レウコテア
「不思議ねぇ……あなた、人を引き付ける魅力を備えているわ」
背中から首に手を回すマコトは、よくよく意識するとハスキーボイスだったんだな。なぜだろう、あれほど気持ちよかったマコトの柔肌が、今の僕には鳥肌モノだ。
本当は一本背負いをして投げ飛ばし――
『いいかげん俺から離れろ! この野郎!』
と叫びたかったのだが、優しくされた手前マコトに失礼な事をして泣かせたくない。
「どうしたの? アツシ。ちょっと震えてるわよ。もしかして、あなたイイ歳して女に慣れていないの? うふふ……カワイイ人ね。ますます気に入っちゃった!」
マコトは僕の顔を覗き込み、屈託のない笑顔を見せた。
胸がキュンとして苦しくなってきた――
『おい! おめえ、女じゃあ、ねえだろうがよ!』
と叫びたかったのだが、女以上に綺麗で温かなマコトを絶対に悲しませたくはなかった。
僕は勇気を出して、もう一度マコトの顔を見た。大きな黒い瞳に小さな鼻と艶のある口元。やっぱりどこからどうみても完璧だ。のどぼとけ以外は。
微笑み返してくれたマコトに、僕は複雑な感情が絡み合い、思わず涙が出てきた。マコト、どうして本物の女じゃないんだ。そんなのないよ。神様、これは何かの間違いでしょう……。
「あ~! アツシを泣かせちゃった~。何したのよ、マコト~」
ヒロミが僕を心配して駆け寄ってきた。マコトは、ちょっと焦って僕の肩を抱いてくれたのだ。二人共、そんなに優しくしてくれるな……変な道に目覚めてしまいそうじゃないか。
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