フェレダ

 ブリュッケちゃんはメットを脱ぎ、シュレムと僕に頭を下げたのだ。


「どうか連れて行って下さい! お願いします……足手まといにはなりませんから。この通りです」


 僕は黙ってシュレムとアディーに頷いた。


「……分かったわ。あなたの熱意に心を打たれた感じ。地球人にケプラー22bの女アマゾネスの強さを見せてあげて」


「やったー! 皆さんよろしくお願いします」


「よかったね、ブリュッケちゃん。こんな妹が欲しかったんだ」


 マリオットちゃんは、ブリュッケちゃんを胸に抱き締めた。女子小学生は、自身のメットのようにみるみると顔が真っ赤になったのだ。


「さあ、歓迎の用意をしよう。食事に行こうか。ファミレスに行くぞ」


「植民惑星査察官がファミレス?」


「びっくり〇〇〇-!]


「……俺は貧乏査察官なんだ。君ら姉妹は情け容赦なさすぎる!」



 しかもファミレスでいきなり止められた。


「お客さ……ま……ヒィイ! B級奴隷と動物は今すぐ出て行って!」


 ヴィヴィアン・リー似の店員は、査察団の顔ぶれを知らなかったようだ。

 スケさんとカクさんは、かしこまってヴィヴィアンに言い放った。


「ひかえ! ひかえい! こちらにおわすお方を、どなたと心得る。地球からはるばる当地までやってこられたオカダ査察官なるぞ!」


 店の奥からマリリン・モンロー似の店長が飛び出してきた。


「大変失礼をいたしました。何名様でしょうか? 禁煙席がよろしいでしょうか、それとも喫煙席がよろしいでしょうか!」


「5人だが……スケさんとカクさんは他のお客さんがビビるから、悪いけど外で待っててな……」


「ちぇっ! 分かってるよ」


「行きましょ、カクさん。ドッグカフェでもないかしら?」


「ごめんよ……後で名物のオーミチャンポンでも食わせてやるからな」



 席に着くなり、マリオットちゃんはハンバーグセットとドリンクバーを注文した。


「ブリュッケちゃんは何を注文するの? メットは脱いだほうがいいわ」


「いやぁ……ボクはこういう所に連れてきてもらった事がないので……」


「じゃあ、私と同じでいい?」


 シュレムとアディーはメニューを見ていたが……。


「私達も同じでいいわ」


 ホールスタッフのヴィヴィアンは、オーダーを取った後、苦笑いして去って行った。

 テーブルの一角に婦警と白衣、学生、二代目、つなぎ服の男と一種異様な空間ができあがる。

 周囲の中年女性客がチラチラ見てくる。仕方ないかな。


「……元格闘家のラーメン屋の主人が、さっき救急車で運ばれていったそうですよ。何でもすごい臭いだったとか」


「見て見て奥様、あのミカミ山を一撃で崩したという地球人がいます! ……ちょっと驚きですね」


 噂話が耳に入ってくるよ。何だかいたたまれないなぁ。


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