アウロラ
スケさんの迅速で的確な操作によりエアコンの温度は下げられた。
「おかしいわね、一時的な故障だったのかしら?」
シュレムも、こぼれたミネラルウォーターを丁寧に拭いてくれる。
僕は平常心を装って、植民惑星査察官らしい真面目な話題を彼女に振った。
「是非知っておきたいのだが、オーミモリヤマ市の学校教育はどうなっているんだ?」
「それは……私が説明しましょう」
質問には、真後ろに座っているアディーが答えてくれた。カクさんは何と彼女に膝枕してもらっている。しかも背中をナデナデされて夢見心地。僕は運転しながら歯ぎしりをした。
そいつには気を付けた方がいいのに! ……何されても知らないよ、赤ずきんちゃん。
「成人までは女子校で一貫教育ね。その後進学したり、働き口を見つけて就職したり……子育ては大半、A級奴隷に任せているから仕事のない女性はほとんどいません」
「では男は……AクラスやBクラスの奴隷達は?」
「A級・B級分け隔てなく、男は生まれながらにして全くの無学。最低限の読み書きは、寺子屋制度にて年長者から教わる伝統だけど。それ以上の勉強は反乱分子を育成しかねないので基本学問は禁止。まあ、隠れて勉強しても特にきつい罰則はありませんが」
「ひでえなぁ……天才的に賢い男や、特別屈強な男は出現しないのか?」
「男はかわいそうな生き物よ。今まで能力的に私と同格の男に出会った事はないわね。あ、S級奴隷は例外」
いかにも優等生っぽいアディーが、自信満々に答えた。助手席のシュレムが続ける。
「地球人には分からないかなぁ。今こうして男である、あなたと同乗している事自体、私達の世界ではありえない」
後ろの方からスケさんが訊いた。
「多少なりとも我慢しているの? オカダ君に」
「姿形は奴隷と全く同じなのでね……でも慣れてきたよ。地球人はやっぱり違うと思う。特別に認めてあげるわ」
「良かったね、オカダ君。一応リスペクトされているみたいよ」
スケさんの言葉は、僕にとって慰めにもならないよ。
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