マリア

 天真爛漫な二人の笑い声が、浅いオアシスの水面に響き渡る。

 ブリュッケちゃんは両手で清らかな水をすくって飲んでみた。


「あまり冷たくはないけど美味しい!」


 ショートカットが映える小顔の、大きな部分を占める目が宝石オパールのように輝いた。


「どれどれ?」


 マリオットちゃんは、水面に顔を浸けて直接飲んだ。


「プはー! うめえ!」


 水に濡れたロングヘアーに青みがかった光が反射する。烏の濡れ羽色とはこの事なのか。

 広げたシートの上でくつろぐスケさんが目を細める。


「若いっていいわね。あれぐらいの歳の娘って、一種独特の涼やかさと透明感があって好き」


 カクさんは全面的に同意した。口を開けて舌を出して息をする。


「それに比べてあなたは、毛皮の暑苦しさと濁った心を映す眼といったら酷いわね」


「姉御、そりゃ、いくらなんでも言いすぎやで……」


「フフフ、冗談よ!」


 涙目になったカクさんはかわいそう。

 僕がタンクにオアシスの水を補給している間、シュレムとアディーは散歩に出かけた。


「ちょっと! よく見ると、そこいらじゅう岸辺が穴だらけになっているわよ!」

 

 すぐにアディーが、妙な地形に気が付いて声を上げた。詳しく観察すると、何か人工的な穴や水路めいた構造がオアシスの岸に延々と続いている。


「何だかイヤな予感がする……武器を持ってこなかったのは痛い」


 シュレムは胸騒ぎがして、妹達の事が急に心配になってきたのだ。こんな大きなオアシスに装甲殻類カルキノスが一匹や二匹いても全然おかしくはない。

 アディーと一緒にスタリオンが停車している場所まで早足にて引き返した。



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