44G.ハイドラビット トリップルート

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 小惑星帯とはいえ、ハイスペリオン星系最外縁のそこは、それほど空間密度も高くない。

 4隻の小船団は大小の岩塊漂う小惑星帯を抜けると、23Gで再加速を開始した。

 パンナコッタの加速力からするとそれほど早くもないが、船足を揃える都合上、これは仕方が無い事だ。


「それよか問題になるのは艦隊のスキャンをわす事なんだよな。基本的に導波干渉儀……ウェイブセンサーは何でも捉えるから」


「考えてみりゃすごいセンサーだよね。回避なんて出来るもんなの?」


 未だにリードを着けられたままの唯理は、フィスの横で小首を傾げていた。

 赤毛ウサギが座っているのは、オペレーターシートの横にあるサブオペレーター用の席だ。

 唯理はこうして、折に触れ現代における操船システムを勉強している。

 最上位権限レベル10でコントロールを奪うような事は二度とするなと睨まれたが、それは置いといて。


 導波干渉儀ウェイブセンサーはこの時代で宇宙を往く為の基幹システムのひとつだ。

 その原理的に捕捉できない物は存在せず、必要とあらば粒子ひとつに至るまで探知が可能だ、とされている・・・・・


 無論、万能なシステムなど存在しない。何事にも例外はある。


「ま、誤魔化す方法は幾つかある。ひとつはECMを使ったジャミングな。何かしら信号送り込んで向こうのシステムを直で騙すとか。コントロールを奪うのが一番手っ取り早いけど、当然ガード固いから代わりにレーダーデータにニセ情報流すってのがよく使う手だ。

 でもこの方法だと攻撃してますって言ってるようなもんだし。事実してんだけど。

 そうなると、敵が増援山ほど送り込んで来るのは当然だわな。なんぼ高性能な演算フレームを持っていても、星系艦隊規模とか相手に電子戦とか無理だっつーの」


 今までも対電装備ECMによる電子攻撃で相手のセンサーを誤認させた事はあった。しかし、同時にこれは自分の存在を教えるようなものであり、また戦闘距離外で用いるのに適した方法ではないとシステムオペレーターは言う。


「お次がステルスだな。ウェイブセンサーは物体の出すを捉えるシステムだから、こっちも逆位相の波を出して中和したり大きな波に紛れ込ませる事で相手の波形解析から隠す事が出来る。

 でもそれってよっぽど上手くやらないと周辺の波に比べて違和感が出るんだな、これが。周辺差異を解析するアルゴリズム使えば異常として検知されるし、手練のオペレーターなら勘で見付ける。

 でかい波に紛れるったって、そんな都合良く見つかるもんじゃないし、ヘンな動きしてたらどっち道見つかるだろ? どっちもバクチ要素があるんだよ」


 ちなみに、この説明は一般論――――――情報オペレーターやウェイブネット・レイダーの――――――であり、フィス程の玄人になると合わせ技を使ったり相手の解析能力を想定した自作の対抗アルゴリズムを作ったりと工夫する。

 演算フレームやプログラム任せにするのは素人でも出来る、と自慢でも何でもない風に言っていた。

 だがそれでも、このパンナコッタⅡをトムナス恒星系ビルクルス小天体群で発見した際には、追いかけて来た星系艦隊に捕捉されている。


「んで比較的強力な手段がカムフラージュだ。原理はステルスと同じだけど、こっちは自分から出る波を中和するんじゃなくて、別の物に偽装する。敵の友軍とか、単なるデブリとかにな。

 それにステルスと違ってアクティブセンサーを利用するだけじゃない、シンセサイザーやミキサーとか専用のシステムを使うから偽装幅が広いんだわ。

 ただ演算フレームへの負荷が大きいから高性能のを用意するか、専用のフレームを入れた方が良い事。広域に対応するとなると、アクティブセンサーとか出力システムも増設する必要がある。

