第416話 行動開始
クラウディオの調査結果を受けて、急遽新人官吏達を集めることにした。
もちろん、前任の代官の所業を詳細に調査し、証拠を押さえるためだ。
表立って動けば当然、先方にも知られることになるので時間との勝負となる。
「それで?どこまでやるんだ?」
久しぶりの荒事の予感からか、背が高く目つきの鋭い剣牙の兵団の副団長が、笑みを浮かべ腰に差した魔剣の柄を叩きながら嬉しそうに聞いてくる。
「・・・確かに会えるようにとは手配したが、なんで来てるんだ?」
「なに、またデカイ喧嘩をするんだろう?今度はどこの貴族だ?」
「いやいや・・・」
何を勘違いしているのか知らないが、俺は喧嘩なんて好きじゃない。
そういう誤解を招く発言はやめてもらいたい。
「副団長にはね、あなたの義父の筋で依頼があるんですよ」
「なんだ、つまらん」
「ですが、荒事はあるでしょうね。本当はないほうがいいんだが」
「あるのか」
一度、つまらさそうな様子を見せた顔が、荒事と聞いてすぐに元気を取り戻す。
これだから、戦闘民族は手に負えない。
「これから、いろいろな証拠を押さえにかかります。おそらく、初動は抵抗がないか、弱いはずです。不意打ちになりますからね」
「うむ。戦闘の要諦は奇襲だからな。それはわかる」
「ですが、証拠と証人を抑えられたと知ったら、後から必ずそれを取り返すか消しに来るはずです。証拠と証人の証言が上に行けば、相手は破滅ですからね。必死になるでしょう。傭兵や暗殺者を雇うかもしれません」
「それを叩けばいいんだな」
理解が早くて助かる。
俺はスイベリーに向かい、頷いて見せた。
「残念ながら団長は街の外の依頼に出ているし、もともと街中の依頼は副団長である自分の担当だ。せいぜい派手にやってやるさ」
スイベリーの笑みには、なぜか肉食獣の牙が重なって見えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
集まった新人官吏達に具体的な指示を飛ばす。
「まず、押さえるべきは徴税記録と証人だ」
最初に目標を示す。
「徴税記録は、過去5年間の記録をおさえる。対象は、村側の納税記録、教会の保管記録、街の教会にある喜捨の記録だ」
記録を突き合わせることで矛盾が見えるはずだ。何よりも記録の原本を押さえなければならない。
「村の代官屋敷は対象外とする。踏み込む必要はない。武力行使は最後の手段だ。ただし、攻撃されたら反撃して構わない」
次に、やらなくても良いこと、優先順位を指示する。
「次に証人を確保し街まで連れて来い。村長と教会の司祭の2人ともだ。それと村の中から数人でいい、最近畑を失った人間たちも連れてくるんだ。どんな理由で畑を失ったのか、証言が欲しい」
仕事の目的を指示することで、なんのためにやるのか?という指示された側の納得性が高まる。
「証人達は、会社(うち)で保護する。記録の調査と証人の保護、及び会社(うち)の護衛を剣牙の兵団に依頼したい。何か質問は?」
最後に、剣牙の兵団への協力依頼と質問事項を確かめる。
全員の顔には緊張感こそあるものの、現在の腐った代官への怒りがそれを上回っているように見える。
「よし、行動をはじめよう。解散!」
さて、ここからが勝負だ。
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