アントニア
やっとシュレムと目が合った。何だか照れ臭いな。自宅にお邪魔したのは初めてだし、彼女のプライベートが垣間見えてドキドキしっぱなしである。ぬいぐるみ的な物が好きなようでブタのキャラクターが所狭しと置いてあったのが意外であった。チャンスがあればシュレム部屋も覗いてやろうかと思っていたが、婦警が二人もいるので気が引ける。それにしても女の子の家って、いい匂いがするもんだなぁ。
「やあ、シュレム。あの時以来だね……」
「ええ、へこたれずに頑張っているそうじゃない」
我々のいいムードの会話を耳にして、チトマスが歯ぎしりをしている。ブリュッケちゃんが一番奥のソファに座っていた僕に飛び付いてきた。
「オカダさん、ボクもようやくここの生活に慣れてきたよ。オーミモリヤマ市への引っ越しは、正直不安だったけど、シュレム姉さん、それにマリオット姉さんと一緒に暮らして楽しいよ」
「そうか、よかったな。こっちにはアディーとチトマスもいるし安心だと思うぜ。学校の方はどうなんだい?」
三つ編みにしたブリュッケちゃんは僕の横にピッタリとくっ付いて座り、笑顔で答えてくれた。
「うん、転校生にもクラスの皆は優しいよ。ボクがヒコヤンの娘だってばれちゃったけど」
「人気者はつらいな、気持ちは分かるよ」
シュレムはあきれた顔で対面キッチンからコメントした。
「誰が人気者だって?」
彼女はパーティー用のサンドイッチの盛りつけに忙しそうだ。料理はもちろんマリオットちゃんが手際よく作っているので、シュレムは邪魔にならない程度にサポートする役目だ。さすが姉妹だけあって、息のぴったり合ったコンビネーションである。
「私も何かお手伝いを……」
冷凍ピザ解凍のためスケさんが電子レンジのスイッチを押した瞬間、レンジが煙を上げて爆発した。キッチンがちょっとしたパニックとなる。
「わわわ、私まだ力加減が分かってないのよね」
「そういう問題じゃないと思うが」
つまみ食いにきたカクさんのツッコミに、スケさんがしょんぼりとした。
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