 と、システムが大型化するのが欠点だわな」


 電子戦闘ひとつ取っても21世紀とは大分違うわな、と感心するやら危機感を覚えるやらの赤毛娘。

 仕方が無いとはいえ、今までは教えられたまま良く分からず使っていた己にゾッとさせられていた。


「この船で出来たりする?」


「いや無理。基本性能はバカみたいに高いけど、所々で古臭いんだよこの船。インターフェイスとかセンサー回りとか結構入れ替えたしな」


 唯理の質問に首を振るフィス。

 パンナコッタⅡ、バーゼラルドクラスと分類されるこの戦闘艦は、デタラメに高出力なジェネレーターに頑強極まりない船体構造、圧倒的加速力を誇る推進機関、極悪な搭載兵装、高精度なセンサー、高性能な演算フレームと、現代の水準を完全に無視したスペックを持っている。

 しかし、古い船だけあって現代の戦術に対応できてない部分があった。

 特に、情報戦は秒進分歩だ。船の改修ではフィスも随分手間をかけさせられている。

 その際にカムフラージュ機能も搭載すべきか考えたのだが、そうなると外装を大規模に改造する必要があり、高価なR.M.M装甲が無駄になるので断念していた。必要とあれば外装の上から増設する事も考えるが。


「でも、一緒に来た『トゥーフィンガーズ』はあれステルス能力に特化した船なんだ。もちろん、ステルスってもカムフラージュ込みな。

 あそこの船長、詳しい事は知らないけど船団に来る前からそういうのは得意らしいぜ」


 フィスが船橋ブリッジ周りの舷窓キャノピーに目をやる。

 そこには、円筒形の船体に両舷へ武装コンテナを接続した、150メートルクラスの宇宙船がいた。

 ギラギラした初老の女性、ジェレミー=リード船長の『トゥーフィンガーズ』だ。

 なんでも、船の本体はジェネレーターとメインフレームとアクティブセンサーアレイで埋め尽くされており、居住性は非常に悪いとか。

 キングダム船団に来る前は海賊のような事もしており、船はその時からの仕様らしい。

 フィスはリード船長の経歴を知っていたが、あえて話す事もないと思い何も言わなかった。唯理もその辺の空気は読む。


 それに、トゥーフィンガーズという船が今回の要というなら、余計な事をして作戦を危うくさせる必要もないのである。


 トゥーフィンガーズは自分だけではなく、同行する複数の船も同時に偽装する能力があった。

 速度や機動で連携する必要はあるが、被発見率が大きく下がるのは非常に有難い事だろう。


 有難い事だが、ここで唯理にフとした疑問が浮かんだ。


「でも……高精度で導波干渉儀から隠れるようなヤツがいるなら、ワープ直後とか危なくない? 回廊繋げた先にそんな船が居たりすると、お互い拙いんじゃないの?」


 繰り返しになるが、ワープの為に導波干渉儀は必須の技術となる。電波や光学観測は光の速度を超えない為、ワープ先の空間を事前に探査するのに必要となるのだ。

 だというのに、導波干渉儀で発見出来ない存在など危険極まりない。

 だだっ広い宇宙空間で偶然激突する可能性などゼロに等しい、また小惑星などにカムフラージュしていれば事前にワープする側が回避する、とも考えられるが、これが敵性だとまた別意味で危険となる。

 ワープ直後のトラップや待ち伏せなどは、最も懸念すべき対象だろう。


 しかし、そんなのは2,500年も前から来た少女に心配されるような事ではないらしい。


「だから前にもワープ直前にプローブを先行させた事があっただろ? 干渉儀で情報拾っても解析し切れてなかったり、ワープ先に何か飛んで来る事が無いとも言い切れないしな。

 時間がある時はプローブ飛ばして、用心の為にシールドも全開にする。

 ここまでやっても事故る時は事故るし、後はもうアレだ、偶然性の神に文句垂れるしかないだろ」


 最終的にはアナログなのか、余裕がある時はワープの為に作った圧縮回廊へ小型探査機プローブを先行させ、光学や熱や電磁波といった観測で直接現場を確認するのである。

 当たり前だが、ステルスもカムフラージュもデータ的に偽装するのであって、実際に姿を消せるワケではない。

 直接視認すれば一発で確認出来てしまうのだ。可視光線をかく乱する技術も無くはないらしいが。


 フィスは無宗教主義者だ。神の存在は否定しないが、何かしてもらおうと思わない。逆に、有り得ない可能性を実現するような事はやめろ、と文句を言いたかった。99パーセントの確率をスカすとか0.1%の事故を起こすとか。

