59G.ワイルドカード デスサイズ
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300万のメナス艦隊に対し、僅か25隻で圧倒的優位に戦闘を進めていた剣の如き封印艦隊。
ところが、剣の艦隊の中でも最大の性能を持つクレイモア
「なんだぁあああ!!?」
『ヒルトLRシールド過負荷、シールドジェネレーターダウン、再起動まで300秒。メインジェネレーター3番、4番を接続、出力最大。インサイドシールド緊急起動します。警告、艦首上部W233区画に被弾、一次装甲大破、レーザーセル201番から250番まで応答無し、オフラインです。W213、W232、W234区、隔壁閉鎖』
「なになになに!? 攻撃!? レーダーには何も映って無かったよ!!?」
攻撃は小規模でダメージは小さく、後部ブロックにある
それよりも、並の戦艦1,000隻分以上は強固なシールドが簡単に貫かれた事が問題だ。
メナス母艦型による荷電粒子砲の直撃にも余裕で耐える外部シールドブレードによる防御である。
それを、負荷を重ねてジェネレーターを落すのではなく、力尽くで撃ち抜いたのだとすれば。
『フィス! 普通じゃない小型メナスがいる! ステルスタイプ!!』
「対策してるっつーの! コントロール、光学観測で全周スキャン! イルミネーターに連動して全砲ぶっ放せ!!」
『メインオペレーターの命令を確認、光学スキャン、イルミネーター連動、攻撃スタンバイ』
混乱する
どうしてあの赤毛娘にそれが分かるのか、など色々疑問を持つフィスだったが、それらをスッ飛ばして管制
電波でも熱でも波でもなく、全艦に搭載されたあらゆる光学カメラが敵機の姿を
直後に艦の直上で敵影を捕捉し、オペ娘が目を剥いていた。
ほぼゼロ距離に突如出現したメナスを、当然の如く
途端に全砲が一点に集中。レーザー砲と
が、対象はメナス特有の高加速にて、砲撃の間を縫い紙一重で回避して見せる。
屈折するかのような鋭い軌道変更の連続は、誰かに似た動きだった。
それは置いといても、普通のメナス艦載機の性能とも思えず、フィスは咄嗟に相手の情報をデータベースと照合する。
結果は、案の定最悪だった。
「マジか……未確認の特機!? マリーン姉さん!!」
メナスとは数が多く非常に高性能で出所も分からない凶悪な兵器群であるが、何よりの
一般的に艦艇
小型メナスと大差無い性能の場合は既存の亜種である可能性が高いが、そうでなければ小型にして母艦型を遥かに超えた
艦艇型以上の火力、機動力、あるいはシールド出力を持ち、その上で特殊な機能を搭載しながら、小型メナスと同サイズ。
こんなのが混ざっていたら悪夢であろう。
夢なら覚めるのを待てばいいが、残念な事にそれは現実の
僅か2~300メートルの距離から荷電粒子弾が連続して叩き込まれる。
艦本体のリング型シールド発生器が最大出力で稼動しているが、その負荷は凄まじく、アッと言う間に別のジェネレーターへ接続が切り替わった。
メナス特殊機体は対空迎撃に対し50G以上の加速で上昇し、かつクレイモア
歪なヒト型のシルエット。表面装甲は他のメナス同様に生物的な曲線を描くが、同時に剥き出しの金属質でもあった。
しかしそれは、磨き上げられ遥かに洗練され滑らかになっている。
左右の肩部には腕の先端まで覆う三角形のシールドユニットを装備していた。荷電粒子砲を内蔵しているらしく、小さな砲にも関わらず威力、発射サイクル、と共に他の小型メナスとは桁違いだ。
腕部はヒトのような筋肉の構造を模すが、先端の爪は猛禽類のように鋭い。脚部は逆間接になっており、猛獣そのままだ。
そして、頭部は鋭利な兜を被るフクロウのようだった。
眼孔を鈍く光らせるメナス特機は、背中や大腿部のブースターから光を放ち、クレイモア
強力な
怒涛のレーザー砲撃も、メナスの後を薙ぎ払うばかり。
逆に、クレイモア
ここで、灰白色に青のエイムが真下から強襲する。
