制はキングダム船団が行う事になる。

 『G』というライケンの巫女を頂点にしたカルトと暴力による支配を、そっくりそのまま乗っ取ったワケだ。

 自由船団ノマドの運営としては非常に異質だが、これもローグという船団と乗員を制御する為には仕方ない、というのがキングダム船団旗艦艦橋ブリッジの判断である。


 なお、実際にローグ船団内をシメるのは、群れのリーダーとなった赤毛の仕事になりそうだ。


「結局ユイリの仕事が増えただけって気もするけどな…………」


 ただでさえ忙しいのにこれ以上働かせるのか、と顔をしかめるオペ娘。ツリ目50%増し当社比。

 業務内容も色々な意味で不安しかない。


艦橋ブリッジサイドは時間をかけてローグの運営を健全化させるつもりみたいね。いつまでもユイリちゃんひとりに任せる事はないと思うけど…………あちらも共和国の件で手が離せなくなるでしょうし」


 船長のお姉さんも、何か思い悩むように溜息を吐いている。

 この流れも予想していたとはいえ、唯理をローグのむさ苦しいチンピラに近付けるのは好ましくなかったのだ。

 認めたくはないが、相性も良過ぎる気がする。


 とにかく、キングダム船団はローグ船団をまともなノマドにするつもりだ。

 だが、当然ながら一朝一夕で出来る事ではなく、当面は赤毛の少女が働かねばならない。

 船団長は、その手段や方法を一任すると丸投げのような事を言っていた。

 積み重なる仕事量もそうだが、この娘に自由にやらせると何かとんでもない事が起こりやしないか、とマリーンやフィスは思うものだが、


「あの手の連中の扱い方は知っているんで大丈夫ですよ、船長。それに、ちょっとやりたい事もあるんで」


 そんなお姉さま方の心配をよそに、赤毛娘はほんの少し悪戯っぽい微笑を浮かべていた。


 これからはじめる仕事に、唯理はどこか懐かしい高揚感を覚えている。

 ローグのチンピラは素材としては最低だが、上手く調理すれば多少はマシな手駒になるかも知れない。

 どう扱っても構いやしない、荒事に慣れた集団。何気にこの時代では貴重だ。

 これをまともな船団の戦力として教導するのは、なかなかやり甲斐のありそうな仕事だった。


 そんな穏やかならざる事を考え、笑みを悪いモノに変えていた赤毛だが、その姿はいまだに蛮族ビキニのままだったりする。

 ローグ旗船フラグシップの労働者船から戻って間もないのだ。自警団ヴィジランテなどは旗船内の点検中・・・で、場合によっては唯理もすぐに戻るかもしれない。

 そんなところへ暇潰しに来ていた双子、リリスとリリアは目線の高さ故にローガンと同じ事に気が付き、


 スパンっ! と、赤毛娘のパレオのような腰布を跳ね上げると、その下のノーパンをあばいていた。


「は? …………はぁああああ!!?」

「あら…………」

「やーんご主人様パンツはいてなーい!」

「やーんお嬢様エッチー!!」

「ちょッ!? ふたりして引っ張らないで!!」


 プルン、と揺れる生尻を後ろからモロに見てしまい、驚愕のあまり立ち上がる鼻血フィス。

 正面にいたマリーン船長も、何も隠す物が無い艶めかしいそこ・・を見て、目を丸くしている。

 突然の双子の凶行に、唯理は慌ててパレオもどきを押さえていた。


「え!? ユイリおまえいつから!? いつから穿いてないの!!?」

「えーと…………多分ズレ落ちるかヒモ切れるかして、2~3人蹴っ飛ばした時には無かった気が――――――」

「そんじゃノーパンであんな跳んだり脚上げたりしてたのか!? このアホー!!」


 目を血走らせたフィスに肩を掴まれ、ガックンガックン揺らされる赤毛のノーパン。

 布で縛り付けただけのオッパイもブルンブルン揺れているので、そろそろ本当に零れてしまいそうだ。


「ユイリちゃんには……一度しっかり女の子のつつしみというモノを教えてあげなきゃダメかしら?

 いったいどれだけのヒトに見られた事やら…………」


 マリーンお姉さんが頬に手を当て首を傾げていらっしゃるが、目が笑っていないのが怖い。


 唯理とて別に恥じらいが無いワケではないのだ。ただ、仕事と思えばその辺の感情は脇に置く事ができる。それに、儀式の最中にまさかパンツ穿くからと離脱も出来まい。その後今まで忘れていたのだが。

 そして、今回のも不可抗力であると言いたい。裸に近い格好が儀式の参加条件、という事で布地面積に無理をさせ過ぎたのが原因と思われる。ほぼヒモだったし。


 そんな言いワケをしてみる唯理だったが、マリーン船長もフィスも許してはくれなかった。


「前からユイリちゃんは、お仕事以外は無防備というかスキが多いというか……。

 良い機会だから、ユイリちゃんみたいなカワイイ娘が油断しているとどういう事になるか、カラダに教えてあげましょう。

 フィスちゃんとリリスちゃんリリアちゃんも手伝ってね♪」


「……え? て、『手伝う』ってマリーン姉さん、何すんの!?」


「せんちょー何するの!?」

「ムムム!? なんかエッチな予感!!」


 遺憾ながら双子と同じ嫌な予感を覚える赤毛娘。この手の予感は外した事がない。

 獲物をなぶるような妖しい笑みで、指をワキワキ動かす船長の様子に、鼻血オペ娘も冷静に戻った。またマリーン船長の悪い癖が出て来た気がする。

 唯理はすぐさま逃げ出そうとするが、エロ双子がパレオもどきを離してくれないので身動きできず。 


 百人以上のチンピラを一方的に叩きのめした赤毛の少女だが、お姉さん他三名には手も足も出ず泣かされるハメとなった。





【ヒストリカル・アーカイヴ】


・ヒモ

 パンツの布地面積を限界まで絞った揚句の状態。もともと穿いてないように見えたが、気が付けば本当に穿いていなかった。

 その後、宇宙船の空気と一緒に宇宙へ放出される。




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