 とはいえ、その有り得ない偶然でワープ直後に小惑星流にぶち当たり、紆余曲折を経て赤毛娘と出会ったのだから、本当に偶然性の神は何をするか分からないと思う。


「…………フィス?」


「んあ…………? あ! そうそうアレだ! あと一応言っとくけど――――――」


 いつの間にか、紫髪の吊り目オペ娘は、隣の赤毛ウサギに見惚れていたらしい。

 どこぞのメガネエンジニアの物言いではないが、本当に不思議な魅力がある少女だと思う。

 見た目とのギャップが目立つ部分もあるが。


 そんな恥ずかしい事を思っていたなどと言えず、フィスは慌てて不思議そうな顔をする唯理から目を逸らし、ついでに話も逸らす。


「――――――まだユイリがレーダー解析する事は無いと思うけど、ステルスを自力でやる生き物がいたりするから注意な」


「………『生き物』? って、真空中に? 宇宙船とかエイムに乗っているんじゃなくて??」


「知らんかったか? 小惑星に寄生してたり船の残骸とかのデブリに棲みつくクリーチャーがいたりするんだわ。しかもそいつらの中には、どうやってるんだかウェイブセンサーをステルスみたいに誤魔化すヤツもいる。

 挙句に自力でワープまで出来る生き物がいるんだぜ。『アブソリューター』ってな。ワープだけじゃない、ヤバい奴だと艦隊を襲うようなのもいる…………。

 見付けたらまず回避した方が無難なバケモンだ。宇宙における超生物って言われてら」


「そんなのいるんだ…………」


 苦し紛れのトピックスだったが、唯理には割と衝撃的な内容だった。

 ノマド、海賊、メナス、銀河先進三大国ビッグ3オブギャラクシー、ドミネイター、国連平和維持軍UNPKDF宇宙方面艦隊Starship fleet、それに超生物『アブソリューター』。

 何とも飽きの来ない宇宙である。


「まぁアレだ、アブソリュータなんていたら戦争どころじゃないわな。

 そのアブソリュータにしたって、ステルスもカモフラも完璧じゃない。さっきも言ったけど、プローブが警報代わりにバラ撒かれている事もあるしな。

 制圧エリア以外でも、パッシブな光学センサーでブースター光なんかが運悪く見つかる可能性もある。その場合は向こうの通信量や動きで予想するしかないワケだがー……」


「だから常時艦隊の動きをモニタリングして、急に動きを変えれば見つかった可能性を考えて要警戒、逃げ支度と…………」


「そういうこった」


 最終的には不断の努力が必要という人類史始まって以来の真理に到達した所で、フィスが唯理へのレクチャーを再開した。

 殺伐とした内容ながら仲が良さそうな少女たちの姿に、満足そうな船長のお姉さんは船橋ブリッジを出る。

 予定では忙しくなるまで少し時間があり、その間に新しいお風呂で休む事とした。


                 ◇


 ハイスペリオン星系到着から、2時間後。


 加速し続けた末に、パンナコッタⅡの小船団は時速600万キロもの速度に到達した。これは光速の180分の1に相当する。

 恒星の光を返す細かな塵が、雨筋のように後方へと流れていた。

 そんな宇宙塵さえ直撃すれば宇宙船を大破せしめる速度域で、船を守るのは強固なシールドとレーザー砲、そして導波干渉儀などのレーダーシステムだ。

 もっとも、レーザーは使用厳禁とされていた。目立ち過ぎる。障害物があっても、回避を最優先としていた。シールドも可能な限り反応させない方がよい。

 カムフラージュされているとはいえ、被発見率が高まるからだ。


「スキャン終わった、11番惑星34hd地点に障害無し。引力圏走査、スクワッシュドライブ湾曲率修正、圧縮回廊上に障害物無し。シミュレート問題無し。データ送るわ、チェックよろしくー」