格納庫から最大加速で飛び出した唯理は、肩部に展開したレーザー砲とマニピュレーターに持ったレールガンを一斉射撃。
メナスの
それを、メナス特機は反転して回避、同時に両肩のシールド砲で強力な荷電粒子弾を見舞って来た。
「やるッ!!?」
単なる反射的な攻撃ではない、明らかに他の艦載機とは反応速度も
ロールで回避機動を取る唯理は、機体を振り回しながらも常に敵機を照準内に捉え攻撃を続行。
メナスも同様に攻撃と回避が一体化した動きを見せ、互いの尾を喰らう猛犬のように螺旋を描く軌道を競った。
50Gを超えた加速で、射撃と回避機動を繰り返しながら急激に間合いを詰める両機。
逃げる気などさらさらなく、弧は限りなく狭まりエイムとメナスの軌道が絡まる瞬間、
双方のビームブレイドが接触し、放出される荷電粒子が強烈に反発する。
メナス特機の盾の武装から伸びる、荒々しいビーム流。
弾かれそうになる唯理だが、お構いなしにブースターの出力を上げた。
メナスの特機は小揺るぎもしないが、その時唯理の視界の端で別の動きが。
肩の盾はひとつではない。もう片方からもビームブレイドが形成され、唯理は相手を突き離してギリギリで後退する。
と、回避したつもりだったが、一瞬遅く灰白色のエイムはシールドを吹き飛ばされていた。
「強いな……!」(スペックは全然向こうが上、スキルはちょいこっちが有利か!?)
メナス特機は両肩の兵装を唯理に向け荷電粒子弾を連発する。チャージが可能なのか、片方が少しの間沈黙していたかと思うと、長時間発射する強力な掃射攻撃をしかけてきた。
唯理は相手の畳み掛けるような攻撃に、微かな焦りか驚きのようなものを感じる。
生憎と立ち合いに際して相手の全体を捉えるのは洞察術の基本である。
とはいえ、チューンしてくれたエンジニア嬢には悪いが、メナス特機と唯理のエイムでは性能差があり過ぎた。
艦隊性能で圧倒してた所を艦載機に引っ繰り返されそうになり、艦載機の性能を武道の技術で補うとは、何とも皮肉な話である。
そんな事をのんびり考えていようものなら撃墜されそうな赤毛だが。
唯理は肩の後ろにあるランチャーからキネティック弾を全弾発射。直進6発、後方へ放たれ回り込む機動で周囲から迫る6発、それらに混じり灰白色のエイムも突撃。
メナス特機はすかさず荷電粒子弾を発射するが、唯理は正面からシールドユニットでそれを殴り返した。
防御シールドが吹き飛び、シールドユニットも大穴が開き大破するが、灰白色のエイムは最短距離からビームブレイドを振り抜く。
完全にメナス特機の反応速度を上回る一撃だったが、
「ッうえ!?」
驚かされたのは、斬りかかった唯理の方だった。
ビームブレイドは確かにシールドごと相手を斬ったが、装甲表面を浅く熔解させただけで、致命的なダメージとはならなかったのだ。
間髪入れずに肩部のビームブレイドを振るうメナスに、灰白色のエイムは胸部のブースターを吹かし沈み込んで回避。
メナスを蹴り飛ばして距離を取る唯理は、レールガンを撃ちっ放しにして相手に追い打ちをかける。
至近弾を受けシールドを落とされたメナスは、肩の盾で追撃を弾きながら後方に退がった。
そして人間がやるように片手を上げると、どこに潜んでいたのか複数の小型メナスが急接近して来る。
同時に、周囲の母艦型の動きも変わった。剣の艦隊から集中攻撃されるのもお構いなしに、特機への援護射撃を始めていた。
「やっぱり指揮官機か!?」
接近して来る雑魚メナスをレーザー砲で破壊し、突っ込んで来たリッパータイプを叩き斬る。
すぐに特機を追いたい唯理だったが、母艦型の艦砲と小型機の波状攻撃により前進は困難だった。
更に、ここでまったく予想外の事が起こる。
メナスは止まらない。退かない。相手を殲滅するまで襲いかかり、どこからか来てどこかに消える。そういう銀河の災厄だったはずだ。
それが、特機と共に一斉に後退を始めていた。残存する百数万隻と無数の小型メナスが、全てだ。
離れたところにいたヴィーンゴールヴ
単体でクレイモア
