第42話 冒険者の飲みもの事情

翌朝、ベッドで目を覚ますと目の前にサラの顔があった。

ハッとして体を確かめると、特に衣服の乱れはない。

そっとシーツをめくってみると、サラの方も衣服を着たままだ。


全く、焦らせやがる。

よく考えれば、サラは冒険者時代から、こんな感じだった。

農村では大家族で一部屋に雑魚寝が基本だから、現代人の

俺の感覚の方がおかしいのだ。


サラに気が付かれないよう、静かにドアを閉めて部屋を出る。

昨夜はストレスもあって、相当に飲んだはずだが、特に頭痛はない。


こちらのエールはアルコール度数が薄いので、多少の量では何もない。

蒸留酒やウイスキーなどが市場で売られているところからすると、

技術がないわけではないらしい。

ただ、冒険者(かけだし)には金銭的理由でまわってこないだけだ。


朝の冷たい空気の中で、いろいろと考える必要がある。

こんな朝にはコーヒーが欲しいものだが、この世界にコーヒーはない。


朝からエールを飲む気にはなれなかったので、宿には無理を言って

カップにお湯を沸かしてもらう。


この地方で伝統的に飲まれているハーブを入れて、簡単な茶ができる。


もっとも、冒険者でこんな洒落た真似をすると、お貴族様呼ばわりされて

舐められるので、現役時代は、決してしなかったが。


最近、懐に少しだけ余裕がでてきた俺の、ささやかな贅沢だ。


スケジュール表を確認すると、午前中には冒険者(かけだし)連中の案内は

予定がない。


サラが起きて騒がしくなる前に、じっくりと今後のことを考える必要がある。

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