キルケ
マコトとヒロミが僕にくっついて離れようとしない。まるで、じゃれつく仔猫みたいだ。小動物ならいいんだが二人共、身長が僕とあまり変わらない。苦しさと気持ちよさが、ちょうど半々……何とも不思議な感覚に包まれる。
マコトは床に座っている僕の背中にピッタリとしなだれかかり、両腕を脇から前に回してくる。表情は見えないが、うっとりとしているに違いない。彼女の心と体はとても温かいなぁ。
ヒロミは僕の首に絡みつき、しまいには本物の猫みたいに頬ずりしてきた。おいおい、皆が見ているって……長い髪が何だかこそばゆいなぁ。プニプニほっぺが、ざらざらしている。
「ざらざら……?」
僕は何かの勘違いか、とヒロミを見つめた。
「やだぁ! そんなに見つめないでよ~ 恥ずかしいじゃない!」
ヒロミは口元を手で覆った。
「? ! ?」
マコトはすかさず僕を持ち上げて、ヒロミの手が届かない距離まで遠ざけた! 僕の体重、70キロ以上あるんだぜ? しかもケプラー22bの重力は地球より強いから、もっと重いはずだ。
「ヒロミー! 髪で隠してるけど、おヒゲの処理がおろそかになってるわよ」
「え~! アツシが来ると今朝分かっていたら、もっと念入りにお手入れしてたのにィ~」
マコトに指摘され、ヒロミはコンパクトの鏡で、耳の下あたりをしきりに確認している。
聞いた事もないような音が頭の中から響いてきた……血の気が、さーっと引いてゆく音だ。
色とりどりの花が咲き乱れる、天国もかくやと思える芳しい世界。それが絨毯を引っぺがすように爆風で一気に消えてゆく。そんなビジョンが脳内に超リアル再生された。
「ひ、ひげぇ~~~~!」
さあ! 予想通りの展開になってきましたよ! いくら異世界とはいえ、僕が急に女の子からモテモテになるのは、いくらなんでも話がデキ過ぎていると思ってはいたが……。穏やかで見た目も完璧な彼女達は、彼氏達だったのか!
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