『データ来たぜぇ。うわこんな曲芸みたいなルート送ってくるなよ。チェックめんどくせぇって』


『こんな回廊作れるのかコレ……。オヤジさん、やっぱもう少し刻んだ方が……』


『こっちも人任せにしないで出先は確認しておくんだよ! 飛び出した先に惑星が目の前いっぱいなんて二度とごめんだからね!!』


『プローブを送っている暇などありませんからね。ダイレクトエントリーですから。各船も現在位置の誤差修正を忘れないでください。ワープアウト時に離れ過ぎていると致命的な事態になりかねません』


 そんな高速航行の最中さなか、パンナコッタと小船団の3隻は短距離ワープの準備をしていた。

 フィスがワープ地点と移動ルートを設定し、そのデータを他の船に送る。

 よほどの大船団にならない限り、同時にワープする船は同じデータを用いる事になっていた。さもなくばワープアウト座標のズレが大きくなるのだ。

 出発地点が同じでも、少し角度が違っただけで52億キロ先では全く違う所に出てしまう。

 船団での移動で、最も難しい事のひとつだ。


 他にも、同じデータを使い回すメリットはある。

 パンナコッタのオペレーター、サーフィスの仕事は一流だ。星系内で様々な引力圏が入り乱れる中、圧縮回廊が影響を受けて曲がるのを計算に入れルートを設定してあった。

 並みのオペレーターなら5回から10回に分けて行うショートワープを、一回に纏めている。


 しかも、今回はダイレクトエントリーだ。

 本来、ワープを行う際は一旦停止し、目標地点を念入りに走査スキャンし、綿密な計算を時間をかけて行い、ワープシステムやシールドシステムの様子を見ながら大電力を蓄積し、スクワッシュドライブで圧縮回廊を形成し、可能なら直前に小型探査機プローブを送り込み、ルートと移動地点の安全を確保して初めて決行するのである。

 これをシーケンシャルエントリー、または単にノーマルエントリーと言った。


 しかし今回は、一切減速せずに圧縮回廊形成と同時に飛び込む。


 理由は、言うまでもなく時間が無いからだ。

 ワープの為に一旦停止すれば、再加速にまた時間を取られる。発見される可能性も高まるだろう。

 ダイレクトワープは自分の移動速度とワープ時の移動地点も計算に加えなくてはならない為、ルート設定の計算難易度は10倍にも跳ね上がる。航宙法でも禁止されているほどだ。

