第三章 一流冒険者を支援します

第23話 剣牙の兵団

剣牙の兵団。

この街で冒険者をやっていれば、誰しも知っているトップクランだ。


人数は凡そ30人。乞われれば戦争に参加することもある。

探索よりも、戦闘を重視するクランだと聞いている。


そこの副長ともなれば、冒険者間での地位はちょっとしたものだ。

現に、サラの目はアイドルを前にしたファンそのものだ。


もっとも、目の前の痩身のスイベリーという男の雰囲気は

アイドルの甘い雰囲気は微塵もない。

  

鋭い緑眼。左頬の斬傷。刈り込んだ短茶髪。触れれば斬れなんとする剣気。

腰の剣は魔剣だろう。鞘の装飾も見事に草模様で縁取られている。


最近は他人の履いている靴が気になるので見ると、

編み上げサンダルだが、足の甲まで何かの革で覆うタイプのようだ。


あれ、ペラペラして気持ち悪いんだよな。


「お前が、ケンジか。最近は面白そうなことをしているそうだな。

 うちの新米から、いろいろと聞いているぞ。

 剣牙の団のスイベリーだ。副長をやってる。」


いろいろね。いい噂だといいが。


「ケンジだ。冒険者の経営相談に乗っている。

 今やってる魔法の靴作りも、その一環さ。」


握手の後、人目のあるところでは話したくなさそうな顔をしていたので

近所の酒場の一角を貸切って話を聞くことになった。


やはり、事務所は必要かもしれん。


席につき、軽く酒で唇を湿らせると早速、用件に入る。


「それで、トップクランの剣牙の団の副長さんが、どんな用件なんだ?」


スイベリーは、柄にもなく少し躊躇った様子で、ゆっくりと切り出した。


「最近、どうも団内がゴタゴタしててな。

 なんというか、ピリッとしてねえんだ。

 

 戦闘でも、前の依頼で2人が深刻な怪我をしてな。1人は引退だ。

 いい腕だったのにな。


 最近の依頼の受け方が、少し無謀というか、事前調査が甘えんだな。

 かと言って、別に儲かってねえわけじゃねえ。

   

 ただ、うちの団長(シェフ)も、そろそろ引退してえとか

 言いだしてんだ。


 それで若い奴らが浮足だってんのかもしれねえ。

 引き抜きの噂もある。


 なんつうか、俺たちは学がねえからよ、

 このままがいけねえのはわかるんだが、

 何が悪(わり)いんだかよくわかんねのよ。


 サラの奴が、お前がすげえ学があるって言うし、

 ちっと話を聞いてみようと思ってな・・・。」


組織が大きくなると、問題も複雑になる。


これは、久々に本腰を入れて冒険者(パーティー)の

経営相談に乗る必要があるようだ。


何より、剣牙の団の支援をうまく処理できれば、

俺の商売(ビジネス)もうまく軌道に乗せることができるだろう。

  

「よし、あんたのところで、話を詳しく聞かせてもらおうか。」 


スイベリーの案内でクランの事務所へ乗り込むことにした。 

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