ヴェーリンギア
「ブリュッケちゃん、俺の話をよく聞いてくれ。一度、出身のオーミヒコネ市までKR線で帰ってもらう。もちろん一人じゃない。シュレムとマリオットちゃんも一緒の予定だ」
「二人に家まで送ってもらうって事なの?」
僕はシュレムに頼んで専用の口座を開設してもらい、ブリュッケちゃんの父親……ヒコヤンの遺産を管理してもらう事にした。今日までブリュッケちゃんは、保護者に当たる遠い親戚の所には、お世話にならなかったそうだ。小学生ながらも近所の人に協力してもらい、何とかがんばって一人で暮らしてきたらしい。
だが、一人はよくない。そこでオーミモリヤマ市まで引っ越してきてもらい、シュレム・マリオット姉妹と一緒に暮らすように僕から提案したのだ。
「進学先の中学校は、マリオットちゃんと同じ学校に通う事を勧めるよ」
「父と暮らした家には格別の思い入れがあるんです……でもオカダさんがそこまで言うのならば、素直に従う事にするよ」
もちろん、シュレムとマリオットちゃんの二人は、新たな同居人を迎えるにあたり大歓迎の模様。そしてランドルト姉にも頼んでスタリオン高機動車及び電神ヴィマナを秘密裏に預かってもらう事にした。アニマロイドボディの修理もあるので俺達のせいで大変な責任になりそうだ。
「さようなら。一旦ここで皆とはお別れだ。植民惑星査察団はサバクオニヤドカリの目玉を持ってデュアンの所に赴く」
制服の赤いリボンを、やるせない表情で弄っていたマリオットちゃんが声を発した。
「さよならじゃないわ。行ってきますでしょ!」
なるほど……さすがマリオットちゃんは、いい事言うね。
「行って参ります! 残念ながらアディーには挨拶ができなかったな」
シュレムが少し寂しそうな笑顔で言った。
「私から必ず伝えておくわ」
彼女とは固い握手を交わした。
「オカダ君……」
「実は……君には、もう一つ僕からのお願いがあるんだ」
「ええ? 何?」
シュレムはドキッとしたようだ。
「君は今までコンタクトレンズを使った事があるかい?」
無粋な僕からの意味不明な言葉に、彼女はガッカリしたのが何となく分かったのだ。
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