恐らく、1,000万隻の中から300万隻が先行して来たのも、その辺りに理由があるのではないか、と。
だとしたら、メナスの中でも何か変化が起こっているのかもしれない。
不意に、マリーンはこれまでの様々な出来事を思い返すが、今はまだ戦闘に集中しなければならなかった。どうせ確証にも乏しい。
メナス艦隊は砲撃を続け、被害を出しながらも秩序だって撤退している。
当然ながら、剣の艦隊もキングダム船団も、それに半壊した共和国艦隊にも追撃する余裕は無かった。
「…………拙いのを逃がしちゃったな」
レーザーを斉射する戦艦の直上で、灰白色に青のヒト型機動兵器は動きを止めていた。
そのコクピット内で、
汗が雫となって顎まで伝い、脳を酷使し過ぎて眩暈がした。ものすごく杏仁豆腐が食べたい。研究しなくては。
交戦したメナス特機は、性能以上に危険なものを感じた。
真に恐るべきは暴力の大きさではなく、小さなナイフを的確に使う者だ。やり過ごしようの無い殺意は、宇宙の崩壊と同意である。
故に、最速で全力で確実に抹消しておきたい
「まぁ……
ボヘッ、と気を抜く赤毛は、エイムを反転させて援護に来た部下達と合流。呆れるほど大きなクレイモア
メナス艦隊は一時撤退したが、まだ何も終わっていなかった。後続の700万隻と合流して再侵攻してくる可能性は高いだろう。
その前に、当初の予定を急ぐ必要があるのだ。
◇
メナス艦隊後退から2時間後。
テールターミナスの衛星軌道上プラットホームに着けたクレイモア
ほとんどの戦艦は格納庫の
全長24キロメートル、長方形が交差した形状のプラットホームには、戦闘艦や宇宙船が所狭しと接続されていた。
剣の艦隊なら地上に直接降りての搭乗案内も可能なのだが、全長50キロもの戦闘艦が大気圏に入ると大事なので、常識に照らして宇宙での受け入れ作業となった。
常識が船の足を引っ張るが、これは情報防御策として仕方が無い。
あまり意味無いかもしれないが。
「どう説明するつもりだ……? これだけの戦艦を『拾った』では、船長連中も
「どうするもこうするも……前にも言った通りに説明するつもりよ? 共和国が秘匿プロジェクトで研究していた大昔の船で、今は凍結されていた物だって」
探るようなディラン船団長の
クレイモア
と言っても、それはマリーンが船の事を知っていた言い訳にはなっても、肝心な「あの船は何なのか」という疑問には答えていない。
どうせ必要とならない限り知らんぷりを決め込むのだろうこの女は、と船団長は重い溜息を吐いていた。
ふたりは
クレイモアには3万人以上を収容する予定になっていた。酸素循環や排水処理容量でのリミットなら、最大で30万人まで受け入れが可能。
ヴィーンゴールヴは1,000万人から1億人が乗り込める。
他の戦闘艦も、艦体サイズだけではなく既存の船に比して居住区画の割合が大く取られていた。
そして、その戦闘能力を見れば、誰もが普通の船でない事は理解出来る。
マリーンの用意した方便では、問題は収まらないと思われた。
「共和国の物だった、なんて言ったら連中堂々と返還を要求して来るんじゃないか?」
「実際に共和国内にプロジェクトなんて存在していないんだから、所有の根拠なんて無いんだし突っぱねれば良いわ。それに、共和国が艦隊を狙うのは当然でしょう? 今更よ」
「内部的には共和国の研究対象、外部的には共和国云々も秘密にしておけ、という事か。やれやれだ」
この後緊急に召集が決まっている船長会議は大荒れだろう。
予想される展開を思うと、船団長は頭が痛い。
本業の仕事もどうしようかと悩んでいるのに。
「そちらこそどうするの? キングダムがあの様子じゃ、避難どころじゃないのではなくて?」
船団長がヒトに言えない悩みで頭を痛めている所に、今度はマリーン船長から問いかける。
船団のシンボルであり最大の超大型輸送船、キングダム2,500メートルについてだ。
同船はメナスの攻撃でボロボロになってしまった。さながら、肋骨を晒して漂流するクジラの死体だ。
