第22話 そして機会はやってきた

そうして、翌日から冒険者連中の足型をとり始めた。


いつものように冒険者(かけだし)連中の買い物と交渉、精算に付き添い、ツアーの最後に宿屋に連れて来て、足型をとるのだ。


さすがに悪いと思ったので、宿屋の親父には場所代を払い、

宿の奥さんには連中の足を洗って足型を取る作業をやってもらった。


ムサイ連中の、ろくに洗ってない足を触るとかイヤだからな。

銅貨を払ったら、喜んでやってくれた。

  

冒険者(かけだし)には何故こんなことを、と聞かれるので


「冒険者向けの、魔法の靴を作ってるのさ」と教えてやる。


「お前らには、売りだしたら割引してやるよ」


と印をつけた木片を渡すのも忘れない。


まだ、農村からでてきたばかりのお登りさんで街にスレていないせいか、

サービスだとか無料だとかの言葉に冒険者(かけだし)は弱い。


いそいそと大事そうに割引符を懐にしまう連中を見ていると微笑ましいが、

思いっきり騙されやすそうに見えて複雑な気分になる。  


街の娼館でケツの毛まで毟(むし)られて、街の恐ろしさを

知る羽目にならなきゃいいがな、と思うが、どうしようもない。


女にのぼせ上って貢ぐのは、男の甲斐性だ。好きにすればいい。

貢ぐ以上に、稼げばいいのだ。

それが冒険者ってものだ。


足型を集める作業を2週間ほど続ける内に、

冒険者ギルド内でも、俺の靴は噂になってきたようだ。

  

最近は、すっかりうちの営業職員と化しているサラが、教えてくれた。

こいつ、冒険の依頼受けてるんだろうか。

  

足型の蓄積は100を超えた。

そろそろ、次の段階に移るべきかな、と思っていたところ、

機会の方から、俺のところにやってきた。



剣牙の兵団で副長をやっているスイベリー、という男が

宿に俺を訪ねてきたのだ。

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