第32章 ISEIKAI NO OWARI

アエリア

   第三十二章 ISEIKAI NO OWARI


 電神・秋水を偵察飛行に向かわせると、デュアン総督の乗ったスペースシャトルは格納庫から引き出され、ロケットスレッド上で離陸できる態勢にあった。丁寧にメンテナンスされているのか、塗装にサビ一つ見当たらない。やろうと思えばインディペンデンス号による衛星軌道上からの艦砲射撃や電神の空対地ミサイルで破壊できるのだが……ゴールドマン教授は、それを望まないようだ。


「デュアンは革命後もケプラーの統治に必要な人物。必ず生かして捕らえてやる」


「教授、革命の指導者にしては、ずいぶんと甘いな」


「確かにな……でも彼女の事は昔からよく知っているんだ」


「ひょっとして……ひょっとすると」


 僕とゴールドマン教授はサイドカーで湖畔まで到達していた。走ってきたアニマロイド軍団を少し休ませている。ちなみにスタリオン高機動車の修理をやっと終えたアディーとチトマスも駆けつけてくれた。チクブ島宇宙センターは、すぐそこのはずなんだが。


「君は勘がするどいね。実はまだ話していない事実があるのだ」


「そんなに、もったいぶらなくてもいいよ。全て余す事なく伝えて欲しいんだ」


「彼女は、デュアン総督は……私の実の娘だ」

 

 僕は頭を軽く小突かれるような衝撃を受けた。


「私がケプラー22bの査察団として、この惑星で活動していた時は、毎日のように総督府に出入りしていたのだ。ほぼフリーパスだったな」


「それで当時の総督に気兼ねなく話している内、気に入られてしまったと」


「総督府は、ほぼ男子禁制の女の園だったからねぇ」


「教授、本当によくやるよ……」


「結果的に総督専属の奴隷として優遇され、今日まで生き残る事ができた」


「親子なのは、その……周知の事実なのか?」


「残念だが機密事項だ。デュアン自身も全く知らないはず。総督を世襲制で受け継ぐためには複雑にして難解なルールが存在するのだ」

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