 そんな計算を移動しながら、しかも重力波が入り乱れる星系内で実行できるシステムオペレーターなど、船団どころかひとつの星系にだって何人もいなかった。

 フィスのワープデータをダブルチェックをさせられる各船のオペレーターには気の毒な事だが。

 なお、クレッシェン星系レインエア宙域では、メナスに尻を追い回されていた為に使えなかった。いくらパンナコッタのオペ娘が優秀と言っても限度がある。


 文句やら怒鳴り声が入ってくる共有通信を、一対一のプライベートモードに切り替えるマリーン船長。

 相手は、重武装船『バウンサー』の小型マッチョ、ウォーダン船長だ。


『さて、ここまでは上手くかわせたようだが……流石にワープで戦闘宙域のど真ん中に飛び込めば、何かしら引っかかるじゃろう。

 例の封印された艦隊とやら……お前さんがデマを並べる理由はないと思うが、そんな都合のいいもんがあるとは正直信じられんな』


「でも、ここまで状況が悪ければ、試しても試さなくても同じじゃないかしら? ターミナス星系は壊滅して、キングダム船団もどうなるか分からない。

 それなら、船団が助かる最も可能性の高い選択肢を取るのは、とても合理的な判断だと思うのだけど」


 厳しく言うヒゲ面のマッチョ船長だが、マリーンは穏やかな態度を全く崩さなかった。

 万事この調子で、マリーンは船団の船長会議で一目置かれる存在となっている。

 虫も殺さないような顔をして判断は冷静冷徹、情を見せながら合理性重視、恫喝などで意見を変える事も無く、時に大胆不敵な行動も平気で取る。


 そして、この船長にしてこの船員あり。

 元特殊戦の兵士で海賊やイリーガルな相手も平然と殴り倒すメカニック。

 一見して育ちの良さそうなお嬢様だが機械狂のエンジニア。

 何かやらかしてお尋ね者となっているやる気の無い船医。

 以前は大人のサービス業に関わっていた危険な双子。

 危険だからと法で禁止されているダイレクトワープを苦も無くブッ込んでくるオペレーター。

 相手が何者だろうと突撃上等で殴り込むエイム乗り、など。


 パンナコッタには可愛い顔してクセの強いのが揃っていた。

 有能だからこそ信頼も得られるのだが。


『まぁ……そうじゃなぁ。それならワシとこの「バウンサー」も気張るとするか。正規軍を相手にするのは久しぶりだ』


「ブラウニング社長のご家族も救出しないといけないけど、貴方たちには他にも重要な役目があるわ。まずは無事に切り抜ける事を優先してちょうだいね」


 通信の切り際に出たマリーンの科白セリフに、ウォーダン船長は少し身構えたような姿を見せていた。一体今度は何を企んでいるのかと。

 今回、この決死隊に近い小船団の抽出は志願とマリーンによる指名、半々とされている。実際にはマリーンの狙い通りの人選だったが。

 そして、この一見ヒトの良さそうな美人の船長は、時折何らかの謀り事をしているのだ。

 それが船団や身内の不利益にならないからこそ不興も買わないのだが。


 信頼と信用は別物という事である。


「マリーン姉さん、3隻ともスクワッシュドライブのトリガー同期した。今のルート使えるのは、あと60秒」


「それじゃ手早く済ませましょう。他の船もタイミング外さないようにしてね。やり直しになるから」


「スクワッシュドライブシーケンス開始ー。スノー、ルートとカウンター送るぜー」


「みんな、40秒後にワープするから準備してねー」


 各船の足並みが揃い、ワープの最終工程に入った。

 船橋ブリッジの舷窓にシャッターが下り、その代わりに空中へ映像が投影された。人間の目には見えない引力圏や電磁波、彼方の飛行物体のコースが簡略図で表示される。

 マリーンが船内通信インターコムで船員の娘達に準備を指示。

 双子の少女が自室に引っ込みシーツを被り、船医は特に何もやる気が無い様子でスモークを吹かしている。

 外壁付近の通路も分厚いブラストシールドで封鎖された。

 下部の格納庫では、赤毛娘がヒト型機動兵器のコクピット内で待機中。

 メガネのエンジニアとメカニックの姐御も、エイムの緊急発進に備えている。

 赤毛娘の部下であるエイム乗りふたりと、この作戦の為に船団から抽出された自警団ヴィジランテのチームもワープ時の備えに余念が無い。

 あらゆるシステムが全力で回っている為、事故を用心して全員が船外活動EVAスーツを身に着けていた。


 他の船も、同じような状況だ。


「ジェネレーターアウトプット50、スクワッシュドライブコンデンサー、フルチャージ、起動数値クリア。シールド出力最大。

 通信、生命維持、レーダーシステム、問題無し。各部署問題無し。他の船もスタンバイ出た。マリーン姉さん」


「了解。それじゃ、カウントはじめて」


 4隻の船が航法システムを同期させ、搭載人工知能AIがカウントダウンを開始した。

 空中投影されたモニターのカウントがゼロになると同時に、コンデンサがスクワッシュドライブに接続コンタクト。莫大な電力が流れ込み、50億キロもの空間を歪める。

 そして、時速600万キロオーバーを出す小船団は、圧縮空間の境界面に触れた直後、50億キロメートルという長大な4本の矢と化し光速を飛び越えた。

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