第26話 剣牙の兵団の戦い方

 まず、剣牙の団の成立は12年前に遡(さかのぼ)る。

 当時、20代の前半だった若き団長(シェフ)である

 ジルボアは強力な魔剣と剣技で、近郊に敵はなし、

 と恐れられた傭兵だった。


 周囲には彼を慕(した)う傭兵と冒険者達が集まり、戦時には傭兵団、

 平時には冒険者として身を立て、難度の高い依頼を繰り返し達成

 し、あれよという間に街でトップのクランへと成長していく。


 剣牙の兵団の戦い方は、徹底してオーソドックスな集団戦をとる。

 それは、冒険者としては異端な戦い方であるとも言える。


 魔法で祝福された剣盾と鎧を構えた歩兵団が前衛を固め、

 遠距離から強力なクロスボウを構えた後衛が敵をハリネズミにする。

  

 接近された場合は、前衛が敵を食い止める間に、

 ボールアームや戦斧を構えた中衛が相手の盾や鱗を叩き割ったり

 引っ掛けて崩したりする。

 後衛は再びクロスボウの太矢(クォレル)を装填し、

 左右に分かれて前衛を支援する。


 まるで30人が生き物のように戦うのだ。

 そして、前線には常に団長(シェフ)が立って味方を鼓舞する。


 これを、5人、10人、20人と隊を分割しても同じ戦い方ができるよう

 装備を整え、訓練しているのだという。

   

 なんて贅沢(ぜいたく)な戦い方をする連中だ。

 と、俺は呆れていた。

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