セメレ

 カクさんにまとわりつかれても、マリオットちゃんは別段嫌がりもせず無邪気に笑った。


「ケプラー22bに犬や猫はいないの?」

 

 スケさんが車内に戻ったシュレムに訊いてみる。

 

「家の中に普通にいるけど野良はいないわね。外では生きていけないの」

 

 彼女は大きな妹を、ふざけて膝の上に乗せた。本当に仲の良い姉妹なんだろう。

 あんまり似ていないな……。


「……今、似ていないと思ったでしょう」


「ええ?」


 シュレムに心が見透かされた。彼女やっぱり勘が鋭い。


「私達、異父姉妹なの。理由は分かるよね」


「う~ん」



『おい、オカダ君……聞こえますか』


 コンタクト・ドライブシステムを通じた脳内通話テレコミュがカクさんから入った。


「今はよせ、隣にシュレムが……」


「え? 何? 私がどうしたって?」


「い、いやあ……何でもないんだよ」



『シュレム精子とマリオット精子から誕生した二人だ。おそらく苗字だぜ』


 ということは姓で呼び合っているのか。名が他にあると。


『それよりマリオットちゃんのパンツはピンク色で、学生っぽい可愛らしいデザインだったぜ』


「うわわ! お前まったく反省の色が見えないな」


「え? 何で私が反省しなくちゃならないのよ。理由は?」


 シュレムがカチンときて睨んできた。


「わわわ。い、いや君の事を言ってるんじゃないんだじょー」  


 僕は動揺して本をなくした二宮金次郎のように挙動不審となり、姉妹の目が点になっていくのを感じる。


『マリオットちゃんは、ばっちり処女だぜ。匂いですぐに分かった』


「そりゃそうだろう! ていうかお前いい加減にしろ!」


「いい加減にするのはオカダ君よ! 一体誰と喋ってるの?」


「面白ーい! 何か新しい芸を感じる……地球のギャグはやっぱ高度ね」


 シュレムとマリオットちゃんは半ば呆れて顔を見合わせる。

 スケさんは全てを悟ったのか、深く長いため息をついたのだ。


「やれやれ、またですか……」

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