マッサリア
ノスタルジーをも感じさせる、のどかな田園風景に突如、オオカミが一頭。
アスファルトで舗装された道路上で、犬のように匂いを嗅ぎまくっているのは、間違いなくカクさんだ。
「あいつ、こんな所にいやがったぜ! 何してやがんだ」
「ばつが悪くて、戻るに戻れなかったのでしょうね」
カクさんは気まずそうに僕らが乗った高機動車を見上げた。舌を出して尻尾を振ってやがる。
「久々の地上なのでつい、はしゃぎすぎちまった。ごめんよ……」
「あなた、ロボット三原則って知ってる? いい加減にしないと処分されるわよ」
スケさんから情け容赦ない言葉を浴びせられ、さすがのカクさんも両耳を垂れて、しょんぼりとした表情を作った。
「まあまあ、大目に見てやろうぜ。彼も反省しているようだし」
僕が何気なく発した慈悲深い台詞に、スケさんは何だか妙にショックを受けたようだ。わなわなと震えた後、感激して語り始めた。
「私ことスケさんは、人間が持つ生来の優しさに心打たれました! いえ、厳密に言えば私には心がありません。機齢100年を超えてメンバー最年長ですが、人間の心理を理解すること……言わば、このミッションで本物の“心”を入手することが、私の悲願なのです!」
「そうなのか、もう十分だと思うが……がんばってな。さあ、探索を再開しようぜ!」
カクさんは嬉しそうに高機動車の荷台に飛び乗った。重さでリアサスペンションが沈む。スケさんは天井ハッチを開放した。
「やっぱり私達、コンビじゃないとねぇ~カクさん」
ちょっと意地悪そうに彼女は言った。
「ああ、これからも宜しく頼むぜ」
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