第2章 ファースト・コンタクト
パルテノペ
第二章 ファースト・コンタクト
母船とするインディペンデンス号から狭い通路をくぐり抜けて、スペースシャトル・ベンチャースター号に移乗した僕らは、大気圏突入の準備に取りかかった。
ゆる目の宇宙服に着替えるが、ここも重力区画を超えているので無重力状態。それを利用して、最近頭から服を被り、中で体を反転させて素早く着用する方法を思いついたばかりだ。
「シャトルが着陸できる宙港が整備されていない。説明通りオーミモリヤマ市のそばにあるビワ湖に着水する予定」
僕の言葉にカクさんは答えた。
「再離陸が面倒だし、エンジンが痛むだろうよ」
「無論、後で陸に上げるつもりだよ」
「前回、つまり30年ほど前の査察ミッションでも、着陸地点は湖面上だったのか……」
スケさんも補足してくれた。
「その湖水の成分は、ほぼ淡水で飲料水にもなるわ。海洋惑星を覆う海水の成分も、地球より塩分が薄い程度。奇跡の星と呼ばれるゆえんよ」
それから彼女は、オーミモリヤマ市に向けて何度かの通信を試みたが、無駄だったようだ。アポイントメントなしの訪問に慌てているのか、拒否られているのか……通信手段を失うほどの何かが起こってしまっているのか。
「へへへ、下宿先に突然両親が電話なしで押しかけてくるようなもんだぜ」
カクさん、うまいことを言う……?
「お前って人間っぽいっていうか、過去どういう生活を送ってきたら、そういう台詞が出てくるんだ」
「自分の経験からさ! ちなみにその時、俺はゲリラの彼女との真っ最中で両親に泣かれました」
「嘘をつけ! アニマロイドに両親がいるはずがなかろう」
気を取り直して、煩雑な母船からの切り離し準備に取りかかる。地球本星との通信はできないので、すべて自分独りの判断で実行しなくてはならない。……基本自分の性分に合っていて、コンピュータ相手は楽なのだが。
僕って人間嫌いなのかなぁ。アニマロイドを相手にして場違いに盛り上がっている。客観的に冷静な視点から見ると滑稽な奴に違いない。
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