パルマ
コンタクト・ドライブシステムからリンクする電神・秋水の偵察映像にて、デュアン総督が搭乗しているスペースシャトル周辺から白い気体が噴出しているのが確認できた。
「おい、教授。今にも打ち上げるかもしれないぜ。どうも到着が遅すぎたようだな。液体燃料はもうすでに注入済みのようだ」
「何だと! デュアンを……娘の家出を今すぐ止めろ! やめさせろ!」
「そう言われましても……」
僕はナノテク・コンタクトから脳に直接送られてくる視覚情報を伝えただけだが、ゴールドマン教授は次第に興奮して詰め寄ってきた。
「お願いだ、オカダ査察官! あの娘を君に嫁入りさせてもいい。私が保障するから! とにかく何とかしてくれ~!」
「そんな! 総督を妻に!? お断りいたします」
「何ぃ~?! どこに不満があるというのだ! 言ってみろ!」
教授は僕の襟元を掴んで場違いに怒り出した。格闘で折れた肋骨が痛むのに、もう本当に勘弁して欲しいよ。
「オカダ君、うかうかしてると取り返しの付かない事になりそうだぜ」
カクさんが教授と僕の間に割って入り、いざこざをなだめた。
「まあ、まあ、まあ!」
左右から登場したアディーとチトマスも教授の両腕を後ろから手に絡めて、胸に引っ付けた。
「ぐぐぐ……モデルのような自慢の娘なんだ。君には、本当にもったいないほどの……」
「分かったよ。ちょうど電神・バラクーダが付近の水域に到着だ。死なない程度に引き止めてやるよ」
コンタクト・ドライバーの本領発揮だ。電神・秋水をフルオートで飛行させると、コントロールを水中型電神・バラクーダに移行する。ナノテク・コンタクトには視覚情報が何も送られてこなくなったが、代わりに水深とソナー情報が視界の片隅にアイコンのように浮かび上がる。バラクーダの電磁推進を停止させると潜望鏡深度まで浮上させた。
「艦対地ミサイル、ポラリス発射!」
細長い灰色のクジラのようなシルエットをした電神・バラクーダが、潮を吹くように
白い尾を曳きながらポラリスが飛翔すると湖岸の人々は大いに沸いた。そして弾頭部分が分離すると、クラスター爆弾を雨のように降らせたのだ。
次の瞬間、宇宙センターから延びる全長4㎞のロケットスレッドに通常弾頭が次々と命中し、広範囲に渡って大爆発を引き起こした。
シャトルを天空に導く夢のパイプ軌道は、デュアン総督の眼前で脆くも音を立てて倒壊したのだ。
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