フィラゴリア

 集まったアマゾネス達による即興パーティーが、ささやかに開催された。アルコールは用意しなかったが、それぞれの道に戻ったメンバー達の、久々の再会に女子寮は大いに盛り上がったのだ。

 新入りともいえるチトマスに注目が集まった。彼女の僕に対するリスペクトぶりには、凄いものがある。何かと褒め称えられ、持ち上げられて、こちらが恐縮するほどだ。もはや僕の信者と言っていい。男はB級奴隷だと色眼鏡を通して見られるこの世界において、逆に尊敬の眼差しで見られる事自体が貴重なのだ。もっとも僕の場合、地球から来た植民惑星査察官という事でケプラー22bでは最初から特別扱いされていたのも事実ではあるが。


「オカダ査察官はすばらしい。ゴールドマン教授の言っていた通りの人物だった。自ら奴隷身分の目線に立つ事で、底辺からこの世界の秩序を達観しようとする考えなど誰が思い付こうものか」


 チトマスは皆の前でそう話すと、さっさと僕の右隣の席に陣取った。そしてサンドイッチやミートパイなどをかいがいしく世話を焼くように皿に取り分けてくれる。飲み物も減らないように気を遣って注ぎ足してくれた。左隣にはネコミミの妙に若い格好をしたスケさんが来て、年甲斐もなくゴロゴロと甘えたような声ですり寄ってくる。さすがは甘え上手な元ネコ科のアンドロイドだと思い知らされた。


「オカダさん、後で算数の分からないところをボクの部屋で教えてよ」


 ブリュッケちゃんもお行儀が悪い。食事中にも関わらず、僕の背中に体全体を使ってのしかかってきた。柔らかで壊れそうな、それでいて暖かい感触がひしひしと伝わってくる。


「……オカダ君、私の手料理はお口に合いますかな?」


 更にはマリオットちゃんまでブリュッケちゃん越しに両腕を首に絡ませてきた。最初は気にしていたシュレムも、ここまでくると半ばあきれたようだ。ピザの欠片を手にアディーと楽しそうに会話をはずませる様子を見て、僕は何だか安心した。

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