ガブリエラ

 オーミモリヤマ市の奴隷解放革命は、デュアン総督の亡命によりB級奴隷側の勝利がほぼ確定した。アマゾネス達が最後の抵抗を試みているが、男性陣の勢いは止まらないだろう。革命成就は時間の問題だ。


 シュレムとDr,メガネは救護活動で大忙しだ。ランドルトだけでは心許ないので、スケさんを護衛に置いていった。サブリーダーの左衛門を始めとする他のアニマロイド軍団も付いているので、任せて安心だろう。


 僕とゴールドマン教授は、サイドカー付きのバイクに乗ってビワ湖を目指すが、各バリケードのゲートが外敵防御にきっちり閉じられており、なかなか先へと進めない。カクさんとボニーと蔵人、それに照間とルイーズが抜け道を探しに奔走する。


「あのケプラーモクズガニの侵入を恐れての事なんだな」


 バイクを停車し、ゴールドマン教授に向き合い、問いかけてみる。


「そうだ……ゲートは今、ほとんど開く事はできない。装甲殻類カルキノスに知性は存在し得るが、まるで人類がピンチの時を狙ってくるかのように襲いかかってくるのだ。大潮の日に一斉に産卵する事からも、何かマザーコンピュータばりの中央司令塔があるのかもしれん」

 

 中々面白い考察だと思った。カルキノスを指揮統制する存在ってどんな奴なのか。


「もう一つ訊いていいかな」


「ん……何だ?」


「俺がこの星に到着したばかりの時、ゲートは全て解放されていたんだ。湖からモリヤマ駅まで、ほぼ無人でフリーパス状態だったのはなぜ?」


「ああ、確か……あの時はトビエビ大発生の日だったはず」


「うーん、そういえば確かに」


「大発生の日にはケプラーモクズガニは巣から出てこない事になっている。それにゲートを開放しておかないと、トビエビの大群がうまく街から出て行かないという訳さ」


「そういう事だったのか……」


 まだまだこの街のルールを知らない。新参者には知らない事だらけなのかもしれない。

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