ロシア
僕は目で合図すると、ホールスタッフの女性に自分のアルミケースを持ってきてもらった。
地球人の歓迎および凱旋パーテイーだというのに妙に浮いていたが、ここにきてやっと注目の的となったのかな。冷凍保存されたサバクオニヤドカリの巨大な目玉を素手でうやうやしく取り出すと、短い歓声が沸き起こった。そのままケースに戻し、デュアン総督の前で側近に鑑定してもらう。
「ほぅ、今まで誰も成し遂げる事ができなかった、成功率0%の……サバクオニヤドカリを倒し、その禍々しい目玉を証拠に持ち帰るという難題を、そなたは見事にやり遂げおったか」
デュアン総督は座ったまま、しげしげとケースの中身を眺めていたが、何を思ったのか足で乱暴に蓋を閉めた。
「臭い! 胸が悪くなる。腐りかけた不気味な物はもうたくさんだ」
「そんな物のために、こちらは多大なる犠牲を払ったよ」
「……本当に私が与えた武器だけでバケモノを倒せたのかな」
「まあね、俺一人の力じゃないけど」
デュアン総督は高価そうなフルートグラスに、なみなみと注がれた薄紅色のスパークリングワインを一気に飲み干すと、わざと床に落とした。会場にガラスが砕け散る鋭い音が響き渡り、一瞬辺りが静まり返る。
「嘘をつけ! オカダ査察官! この目玉は死んで朽ち果てかけた
「何を……! 間違いなく生きている個体からだ。シュレムやアディーも見ているはず」
「オーミモリヤマ警察署のアディー巡査にビデオ録画を依頼していたゆえ、証拠はここに残っているがな」
デュアン総督が記録媒体を、大きく開いた胸元から取り出した。
「ちょっと待て、アディーは俺達の行動を逐一記録していたのか!」
アディー……彼女なら悪気もなく総督の命令通りに動くかもしれない。我々を油断させ裏切ったのなら相当な腕利きスパイだ。
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