第25話 仲間でなければ話せないことも

スイベリーの案内で、貴族用の応接セットの方に案内される。


まずは、お客さん扱いからか。あまり、うまくない展開だ。


先生扱いされるのは気持ちいいが、実効性の高い結果を出すためには、泥にまみれて、彼らに仲間だと思ってもらわなければならない。


「スイベリー、俺はあっちの、お仲間がいるテーブルで話したい。」


このあたりの呼吸は、見栄とハッタリが重要な冒険者家業なら共通してわかるものだ。俺の言いたいことは、スイベリーには伝わったらしい。


団員がたむろするテーブルに移動すると、途端に好奇の目が集中する。

   

「俺はケンジ。元冒険者だ。少しだけ数字と文字に強いんでな、

 パーティーの相談に乗ってる」


と、剣を見せながら名乗る。

団員の中に、2名ほど案内したことのある連中がいた。

そいつらに向かって軽く挨拶すると、相手も挨拶を返してくる。


少し、団員達の視線が和(やわ)らいだ気がする。

多少は、仲間と思ってもらえそうだ。


ここまで場を整えた上で、スイベリーに向き直る。

  

「いくつか、聞きたいことがある。俺が新入団員のつもりで

 基本的なことを聞くから、それを教えてくれないか。

 あんたらにも、補足してほしい。」


これは元の世界でのコンサル時代にも、よくやった手法だ。


新米に説明させる、という体をとることで、ヒアリングと組織の教育力とビジョンの共有度合いを測る、一挙三徳の効果がある。

   

スイベリーと団員達の説明は、俺からすると感情過多で表現力過小な一大叙事詩(サーガ)を聞いているようで要領を得ない部分も多かったが剣牙の団の大体の成り立ちや戦い方、現在の事情など様々なことがわかってきた。

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