ビアンカ

 ランドルト姉はニッコリ笑って説明した。


「女子が普段から着るような服って私、持ってないのよね。仕方ないから私が高校時代に着ていた制服を一式持ってきてもらって、仮に着せてみました」


 若い娘向けの服がないからって、これはないだろうよ。なぜ買いに行かない? ランドルト姉って、ちょっと変な奴だったんだ……。

 そのうちスケさんの膝はガクガクと震え、後ろの椅子に再び座り込んでしまった。ランドルト姉は微調整に余念がないようだ。


「う~ん、まだアニマロイドのボディから人工的偽身体になって間もないから、慣れるまでに数日のリハビリが必要ね。その間に人間の様式を理解してね。それとも、もっと動物よりにチューニングする?」


「はい、体が若干重く感じられるわ」


 検査機器に隠れつつも、カクさんと一緒に制服スケさんに見とれていたランドルト弟が、思わず感嘆の声を漏らした。


「何て綺麗な娘なんだ!」


「!! ……見慣れない顔だと思ったらあなた!」


 ランドルト姉がようやく、白ツナギ服を着用した弟の存在に気付いた。僕は同じ服で彼女に説明する。


「カクさんと一緒に弟さんも救出してきたんだ。偶然とはいえ、すごいだろう?」


「ハルト! あんたなの?」


「ああ、カノン姉さん、ご無沙汰してます……」


 その後、姉弟の感動の再会があったのだが、今の僕には余裕がないと言うか、二人には申し訳ないが眼中に入らなかった。あのスケさんが人工的偽身体を手に入れ、女子高生の姿となって僕の前に復活してみせたのだから。


 事態は風雲急を告げる動きがあった。内線にオーミ姉妹社社員からの緊急連絡が入った。


「会社の正門に何やら武装したパークス商会の連中が集合して、わが社を取り囲んでいます!」


 ランドルト姉が緊張しながらも、冷静さを取り繕いながら答えた。


「何事なの? 騒々しい事」


「オカダ査察官を今すぐ表に出すよう、すごんでいます。しゃべる犬とC級奴隷を引き渡せと」


 何ぃ! さすがは情報通のパークスだな。ココにいることが、あっという間にバレちまった。まあ、目立つスタリオン高機動車に乗っていれば、いずれバレるのは時間の問題だったのだが。



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