現在は最低限の航行機能を維持するべく補修が進められているが、当然ながら他人の面倒を看ている余裕など無い。
元々住んでいた7万人と避難住民100万人は、クレイモアやその他の戦闘艦に分乗していた。他に損傷を受けた船についても同様だ。
修理の仕様が無いという船も少なくない。船団は、また船を多く失った。
「キングダムは追々修理するしかないだろう……。修理完了を待っていたらメナスの再侵攻までに脱出できない。当面フラッグシップはこの船にでも任せるさ」
船団には中核となる船が必要だ。決まっているワケではないが、それが慣例となっているし、また自然とそうなるものだった。
言うなれば船団の象徴であり、過酷な宇宙を旅する上での寄る辺となる存在だ。それは時として、住民の精神性や性格にまで影響を及ぼす。
大型輸送船キングダムは、その大きさや船員の搭乗数からして相応しい船だった。
だが、そのシンボルが無残な姿となった以上、次の旗船が必要となる。
代わる船としては、絶対的火力でメナス艦隊を正面から退けたクレイモアが順当と言えた。
新参者の上に出自不明の怪しい船だったが、この状況では武力が全てを補って見せるだろう。
また、船団や避難住民が期待を寄せているのも事実である。
「それなら、キングダムが復帰するまでアナタが船長をやったらどうかしら?」
「なに……? この船のか??」
ここでマリーン船長から船団長へ意外な提案がなされた。
思わぬ事で、ディランも一瞬どう振舞ったものかと迷ってしまう。
自分の目的の為には、この最大の戦闘艦の指揮権を握るのは願ったりではある。
だが都合が良すぎた。
「この船の指揮はお前がやるものだと思っていたが……。船長会議でも異議は出ないだろう」
なんと言ってもマリーンは、これほどの艦隊を引っ張って来た上にメナス艦隊を退けた功労者となっている。その旗艦艦長を務めるとなっても、船団の船長たちから表だって文句が出る事はあるまい。そもそも指揮権云々を他人にどうこう言われるのが筋違いなのだが、そこは船団という
船団内での政治的駆け引きなどもあり、艦隊の出所や入手経路を根掘り葉掘り突いて来る者は出ると思われるが。
「このまま船団はアナタが指揮を執るんだから、フラグシップに乗る方が格好つくでしょ。
それに正直、今のパンナコッタでさえわたし達は持て余し気味だもの。この船は大き過ぎるわ」
困ったように微笑む美人船長だが、それは単に船体の大きさを指したのではあるまい。
かつてマリーンは共和国で複数の艦隊を一手に指揮するフリートマネージャーを務めていた事もある。実質的な方面総司令だった。
そんなマリーン船長が手に負えないというのも、無理からぬこと。
およそ一個人が持つには大き過ぎる力だ。例え国家でも同じ事だろう。
銀河に与える影響、無数の人間の思惑、力を振るう事の責任と振るわない判断と責任。
巨大過ぎる力故に、それに纏わる全てはあまりにも重いものとなる。
そんな戦艦の全権限を持つ村瀬唯理とは、支配者か、管理者か、あるいは真に艦隊を指揮するべき者か。
「『その気があるならお任せしていい』って、
出自の事は伏せているが、必要上唯理に
剣の艦隊は厳格にクリアランスが定められている、と言う事で、艦長交代などは簡単に出来ないと船団内にもアナウンス済みだ。
その真実は、艦長を決めるたびに赤毛スプリンターが裏でこっそり走り回らねばならない、と。
面倒な事だが、唯理に全権限が集中しているなどと、断固秘密にしなければならない船団の超トップシークレットである。
ディラン船団長は以前から知っていたが。
マリーンはその事に気付いているような気もするが、実際はどうか。
疑心暗鬼になりそうなディランだが、相手は微笑みの下の本心を悟らせたりしない。
『同意した』、という言い方からすると、クレイモアを船団長に任せようというのはマリーンの発案だろう。
何か試されているのか、あるいは目的があって利用するつもりなのか。
面倒事を回避する囮のつもりなのかもしれないが。
