レダ

「アツシ~?」


 腕組みをして、まるで“考える人”のブロンズ像のように固まってしまった僕に、マコトが声をかけてきた。


「んん? 何だい」


「今度は私からの質問よ~。あなたは見かけない顔だけど、一体どこからやって来たの?」


 僕は、しばらく答えをどうするか迷った。正直に太陽系外植民惑星査察官と名乗り、地球人である事を告げるべきか……。

 地球からやってきたと知れば、彼らが一体どういう反応をするのか、よく分からない。ただ僕は、身分を証明する物を何一つ持っていないので今現在、他の奴隷の人達と何ら変わる所がないのだ。


『俺は地球人だ、お前達の母星からやってきたんだ。尊敬しろ! 田舎者の野蛮人め!』


 と、皆の前でふんぞり返って宣言しても 


『ふ~ん、それで?』


 の一言で終わるか


『キャーッ! 素敵、あこがれの地球人のアツシ様~』


 と再び女装オネエ・ニューハーフ軍団に囲まれて、キスの嵐に遭うかどちらかであろう。いずれにしても機をうかがっている今は、大人しくしていた方が賢明と思われる。騒ぐと、また警備嬢が現れてボコボコにされる可能性が高い。


「マコト……俺はね、男女の仲がいい平等の国からやって来たのさ」


「何それ~? 変なの……」


 マコトは枕を持ってきて、ヒロミ達と一緒に寝ようと誘ってきた。そういえばもう夜なのか、地下ではよく分からないものだなあ。

 

 雑居房の奥には折りたたみ式のベッドが人数分用意されているようだ。

 僕がお粥みたいな食事をダイニングで済ませている間、マコトは人目も気にせず服を脱いでパジャマに着替えるのだった。女物のピンクのブラとショーツが遠目にも一瞬見えてドキドキする。背中側なのが残念……。いや、男の体にときめいてなんかいないぞ! 絶対に!

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