「…………分かった、この船は預かる。彼女の事も最大限秘匿するつもりだが、戦艦の運用で協力してもらうかもしれないぞ」
「艦隊も基本的にあなたの指示で動く事になると思うから、他の船長たちも納得いくよう上手く使ってちょうだい」
とはいえここで引き受けないという選択肢も無く、ディラン船団長はクレイモア
同時に、キングダム船団も当面はクレイモア
ディランとしても、これでしばらく上に言い訳が立つ。
軌道上プラットホームにはキングダム船団以外にも多くの宇宙船が接続していた。メナス艦隊の一時撤退を受け、避難民の収容に来た船などだ。
自分ひとり逃げ出そうとする者がいる一方、危険を冒してでも自分に出来る事をしに来る者もいる、という事だろう。
それでも、テールターミナスやターミナス星系には多くの住民が残る事になっている。メナスの攻勢を目にして、これなら惑星に引き篭もっていた方が安全だと脱出を諦める人々も一定数いた。少なくとも惑星内なら窒息死したり凍死したりゼロ気圧で血液を沸騰させて死ぬ事は無い。
脱出希望者がほぼ全員宇宙船に乗れたのが、せめてもの救いか。空前絶後の巨大戦闘艦、ヴィーンゴールヴ
クレイモア
物資は積み込めるだけ積み込んでいる。ワープ機能の無い小型ボートや宇宙船の残骸、スクラップと化したヒト型機動兵器も、格納庫の容量に物を言わせて次々放り込まれていた。そのまま再利用しても良いし、素材にしても何かしらに使える。
これも一度通った道なので、パンナコッタの娘たちは戦闘艦の間を飛び回り、それを手助けしていた。
「といっても機材全然足りないし、時間も無いし。しばらくはAIオペレーションとネザーインターフェイスで直接操作するしかないよね」
「艦橋デカすぎるし4つも5つも面倒見てらんねーよ……。メイン、サブの第二、戦闘艦橋、航海艦橋、艦隊指令艦橋。そこからの機関室やら機関室やら機関室とのコントロール経路……。ぜってー10時間そこらでやる作業量じゃないって、シスオペ100人がかりで一月とかかけるってぜってー。これ空間観測室とか環境シミュレーター室とかも含めたらどんななってしまうんだ」
クレイモア
面倒な物を持って来てしまい、後ろを行く唯理としても申し訳ない事で。
だが、これからもっと面倒な事になるだろう。
緊急手段だったとはいえ、副作用が大きすぎる。
共和国艦隊やら連邦艦隊の前で無双してしまった以上、国家の存亡を賭ける勢いで襲ってくるのは確実な未来だった。
今回はクレッシェン星系の時と違って、さっさと逃げるワケにも行かない。
その時が来たら船団としてはどう動くのか、船団の人々や避難してきた住民はどう思うのか。
その時自分はどうするべきか。
選択肢は多くないのでそう悩まないと思うが、気が重い事に変わりも無かった。
そんな事を考えていた矢先、まだろくに稼動もしていない
急ぎ艦内トラムで移動した三人娘は、未だに機材のケーブルや部品が剥き出しになっている艦橋に入る。これでも最低限は機能しているので、レイアウトは後回しだった。
フィスも自身の眼帯型
「連邦艦隊に……あん時のブタだぁ!? 連邦がこんな共和国の端まで来て何してやがる!!」
「だから……船、を渡せって事なんじゃないの?」
艦外カメラが捉えていたのは、軌道上プラットホームから5万キロの距離まで接近している連邦艦隊だった。
その艦隊から送られてくる通信の映像には、以前にクレッシェン星系で見た人物の姿が。
連邦の軍人、サイーギ=ホーリー。
恐らくこの宙域にいる誰よりも、唯理について多くを知っているであろう男。
それが、獲物を嬲るような顔でディスプレイの向こうから睨め付けていた。
「…………まったくご飯食べる暇も無い」
誰に聞かせるでもなく、鋭い貌でひとりごちる赤毛の少女。
これから死ぬほど面倒で大変な事になりそうなのに、ようやく目が覚めてきたような気がするのは何故だろう、と。
そんな事を思いながら、エイミーとフィスを追い抜き
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